ガールズ&パンツァー 第10話 「クラスメイトです!」

絵コンテ:山本靖貴  演出:池端隆史  作画監督:伊藤岳史・大高雄太

無骨だけど美しい。アニメで描かれる女性同士の友情がなぜか男同士のそれに近似することがよくあって、このアニメもそのひとつ。しかし他のアニメと決定的に違うのは「それがないとこの作品自体が成立しない」というところである。戦車での闘いは言うまでもなくチーム戦であり、個人の能力がいくら優れていても全く意味がない。互いの足りない部分をカバーし合う戦車道という競技において、このチームメイトという枠を超えた親友としての絆は非常に重要。


前回のカチューシャ戦に無事勝利して、黒森峰との決勝戦開始〜三式撃沈までが今回の大まかな流れ。決勝戦を前にしての各キャラクタの行動をそれぞれ追っていて、塊としての面白さではなく細切れの面白さが何度も訪れるという作りで、前回の盛り上がりを汲み取った良い構成。戦車の動きや作画にも危うさは感じられず、制作が息切れしているということを微塵も悟らせない出来になっている。むしろこの出来を毎話維持していたからこそ、この後のエピソードは来年に持ち越しということになってしまったんだろう。まあ別に面白くさえあれば延期されようが何されようが問題ないですね。BD購入予約してるし。


各キャラクタの行動と言ってもやっぱりチーム単位での行動がメインになる。とりわけ主人公であるみほのあんこうチームが今回の主軸になっていて、そこに新しく加わったオンラインゲームのチームが絡んでくる。こんな最終回間際で出てくる新キャラってどうなんだろうと思っていたんだがこれが中々トリッキーな扱いを受けており、出てきて初の試合でいきなりフラッグ車を偶然にも庇う形で砲撃されるという、まさかの勝敗を左右する重大な出来事に関わってくる。多少の使い捨て臭はするものの、敵である黒森峰の圧倒的強さを示すには充分な役割を果たした。


華が母親と和解してその後どういう関係でいるのかとか、みほが過去に助けた戦車の乗車メンバーはどうしてるのかとか、疑問点になりそうな部分はしっかりアフターケアをしてくれるので安心して見られる。特に初期段階で気になっていたみほの過去、助けた昔の仲間がみほにしっかりお礼を言ってきたのはまた違った形での友情を表現できてて良かった。ベタだけどこういう感情表現を着実に積み上げることでキャラクタが現実性を帯びていく。


友情といえばみほの部屋に5人で集まった時は必ずと言っていいほど擽ったくなるようなセリフの応酬がある。今回、みほが部屋の中で他の4人に対して言ったセリフは女同士でさえもちょっと引くくらいの実直さなんだけど、これが素直に他の4人の中で受け入れられる土壌が出来上がっているところにこのアニメの真摯さがあると思う。誰もみほのセリフに対して謙遜したり恥ずかしがったりせずに受け入れる。この関係はやっぱり強い。沙織が戦車道に役立てるために通信士2級の資格を取ったりしているのも決して自己満足ではなくチームの力に還元するためであり、そういった「他者のための行動」を各キャラクタが自然にできるところにあんこうチームの結束の強さがある。みほは最初の頃と比べてだいぶ他人のための強さを得た。自分のために戦車道をやらないのではなく、皆のために戦車に乗りリーダーとして活躍する。近年では恐らく最も真面目な主人公だろう。


とりあえす次回が今年の分の最終回、本編の最終回は来年の三月ということなのでそれまで死ねない理由ができてしまった。頑張って生きよう。