極黒のブリュンヒルデ 第1話 「きみを待ちながら」

原作全て読んだ状態での視聴だったが、岡本倫の絵を生かした作画やキャスト陣の演技、シナリオの構成は原作の良さを殺すことなくアニメーションとして最大限の力を見せつけている。岡本倫はコマ割りを見ればわかるようにあまり行間を読ませる作家ではないのだが、アニメもあまり溜めを使わずテンポ良く進んでいく。女生徒が吸水口に足を取られる話を良太が落石に巻き込まれそうになる前にもってくるのは構成としてどうなんだ、と思ったがさほど問題はなかった。基本的な構造は原作通りなのだけど、会話やイベント発生の順序などはオリジナルのものになっている。

キャラデザがやや綺麗になってるのはアニメ化の恩恵といっていいのか悩むところだが、キャラクタの動作が細やかに分かるのはまあ恩恵といっていいだろう。クロネコの表情は原作のほうが多彩だった気もするが、1話時点では表情の変化を見せる必要がないという判断なのかもしれない。ただ良太が落石に巻き込まれる前にクロネコが心中で思っていることをそのまま言葉に出してるあのシーンは蛇足だった。クロネコは思っていることを言葉にするキャラクタではないからだ。

アニメは原作と違い、「これから先起こる(だろう)こと」をキャラクタに言わせたりモノローグで示させたりしているので、そういった意味では先の見えない緊張感というものは減退している。しかしわけのわからない部分もカバーしているので謎の多さに対する苛立ちやストレスの蓄積もない。この違いはアニメを見てから原作を読んでも、原作を読んでからアニメを見ても両方楽しめるという長所を生んでいる。

エルフェンリートという前例があったおかげでこの極黒のブリュンヒルデも迷いなく制作できてる印象を受ける。シリアスな部分が前面に押し出されている作品だが、それを視聴者が真っ正面から受け止めないように工夫もされている。1話としては充分すぎる出来映えだった。