モーレツ宇宙海賊

文句なしに名作と言える出来だった。いつどんな精神状態で見ても楽しめる普遍的作品で、劇場版決定も納得がいく出来。放送開始時にこのアニメがまさかここまで化けると予想できた人は本当に少数じゃないだろうか。


つり球とある意味ベクトルは同じで、話の内容に緊張感はあるもののそれは胸が痛んだり気持ち悪くなったりする類のものでなく、どちらかというと好奇心・高揚感に由来するものであり、それ故このアニメは「どんな展開でも楽しめるだろう」という安心感と実際に見終わった後の充足感を併せ持っていて、どこまでも上がり続けるハードルをその都度超えていくという結果に。


最初に弁天丸クルーやクラスメイト、ヨット部メンバーなど沢山いるキャラたちに触れたところでストーリーを進め、キャラの掘り下げ・確立と同時にストーリーが奥深くに進んでいくという時間のかかる構成も2クールあるからこそできる技。尺の有効活用という点でもこのアニメは秀でていた。


宇宙空間を活かした壮大な演出と、それに対して細かい部分にまで気を配った作画の美しさは言うまでもなく、それを引き立てる劇半も標準以上だった。ももクロのOP・EDも良かったけど小松歌唱の曲が全部良かったのでどうやらミニアルバムは必携アイテムっぽい。


ストーリーに関しては茉莉花の成長物語としてもSFアニメとしても完成度が高かった。あれだけ大勢のキャラがいたのに名前を全員覚えられるようにできているのは本当に凄い。最終回では茉莉花覚醒とか唐突な展開ではなく、今までの積み重ねを生かした論理的戦略で勝利を掴んでいたことが嬉しかった。どこまでも茉莉花に人間味をもたせていて、視聴者は感情移入するのではなく一人の人間を見守る存在という位置付けになっていた。加えて周りの大人たちも良いキャラクタだし、茉莉花を精神的に支える役割を担っていたヨット部メンバーも良いキャラ揃いだった。


久し振りに究極的に「観ていて楽しい」タイプのアニメで、このアニメ濫造時代にこんなクオリティの作品を観られたことは幸せだった。下手したらもうこのタイプのアニメは今後現れないかもしれない。モーレツ宇宙海賊を超えられるアニメはモーレツ宇宙海賊だけだ。