たまゆら〜もあぐれっしぶ〜 第10話 「いつかくるその日まで、なので」

  • 今年度最後のイベントが展覧会ということは来年卒業してしまうかなえにとっては実質これが高校生活最後のイベントになる。この時点でアニメ最終回の話も見えてきてしまうのだけど、佐藤順一が手掛ける作品は話の内容というよりキャラの交わす言葉に泣きのフックを入れてくるのが常なのであんま関係ないはず。
  • 「大切な時間は遠ざかっていく」というかなえの言葉にも現れているけど、このアニメは過去・現在という時間を重要視していて、過去を知らないぽってという存在が中心になって、現在を過去としてではなく現在を現在のまま留めておこうとして写真を撮る。「写真を撮る」という行為は時間の一部を切り取るという行為であり、切り取られた時間は写真という形になって手元に残すことが出来る。写真というファクタは過去を思い出すためではなく、現在を切り取るための使い方をされているので作品の内容が後ろ向きになることもない。
  • 父親の記憶を辿る手掛かりも写真で、今現在の時間を形にして留めておくのも写真ならば、未来はどのように扱うのだろうという問題が出てくる。実際今までは無意識なのか意図的なのかは定かではないが今より先のことにはほとんど触れられていない。近い将来、例えば写真展なんかは目標として定められているけど、高校を卒業してから先の未来についてはノータッチに近い。しかし作中に明確な時間の流れが存在している以上、未来を思うことは避けて通れない。かなえが同学年でも後輩でもなく先輩として現れたのは、ぽってたちに未来を考える時が迫った時にひとつの道標となるためだった。
  • かなえが知らない場所で様々な人や物に接することで将来の自分の姿を思い浮かべることができて、行動しようという決心が付いたその過程は1期でぽってが辿った道程に似ている。そういう意味で2期におけるもう一人の主人公はかなえで、ぽってたちが示した道程を辿ったかなえが今度はぽってたちよりも先の道を歩き、1年後にはぽってたちがその道を歩くというシナリオはもう既に完成しているのかもしれない。