劇場版名探偵コナン 絶海の探偵

見てきました。結論から言うと「叫べば何とかなる」映画でした。
まあ本当はこれだけで言及終わりにしようと思ったんですが逆にこの文だけ見て「何それ気になる」と好奇心を掻き立てられ劇場まで足を運び1800円払って映画観てしまう人とか出てきそうなので一応内容について出来るだけネタバレを回避して手短に言及しておきます。


はっきり言わせてもらうと今までの映画の中でも2番目に面白くなかった。1番目は海賊の話です(タイトル忘れた)。何で面白くないかと言うと、根本的に脚本が驚くほど雑だという理由が挙げられる。ラストに劇場版名探偵コナンにありがちな推理のどんでん返しはあるものの、それはおれ含め大半の観客が予想出来てた範囲のことだと思う。最初に大元になる推理がコナンによって打ち立てられ、でもそこには大きな欠陥があって真犯人は他に…といういつものパターンなんだが、まず大元になる推理に関して明らかに「殺人を行った犯人」をこちら側に明示してこないのがあからさま過ぎて意図が丸見えになってしまっている。正確に言えば、コナンが想定した犯人が殺人を犯すシーンのイメージ映像や殺害時の状況整理などをまるで行わないのである。もうこの時点で「ああ、じゃあコナンが推理した犯人は殺人はやってないんだな」とわかる。今までの映画でもこういうことが無かったわけではない。しかしそこは上手くミスリードするような脚本が土台にあったので観客の目をごまかせていた。この映画に関してはその土台がもう揺らいでいるので最後までミスリードすることもできなかった。まあ櫻井武晴はアニメ脚本は初だし、インタビュー見てる限りでは櫻井本人が書いた脚本が別の人間によってだいぶ変えられたっぽいので少しちぐはぐになってしまったのかなーという。これ他の人間が手を加えず櫻井武晴脚本そのまんま採用してれば面白かったのではとも思ったりした。

しかし全部が悪いかと言われればそういうわけでもなく、監督の謎の美意識が見られるコンテとか今までに無い演出とかは新鮮だった。劇場版コナンの監督と言えば14作目くらいまではこだま兼嗣と山本泰一郎が担当していたが、最近は新しく静野孔文氏を起用している。今回彼は映画の絵コンテと演出も担当している。静野氏といえばアクションシーンに関してはとにかく感覚優先の派手な絵作りをする割に細かいところに変に気を配っている印象があったんだが、この映画でもその特徴がよく現れていた。平次と和葉が逆光に照らされる引きのカットがあって、平次が下手側に移動して和葉がその場に立ち止まっているシーンなんだけど、ここは普通だと両者の間に何かしらの障害物を置くような絵作りになるはずだ(カメラを引きで固定させているし)。だが果たして障害物は画面右端に置かれていた。平次が進む方向である。なので平次は画面中央から右に向かって進む途中で姿が障害物に遮られて見えなくなる。ここは面白かった。平次と和葉の距離感を障害物で遮らないように考慮されていながらしっかりと平次が「観客と和葉の視界の両方から消える」という目的を達成してて素直に感心した。

ただ全体的にはそこまでコナンを担当してない監督が参加することで良くも悪くも既存のコナンの様式美を崩していて、前作ではそれがプラスの方向に働いたが、今回は残念ながらマイナスの方向に働いてしまった印象がある。前述のように所々で面白い画面構成が見られるのだがトータルではややインパクトに欠ける。いっそ細かな部分を捨ててでも本筋に引き込ませるような絵作りをした方がまだよかったのでは、と思った。前述のシーンとか普通の観客はスルーする。おれみたいな一部の気持ち悪い人間がテンション上がるくらいだ。コナンを見に来ている人の9割は間違いなくストーリーとキャラクタを見てるだろうし。

あと本編に関係のない話なんだけど、和葉役の宮村優子の声が明らかに不調で今までと全然違って聞こえた。大丈夫か。