劇場版BLOOD-C The Last Dark

観てきたよ一人で。しかし周りを見渡せば皆お一人様で「そりゃそうだよなあ、こんなコメディグロアニメなんてカップルとか親子で見に来るもんじゃないよなあ…」とか何とか考えてたり。


というわけで以下感想。
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感想といっても実の所この映画、『日常』とは別ベクトルで感想無効化系の作品であるため何から話していいものやら、非常に困っているのだけどとりあえず一つ。
まさかの
    な げ や り エ ン ド だった。


ネタバレを盛大にさせてもらうと、「ふみとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」とあれだけ怨嗟の声を投げかけられてた諸悪の根源文人は小夜が殺すんだけど、小夜が殺したその「あと」がちょっと酷い。
「文人を殺す」ことはこの映画、ひいてはこのBLOOD-Cという作品そのものの最終到達点だとみんな了承してただろうし、そのためにアニメ11話ぶん使って壮大な茶番を仕組んだんだから、一番重点を置かれるのは小夜と文人の対決だという意図はわかる。しかしその意図があるなら、最後は「小夜と文人の相打ち」が一番相応しい幕の引き方だと思う。というかおれは劇場版見るまでそうなるもんだと思ってた。だって文人殺したらそこでもう小夜のレゾンデートルが崩壊しちゃうわけでしょ。小夜があの離島から東京まで来たのも全て文人を殺すためなんだし。
あるいは文人を殺した後、離島での別人格を復活させ、サーラットのメンバーと生活を共にするという選択肢もあった。文人の最後の口付けで別人格覚醒、という展開なら不自然さはないし。やっぱこの作品基本的に詰めが甘いんだわ。


もう一つ、小夜の味方側につく最重要キャラとして柊真奈という女性が最初から最後まで物語に大きく関わってくるんだが、中の人がかなりの棒。正直この役は普通の声優にやってほしかった。立ち位置的にも過去の小夜に良く似ていたり、小夜が少しづつ心を許していく最初の人間、と繊細な演技を必要とする役どころだったし。
脇を支える中村花澤梶甲斐田あたりの演技が良かった(一番良かったのは間違いなく中村、一番惹かれたのは花澤演じる月ちゃん)し、やはり敵側だった神谷の立ち位置による微妙な声質の使い分けも上手かったので、余計にその中心にいた柊だけ浮いて見えたのは残念だった。


しかしまあもちろん良い所もあって、正直映画の内容だけ見れば普通にTV版よりずっと面白いので、終わり方に目を瞑ればわりと1800円払って損はしなかったかなー…という感じではある。別に助成金disってるわけではなく。
戦闘の構図がダイナミックだったり、CG使ってるように見せかけた小夜の動きを追うカットや、基本的にTV版とは比べ物にならないほど迫力ある描写が多く、そういう意味では劇場でやる意味があったと思う。


キャラ描写で言うと、TV版で人の心を失っていった小夜が、真奈とのやり取りを通して徐々に人間らしさを取り戻していく、という過程を描いていたのは脚本の良いとこだった。しかし尺の都合もあり打ち解け方というか距離の詰め方が早い感じもしたけど、もともと小夜の中には人間らしかった頃の人格が多少なりとも残っていると考えれば不自然ではない流れ。
文人は最後になるまで何を思い行動しているのかが分からないように描かれた、掴みどころのないキャラだったんだけどその代わりに蔵人という文人の従兄弟(よって文人に一番近い存在)を拵えることで「文人の存在感の薄さ」をカバーできていた。


あと、これはBLOOD-Cの続編ではなくCLAMP作品なんだなーという印象。TV版ではあんまり出てこなかったCLAMPのエッセンスが随所に見受けられるのでCLAMPファンなら観て損はないだろう。おれは違うんだけど。


良い点より悪い点が目に付きはしたけど、エンタテインメントという大枠で捉えるならば充分そのレベルには達していたし、何より11年アニメ作品の中でぶっちぎりで最低だったTV版の悪い印象を塗り替えられたというだけでも成功と言えるんじゃないだろうか。いやもちろんあのTV版が好きな人もいるだろうけど。
ただ繰り返して見に行きたくなる作品ではないかな。一回見ただけで腹一杯になる。