劇場版 とある魔術の禁書目録(インデックス) エンデュミオンの奇蹟

見て来ました。感想はやはり「いつもの吉野脚本よりは幾分マシなほう」に尽きると思う。正直吉野脚本という前情報の時点でだいぶ観に行く気が失せていたんだけども、まあせっかくだし特典の文庫本読みたいし、ということで朝イチで映画館に足を運んだ。

重要な部分をネタバレしないように内容を語るのは難しいんだけど、基本的に「吉野脚本は前半でいろんな事をやろうとして風呂敷広げすぎて、そのしわ寄せが後半にやってきて結局広げた風呂敷を畳めないままグダグダになって終わる」という前提さえ押さえていればいいだろう。前半部分で様々な謎やストーリーの核心に迫るための断片的な情報がばら撒かれ、最終的に何とかほとんど回収したものの物語を上手く締めるための力は残っていなかった、という印象を受けた。決してシナリオ自体がつまらないわけではない。俯瞰してみるとわりと近代的な王道のセオリーに則っているし(歌とか歌とか歌とか)。ただ細かく見てみると結構な粗が目立つ。個人的に一番気になったのはステイルとその部下達が最初に上条さんたちを襲ってくるシークエンス、あそこでのステイル達の攻撃はどう見ても対象をとらない無差別級の範囲攻撃なんだけど上条さんが「なんでアリサを狙うんだ!」って吠えてて「…?」だった。あれはコンテが悪い。ステイル達がアリサを見ている・あるいは攻撃対象にする描写を入れるべき。

ただ科学と魔術はかなり均等なバランスで交差していたし、今まで登場したキャラが一堂に会するという一種のお祭り感はあってそれは良かった。特に散々「聖人」と言われていた神崎に関しては本編で出しきれていなかった実力を見せつけていて準主役並みの活躍をしている。宇宙空間でミサイルを日本刀で迎撃するとか無茶苦茶やってたけどそういうの含めて規格外の強さだと表現できててこういうどうしようもない破天荒な展開もこの作品に関して言えばアリだと思う。

恐らく観客の多くが気にしているであろうライブ映像はJCとは思えないほどの出来栄えだったので安心していい。この映画は全体的に背景作画と演出がシナリオの欠陥を埋めるように頑張っている。学園都市の街並みもアニメで見た時より数倍綺麗だし、エンデュミオン内部の作画も良かった。演出に関しては戦闘全般的に派手さを意識していて、ステイルの放つ炎のような色鮮やかなエフェクトが目立つ。戦闘といえばアウラの操る機械を利用した目まぐるしく動きまわるカメラワークと素早いカット切り替えでスピード感を出していた序盤の戦闘シーンは良かった。

シナリオに関してはアフターケアがほとんどない、というか出来なかったんだろうなーと推察できる。アウラが歌ったことによりアリサの正体が判明して、そこからアリサが独立した一個体として活動する必要性が無くなったので、ここからアウラを救助して学園都市に戻す、という選択は厳しい。とはいえ今まで散々歌手デビューとかやって世間にも相当認知された状態でアリサの存在を消すというのも辻褄合わせが面倒そうだし、そうなるともう「想像にお任せ」エンドにするしかなくなる、というところだろう。ラストシーンで当麻とインデックスが見上げたあの空の向こうにアリサ・アウラがいるのかもしれないし、いないのかもしれない。その判断は観客に一任される。

散漫になったシナリオと尋常じゃなく気合いの入った背景や演出が共存しているという異質な状況だったけど禁書ファンに向けての作品としては及第点というところでいいだろう。恐らく本編で永遠に見ることの出来ないであろう「初春が頭の花冠を外した姿」が見られるのでそれだけでも希少価値(?)がある。影が薄いと言われ続けて早3年以上になるメインヒロインことインデックスも出番多かったし、超電磁砲の面子も友情出演みたいな位置づけじゃなくしっかり活躍の場が与えられていたのもキャラへの思い入れが感じられる。やはり惜しむらくはシナリオで、いっそのこと原作者鎌池和馬オンリーでやったほうが良かったかもしれない。