ラブライブ! #8 「やりたいことは」

  • 全くもって文句無し。単純な名作という枠を超えて歴史に名を残す金字塔としての作品に今到達しつつある。物語としての面白さと映像としての素晴らしさが共に確立された傑作。今回の話が見れただけでもラブライブというアニメがこの世に生まれた意味はあると思う。今まで見てきて良かった。本当に良かった。良いところあり過ぎて少数の悪いところを完全に消し飛ばしているという創作作品における超絶理想的なエピソードでした。
  • このアニメ唯一の欠点として、最初に提示された「廃校を阻止するためにスクールアイドルを結成した」という事実に連結するはずの焦燥感、ひいてはスクールアイドルとしての活動の核が今まで見えて来なかったという部分があったんだけどそれが今回で一気に解放された。穂乃果たちのクサいくらいの熱血さと抑圧されていたエリーチカの感情が一点に結び付いたBパート教室でのシークエンス、そこに廃校を賭けたオープンキャンパスというイベントが加わり熱量が最大にまで上がったところでライブをやるという構成の完璧さである。こんな綺麗な脚本のアニメ久々に見た。
  • ライブで披露されるのがμ'sの1stシングルってのがベタだけどテンション上がってくる。過去回想を挟みながら全員の練習の成果が目に見えてわかるようになってる演出とか凄い泣ける。こういうストレートなアニメはストレートな演出だけで充分成立させられるということが証明された。ライブ映像のクオリティも1stシングルの特典DVDに収録されてたライブPVとは明らかに違う。1stライブをアニメで新たに再現するという初期ファン感涙ものの鮮やかなやり口が花田十輝らしい。おれなんかは初めてラブライブというプロジェクトを知ったのが2年前の4月くらいでそれからずっと動向を見てた、ファンというほどの人間でもなかったわけだがそれでも感動は大きかった。あの時からラブライブにハマっていたらおれの人生は今より良くなっていたんだろうか。
  • ちょっと不満なのは尺が足りなかったからなのか、エリーチカさんがデレてからのイベントがライブにおける回想としてダイジェストで流れてしまったことだけど、まあこのくらいは瑣末な問題だし今後取り返してくれれば許せる。ここまで丁寧に脚本書いてきた花田十輝なら大丈夫だろう。
    • もともと「花田脚本に難がある」というのは、花田脚本が不特定多数の視点が介入する物語におけるバランスの取り方が上手くなく、調和を保とうとするがゆえに自身の頭の中で描いた帳尻合わせで変な方向へ進んでいく、というパターンのものが一時期多かったため「花田脚本は駄目だ」ということでネット中心に多くの人間に刷り込まれた印象だと思うんだけど、彼は限られた空間で限られた人間たちのやりとりを描くことに関してはかなり上手いので、それが遺憾なく発揮されたのがけいおんであり、そしてこのラブライブであると言える。
  • エリチカに影響されたのが穂乃果ではなく海未だったという事実がキャラの性格を完全に把握していることを示している。6話でμ'sの実質的リーダーであり精神的支柱としての資質を見せつけた穂乃果が揺らぐことはμ'sの存続そのものが危ぶまれてしまう。それでも「エリーチカにダンスを教わろう」と決めてエリーチカに申し出たのは穂乃果だった。こういうキャラクタの動かし方において違和感のひとつもないのが創作作品としては奇跡に近い。
  • さり気なく希がμ'sに加入できたのも「μ'sという名前を付けたのは実は希だった」という設定があったことが大きい。これがなかったら「なんでお前も入るんだ」的な批判があってもおかしくなかった(希が「9人や、ウチを入れて」と言った時の「えっ…希先輩も?」という穂乃果の台詞を深読みするのはいけない)。希はただでさえ作中だけでなく作外においても色々と問題を抱えているキャラクタなので今回で何とか自然にμ'sに溶け込めて良かった。もはや子を見守る親の気持ちにまで昇華されている。
  • 映像としてはライブに目が行きがちだけど、エリーチカがダンス指導に入ってからの練習の描き方が今までの練習と全然違っている点やエリーチカと希が廊下で衝突するところのコンテとか他にも良いところ山ほどあるので繰り返し何回も見ないと全部把握出来ない。山場のひとつである、エリーチカをμ'sに加入するように誘うシークエンスでエリーチカが光の差す窓側の席に座っていたことも示唆的だ。
    • もちろんライブ映像も物凄く良い出来で、キャラの動きと表情が一体になって臨場感と多幸感をもたらす完璧なスクールアイドルのライブだった。「僕らのLIVE 君とのLIFE」のサビのところの「わかるから」でエリーチカさんだけまばたき2回の間にウインクしてるのとかめっちゃいい。ライブが終わり、穂乃果の最後の台詞が「やった…!」じゃなくて「できた…!」なのがたくさんの練習の積み重ねとそれでも本番まで不安が残っていたことを感じさせるのも良い。しかし「僕らのLIVE 君とのLIFE」は聴けば聴くほど名曲だという認識が高まっていく不思議な中毒性をもった曲で、これ初めて聴いたの2年も前のことなのに未だに新鮮な気持ちで聴けている。
  • 他にも色々と言いたいことはあるけどまあこれ以上長くなるのもあれなんで後は自分の中で消化します。これだけ面白いと何回見ても飽きないので繰り返し見ながら束の間の幸福に浸っていても罰は当たらないだろう。