ココロコネクト ミチランダム

沢城みゆき沢城みゆきによる沢城みゆきのためのエピソードだった。伊織がメインの話だと思ってたら完全に稲葉の独壇場で「えっえっえっ」と挙動っていたら話が終わっていた。特に16・17話における稲葉の素晴らしさに議論の余地はないだろう。今年の沢城みゆきは際物というかやたらと歳食ってるキャラが多かっただけに、こういうまとも(?)な恋する女子高生やられるとギャップがすごい。今年のベストキャラやっぱり稲葉になりそうだ。というかデレばんの可愛さは犯罪でしょう。


テレパシーという伝達方法は「どこまでの情報を視聴者に開示するか」ということを意図的に制作側がコントロールできる。物語の中ではテレパシーが伝わってるという事実が存在しても、その内容を視聴者にまで開示する必要はない。この調節がけっこう上手くて、伊織⇄太一という主要2人の心情は細かく伝えてくるのにその他に向けられる心情はあんまり描写されない。これによって各キャラクタの位置する座標を明確にしている。ただ相関的描写は上手いんだけど個別描写となるとそこまででもなく、特に物語中心に位置する伊織が壊れていく様子があんま克明に描かれておらず急に性格変わっていって違和感がやばい。それに反比例するかのように稲葉の性格がどんどん丸くなっていく。妹ちゃんは安定のかわいさ。唯と青木はサブ的な立ち回りの中で物語の骨格を補強していて、そんな役どころを付与されるほどの強さを身につけたのだという感慨もあり。


しかし太一は「偽善者」でもなくて「お節介」でもないという非常にカテゴライズに困るキャラクタなんだけれど、こういうタイプの人間でなければ主役やれないんだろうなという思いもあるのでかなり複雑な気分である。というか逆に稲葉と伊織以外のキャラクタがリアルと乖離した性格なんで、その性格を現実に近しい形で矯正していくというのがヒトランダムからカコランダムまでのエピソードだったんだけど、今回は初めからリアルの触感がある伊織が中心軸におかれたために話の重さと稲葉以外の3キャラと伊織との温度差の違いが目立った。


全ての事態の収拾の付け方がかなりフィクション的だったのはまあ創作作品における逃れられない宿命という感じなので今更どうこう言っても仕方ないけど、自分でも抑制できない感情へのけじめの付け方が「そんなん知るか、勝手にやってやる」というのは一番正解に近いよなーという納得がある。この答えを導き出せたのは間違いなく不真面目と真面目の中庸を地でいく稲葉の存在に寄るところが大きい、というより稲葉がいなかったらたぶん出てこなかったのではと思われる。だって他の奴らが生真面目過ぎるし。


伊織の崩壊によって歯止めの効かなくなった事態悪化を防ぎ、全てを丸く収めるためにはやっぱりこういう突飛な展開じゃなきゃ駄目だったんだなという創作作品における限界が見えてしまったのは残念だったけど、まあフィクションはフィクションだし、唯が空手上級者という設定も大いに生かされたので良いんじゃないですかね。ただ文研部5人というサークルにおける部外者として瀬戸内が伊織の自我を取り戻すキーになったというのはあんま納得いってなくて、伊織と瀬戸内が似たもの同士というのは「じゃあそれキズかカコあたりで伏線張っておいてくれよ」という不満があるんだけど、伊織の「友達になろう」という一言は本人の性格をそのまんま反映していて台詞回しの上手さを感じる。


取り敢えず稲葉が最後の最後で報われたので満足度かなり高い。確かに伊織と太一は恋人というより親友という関係の方が収まりがいい。これテレビシリーズで放送してれば夏季クールで一番良かったんだけど、このボリュームだと本編終了後と地続きのOVAとしてリリースという形で正解だったんだなーという納得感もある。ちなみにいつものように(ヒトランダムから今回のミチランダムまで全部含めて)評価を下すとしたら、

ストーリー 9
キャラクター 9
演出 9
作画 9
音楽 9
総合得点 45点
総合評価 A

になります。カコランダムまで見て面白いと思った人はこのミチランダムは絶対に見た方がいい。というか見ないと収集がつかないと思う。