青い花

アニメ史に名を残す(と、おれが二年前からずっと言い続けてる)不朽の名作。
久しぶりに再視聴した。最近2〜3年前のアニメを見返すのがマイブームになりつつある(笑)。
やっぱこれ凄いわ。何回観ても心動かされ、全く面白さを損なわない。そして全部観終わった後の余韻が凄まじい。しばらく他のアニメ観れなくなったくらい凄まじい。09年は『とらドラ』がなかったら確実にこのアニメが年間1位だった。ちなみにおれが観てきた歴代のアニメ作品の中でも10本の指に入る作品である。

青い花 第1巻 [DVD]青い花 第1巻 [DVD]
(2009/10/23)
高部あい儀武ゆう子

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今は『ゆるゆり』のヒットにより静かに百合ブームが起こっているが、『ゆるゆり』とかああいった系譜の作品は百合要素をネタ的エッセンスとして扱う作品であるため、百合属性持ちとしてはあの百合はどこか虚構のように感じてしまう。まあそれでもネタの精度と微笑ましい百合を毎回楽しんではいるんだけど。

そしてこの『青い花』。これも題材として女の子同士の恋愛を扱っているため百合ものであることに間違いはないんだが、『ゆるゆり』などの作品と決定的に違うのは、尋常じゃないほどのリアリティを伴った、形をもった人間ドラマとして現実的な恋愛感情を真っ直ぐに描いた作品であるという点だろう。小細工は一切ない。

この作品に始めて触れた時の衝撃たるや。それまでおれが触れてきたどの百合作品とも違う感触にひたすら打ちのめされた記憶がある。ちなみにアニメ観た後速攻で原作全部買いに走った。
だが何よりも歯がゆいのはこの作品に対して抱いたものを言葉としてアウトプットできない自分の能力の無さ。もっとオラに力を…!

このアニメでは常に誰かが悩み、傷付いている。それは虚構でも現実でも当たり前のように横たわる事実だし、「この世に人間がいる限り争いはなくならない」という言葉にもそれが表されてる。人間ってのは心を持っちまってる時点でそうなるのは仕方のないことだ。恋愛なんて感情の問題なんだから誰かが苦しむことは当然避けられない。

しかし、そんな中でもこのアニメでは誰かを深く憎んだり傷付けたりすることはない。それが、このアニメが女性同士の問題を描いているにもかかわらず全くドロドロとした話にならない最大の要因だろう。

青い花 1巻 (F×COMICS)青い花 1巻 (F×COMICS)
(2005/12/15)
志村 貴子

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ふみと恭己は良く似ていた。互いにそれぞれの想い人への一方通行の気持ちは届くことなく、恋した相手は別の誰かと結ばれてしまう。そんな似たもの同士が引かれあったわけだが、恭己は気持ちの整理がつかず、結局ふみと別れてしまっても暫くはどこか浮ついた様子だった。
そして京子は恭己を追い続けていた。そんな京子を康はずっと想っていた。

ふみは先輩への想いをあーちゃんのおかげで忘れることができ、8話目の最後で涙とともに綺麗さっぱり想い出を洗い流した。おれがこの回でボロ泣きしたのはいうまでもないだろう。恋愛関係の話で何回観ても泣けるってのはこのシーンくらいかもしれない。あの回の最後の演出はもう何かの賞をもらってもいいと思うんだ。マジで。

演出の素晴らしさは勿論言うよりも観た方がより正確に掴めるだろう。まあ言語化するのが難しいというのが本音なんだけど。
特に最終話の演出はもう芸術といっていいんじゃないだろうか。何回観ても「すげー」って言ってる。いやほんとにすごいんだって。

何というかこう、演出が雰囲気を作り上げ、雰囲気がキャラクタを浮き彫りにし、キャラクタがストーリーを動かしていく、といった感じだろうか。このアニメに登場するキャラクタはアニメとは思えない程のリアルさをもっている。よく「ストーリーの中でキャラクタを動かすか、キャラクタがストーリーを動かすか」といった論争が起こるが、おれはどちらが正解かといった判断を下す事は出来ない。ストーリーの中でキャラクタが動けば話の展開に矛盾が生じずにより洗練された話が出来上がるし、キャラクタがストーリーを動かせばアニメがリアリティをもつ上キャラ自体の魅力が最大限に視聴者に提示される。おれはわりかしストーリーを重視するんだけど、だからといってキャラクタ本体の魅力がなくてはどうしようもない。

この『青い花』が凄いのは、キャラクタがストーリーを動かしていながらストーリーもごく自然な流れでありこの二つの要素が相殺されることなく混ざり合っていること。そんなアニメはまあ一年に一本あれば良い方なんだが、この年は他にも『とらドラ』という化け物級のアニメがあってですね…
…まあそれはまたの機会に。

青い花公式読本 (Fx COMICS)青い花公式読本 (Fx COMICS)
(2009/09)
志村 貴子、藤が谷女学院新聞部 他

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あ、ちなみにあの素晴らしいOPの絵コンテと演出担当してるのが今ピンドラで話題のイクニだったりする。あの鮮やかかつ柔らかなOPをイクニが手掛けたのは意外でもあったし同時に納得もした。あれはまさにイクニの成せる技だ。

作画は淡くふわふわした印象を与える。しかし重要なシーンにおいては力強いタッチで描かれる。作品のもつ雰囲気を一切損なわず、逆に増長さえしている出来栄えだった。

そして音楽もこのアニメを構成する重要な要素の一つ。OP•EDは究極の名曲。特にEDのセンティフォリアはもう何百回聴いたことか。自分にとってのある試練が10年の始めにあったんだけど、その直前まで聴いてたのを今でも覚えている。色々と想い出深い曲。
もちろん劇半も素晴らしかった。サントラは速攻で買い、今でもたまに聴いてたり。

青い花青い花
(2009/07/22)
空気公団

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センティフォリアセンティフォリア
(2009/08/05)
Ceui

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SWEET / 青い花 オリジナルサウンドトラックSWEET / 青い花 オリジナルサウンドトラック
(2009/08/26)
羽毛田丈史

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キャストの話。
万丈目ふみ役に選ばれた高部あいは声優ではない。が、しかし声優になったほうがいいだろと思わせるほど素晴らしい声質の持ち主である。この人の声を聞くために毎回青い花ラジオを聴いていたのはいい思い出です。

演技も全く問題ないというか、むしろ若干慣れてない感じがふみのキャラクタ性と合致してて良かった。この後『放浪息子』や『セイクリッドセブン』の2作品に出演しているけど、もっと多くの作品に出てほしい。あとほっちゃんは8話を筆頭に終始神がかった演技だった。あ、ギブリンには(いい意味で)ノーコメントで。

最終的にこのアニメに関してはもうとにかく「観てくれ」としか言えない。こんなに素晴らしい作品なのに知名度があまり高くないのが悔しすぎる。2年前からずっと「見ないと人生損したも同然だ」と口酸っぱく言ってるのにまだあまり浸透してない様子。最近アニメに興味を持った人とかにもこの作品はぜひ観てもらいたい。アニメーションとは何なのかが体と頭で理解できる作品だ。キャラクタもみんな個性的かつ魅力的、それでいて現実のおれたちと同じような思考を巡らせて行動する。そして誰かに恋をして泣いたり笑ったり。自分の姿を投影できた人とかもきっといるんじゃないだろうか。

総じてアニメーション作品最高峰だったと言える『青い花』。これからも多くの人に観てもらいたい。そしてBD−BOXとかが発売されたら泣いて喜んで買う。今でもきっと発売されるだろうと信じて待ち続けています。