ましろ色シンフォニー 10話

いやまさか10話目で主人公に告白させるとは思わなかった。でも√としては至極真っ当な展開なので何で皆騒いでるのかわからない。どうやら紗凪信者と愛理信者の反発が凄まじいようだが今までの流れ見てたら少なくともこうなるとは予想できるだろ。逆におれは今までで一番良かった話だと思うんだがなー。

とは言いつつも、実はこの10話、みう先輩メインではなく実は紗凪メインの話だったと思う。取り敢えず今回はその事と演出方面について連々と書いてたら支離滅裂になりかけたので纏めて別個エントリに上げた。キーワードは以下の3つ。



今回は随所に「水」が出てきている。最初の川、水道から流れる水、突然降りだした雨、そして涙。最初に出てきた川のきらめきとは対照的に、最後の雨は状況も相俟って非常に暗い印象をもたらす。川の水も蛇口の水も上から下に流れゆくように、物語の展開もだんだん沈んでいった。涙は言わずもがな。
川は動物を野生に帰す場面、つまりは始まり、もっと言えば「再起」を意味する。この時点で紗凪は新吾とみう先輩に割って入っているあたり、まだ自分が入り込める余地はある、と考えている。
水道から流れる水。これが意味するのは「時間の回帰」。このとき紗凪は新吾と二人きりで、以前新吾に貸してもらったハンカチをまた貸してもらう。ここで時間の回帰、つまり紗凪が気兼ねなく新吾と仲良く出来たあの時間へ戻れるかもしれないという可能性を示している。
雨はもちろん紗凪の感情そのものであった。新吾がみう先輩を抱きしめた瞬間に降った時点で、皮肉にもこの物語は紗凪の物語であったことが視聴者に提示された格好になる。仮にこの物語がみう先輩をメインヒロインにしていたのなら、ここで雨が降るという描写はありえない。みう先輩の幸せは新吾と結ばれることであり、それが叶ったならばここは快晴のはずだ。
紗凪視点での天候の移り変わり、そして2人の姿を見た(ここで実際に見た描写はされておらず扉だけ開いているのが良い)ことによって現れる涙。
つまりこの10話の水の描写は全て紗凪の思考・感情に直結していた、と言える。



「しんご」「みう」と名付けられた2匹の猫は離れ離れで生きていくことが出来なかった。紗凪はそれを悟るが「2匹とも自分で飼う」と言い出す。新吾が好きであるのと同時にみう先輩を尊敬しているというかなり厄介な心境であったため、2人とも受け入れるしかない(そして2人とも好きな自分も受け入れるしかない)と考えてのことだったが、紗凪本人は「猫アレルギー」だった。この猫アレルギーってのが遠回しに男嫌いみたいなのも示してるのかなあ(紗凪が家に持ち帰ったのは「しんご」の方だったし)、と思ったり。
「みう」が部室でいなくなった「しんご」を探しまわっている姿を見て、紗凪は現実の新吾とみう先輩の間にも割って入れないと悟る。「やっぱりしんごはみうと一緒じゃなきゃダメなんだ」という言葉がその表れ。そこで「しんご」を連れてくるのではなく、上記のように「みう」も引き取る、と言ったところに紗凪の抵抗、まだ認めたくないという気持ちの残滓がある。
新吾の「2人とも動物のために自分を犠牲にしているように見える」って台詞、みう先輩と紗凪で犠牲の意味合いが全く変わってくる。2人とも「犠牲」とは思ってはいないものの、みう先輩は純粋に動物のことを第一に考え、紗凪は動物を通じて新吾への思いをどうにかしようともがいている。心を擦り減らしてるのはやっぱり紗凪の方なんだよなこの場合は。


告白


実はこの告白すら紗凪を意識しているフシがある。それは、みう先輩が新吾の気持ちを確かめる時「新吾くんは紗凪ちゃんが好きなんじゃないの…?」と問い、それに対して新吾が「おれが好きなのはみう先輩だけです」と答えてることから窺える。そして紗凪はほぼ間違いなくこのやりとりを入り口から見聞きしていた。これが新吾の気持ちを知る決定的な場面となり、この時点から一気にポツポツと落ちていた雨が強く降り出す。
で、タイトルの「なみだ色の雨やどり」。実際雨に打たれてるのは紗凪だけなんだけど、その紗凪は雨宿りをしていない。実際は愛理がさしのべた傘の中に入っていた。で、なんでタイトルが「雨やどり」なのかというと、これあくまで個人的な推測なんだけど、「雨やどり」が「男女が結ばれること」を示しているのかな、と思っている。というのも、遙か昔から日本人は物語創作において「雨やどり」を男女が縁を結ぶきっかけとなるイベントとして使用してきたからで、それは今日まで連綿と続いてきているある種テンプレみたいなものになっている。つまりタイトルは婉曲的に「悲しいけれど2人(新吾とみう先輩)が結ばれた」ということを示しているんではないかと。まあほんとに推測なんだけど。


で、2人は今回で一応結ばれて√終了、となった(ように見える)が、残り2話もあるのに果たしてそんな恋愛方面を終わらせるようなことするかね、と疑問ではある。が、もし本当にこれで終わったとしたら残るのは学園統合問題とぱんにゃを野生に帰す話か。どちらも√終了時点だと山場にはし辛い要素である。ここからの展開によっては名作になるかもしれないな。