じょしらく

最終回でいきなり「今日で最終回か…」とか言ってしまうキャラクタがかつて存在しただろうか。最終回でテコ入れをやるアニメがかつて存在しただろうか。どこまでも型破りでありながら、どこまでもアニメという「映像作品」としてではなく「娯楽作品」としての面白さを貪欲に追求した、まさに時代が求めているものと絶妙にマッチしたアニメと言える。以下、最終回のエピソードについて。


「キャラつぶし」はゼロ年代を超えて生み出された名作ギャグエピソードとして後世に伝えていきたい。最終回なのにまさかのテコ入れと突っ込みが追いつかないレベルの無数のパロディや風刺ネタなどとにかく物量攻めが凄まじく、人はこれだけの情報量を一度に受け取ったらただ笑うしか出来ないのだということがわかった。今まで暗躍してきた覆面ちゃんではなく全くの新顔(CV新谷良子という配役は久米田原作のアニメだなーと再確認できた)をもってくるあたり視聴者の心理をわかっている。


「アキバぶる」は最後の町巡り。丸京が秋葉原に対しての過剰な執着心を見せたりするものの、豆知識ネタなどを中心にまったりと進んでいく。「キャラつぶし」が激しいネタだっただけにここで緩急をつけようとした意図が感じられる。感じられるが最後のウザキャラが全部もっていった。このオチは素晴らしい。


「ちょいたし講釈」はまさかの昨今のアニメ業界批判で爆笑した。最後にして最高レベルの身を切ったネタをやれるその精神が素晴らしい。「最終回だから何やってもいい」という苦来さんの一言に全てが集約されている。結局覆面を喋らせてるし、最後には落語をやって、扉を「閉める」のと物語を「締める」という落語アニメ(一応)らしい終わり方でちょっとした感動もあり。じょしらくの基本精神が詰め込まれている渾身のエピソードだった。


とまあ最終回が一番面白いという、「終わり良ければすべて良し」を体現するようなアニメだったんだけど、もちろん最終回だけが面白いわけではなく、どの回にも久米田独特のクセのあるネタや水島努を筆頭としたアニメスタッフの愛ある悪意のこもったネタなどが随所に見られ、近年のハイテンション・ハイテンポなだけのギャグ作品とは一線を画する出来に仕上がっていた。


間の取り方などギャグ的な演出にも配慮していたし、ほとんどのネタ一つ一つにしっかりとした破壊力があったので視聴側も安心して楽しめるという、ベテランの芸人の漫才を見ているような安心感と、いつ何時どんな際どいネタを仕込んでくるかわからないという緊張感のバランスが絶妙で、笑いに特化した作品としては実に理想的な構成だった。


音楽に関して言えばももクロのEDもかなり鮮烈でインパクトがあった。明るくアップテンポなOPも良かったけどEDはそれをはるかに上回るテンションの高さで話題性もあり、アニメ本編以外でも手を抜かないスタッフの意気込みを感じる(ももクロのあの曲は間違いなくタイアップありきの曲なので)。


間違いなく今年の夏アニメのなかで一番突き抜けて面白かった。水島監督のギャグ方面の才能は本物だと改めて感じさせられたし、何より「わかりやすい笑い」がここには無数に詰め込まれている。決してシュールな笑いではなく、どこまでも万人に開かれた笑い。大衆が求めてやまなかった「美少女と笑い」の両要素を融合させた作品の完成形だと思う。