異国迷路のクロワーゼ

考えうる中で最高の最終回にしてくれたのが非常に嬉しい。これならいつでも2期ができるな。
んでやっぱり最後まで泣かされる羽目になった。もう今年の夏はうさドロとクロワーゼに出会えただけで満足している。

最終回タイトルは「屋根の上の猫 Chats sur un toit」。屋根の上の猫というのはヤニックの看板の猫を直接的に指してるように思えるが、実際のところそれはクロードの父であり、そして湯音のことであったのだろう。

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ここで初めてクロードの父は事故死だったということがわかる。だから父の話には後ろ向きだったんだな。表向きには父親のことが嫌いと言っているものの、やはり父親という存在は尊敬もしていたし掛け替えのないものだったんだろう。だから人一倍湯音のことには気を使っていたように見える。グランマガザンに行かせなかった理由も、手袋に触れた時に怒った理由も、最初から湯音に話していれば、互いにすれ違うことはなかったのかもしれない。

湯音の存在というのはクロードにとってはひどく不安定なものだったのではないだろうか。それは風来坊な猫にどこか似ている、いつかいなくなってしまうのではないかという不安定さ。だからクロードは湯音を自分の目の届く範囲だけで行動させていた。

屋根に登った湯音とクロードのやりとりは今まで積み重ねてきたものがよくわかるシーンだった。
「一人だけ何も出来ないことが一番大変」という湯音に対し「お前の仕事は怪我せずおれの目の届くところにいることだ」と堪えるクロード。この答えはクロードの本心であったが、湯音はそれだけしか出来ないことに辛さを感じている。

フランスまで奉公に来ているからには、やはりもっと役に立ちたいという気持ちが強いのかもしれない。しかしそれ以上に今湯音はクロード個人の役に立ちたいという思いのほうが強いように見える。前回でクロードは「深く知ることを恐れている」とオスカーに指摘されたが、実際のところもう充分すぎるほど深く知ってしまったのだ。

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「何も出来ないのは、お前だけじゃない」という言葉もまたクロードの本心。これは自分の父親を救えなかった事への自責の念も内包してる。それを見るにつけ、今度は差し伸べた手が届いて良かったなとこみ上げてくるものが。

そして最後にはギャルリの人々に囲まれる湯音。フランスに来てまだ日が浅いのにこんなにも多くの人々から愛されるのは湯音の人柄によるものか。前に救いの手を差し伸べた浮浪少年も顔を見せ、まさに大団円といえよう。

「湯音はいるだけで、こんなにみんなを安心させているじゃないか」
湯音の人柄についてはこの最後のオスカーの台詞に全てが集約されている。クロードも少し前に言ったとおり、湯音はいるだけで誰かを救うことの出来る存在なんだろう。おれもねんどろを買って湯音に救われたい。

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この作品を観て毎回凄いと思ったのは街並みやら調度品やらがすごく「古き良きフランス」的に見えること。おれフランスの街並みとか写真で少し見たことある程度だったんだけど、このアニメで観る世界はまさしくフランスのそれだった。美術設定に現地の方が加わっているからこそのリアリティとも言えるだろうし、音響やキャラクタ性から創り上げられた雰囲気からの後押しもあるだろう。ちなみに美術監督は川口正明氏…と言われても誰かわからなかったので調べてみたら16年前に放送されてた『ロミオの青い空』で美術監督やってた人だった。それはさすがに覚えてないわ。

しかしARIAといいクロワーゼといい、サトジュンが関わる異国もののアニメってどうしてこんなに癒し成分出しまくりなんだろう。その上作画も絵画を見てるような美しさで、アニメというより劇場版っぽいよなー。

このアニメを語る上でもはや音楽は不可分のものだ。OPのほのぼのした曲も、EDの心が洗われるような曲も、フランスという日本から見たら異国の地の雰囲気を最大限に表現した劇伴もクオリティ高すぎて最後まで聴きこんでしまった。サントラは金銭面の問題により購入できずレンタルで済ませてしまった。

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今期作品ではうさドロの次に面白かった。おれがこういう異国ものの雰囲気を味わえるアニメ作品が好物だからというのもあるんだけど、終始丁寧に作られていて制作陣の愛を感じたのも一因。今期はゆるゆりといいうさドロといい、制作陣に愛されてるアニメは総じてクオリティ高いな。

あと観てるだけで現実から解き放たれるようなこの感覚は久しぶりに味わった気がする。これが異国ものを好む理由の1つ。現実的な作品もいいけど、二次元空間だからこそ表現できる非現実的な(あるいはそう見える)世界というのを楽しみたいという欲求もあって。それを最大公約数的に満たしてくれるアニメだった。

スタッフ・キャストの皆さんお疲れ様でした。切実に2期放送を願います。