2014年冬アニメ総括

社会人にランクチェンジすると大学生への恨み辛みが尋常じゃなく増幅していく。そういえば職場で年金払いたくねえ的な話になって「何でですか」と聞かれたので「年金受給年齢に到達するまで生きてない、50歳くらいで潔く死ぬ」と答えたら場が変な空気になりました。やはりおれはひたすら冗談だけ言ってればいい人間なのだと痛感しました。そんなことよりアイカツ最新話で新しく登場した大空あかりさんがアイカツでは考えられないほど正統的な後輩っ子だったことに感動している。ドリアカ勢の負の遺産を拭い去ってほしい。


いつもの。


評価方法

・評価ポイントは「ストーリー」「キャラクター」「演出」「作画」「音楽(OP・ED含む)」の5つ。各10点満点
・総合評価(ランク)は「SSS」「SS」「S」「A」「B」「C」「D」「E」「F」「Z」とする(各説明は以下参照)

「SSS」~生涯愛せる、墓場まで持って行きたい作品
「SS」~アニメの金字塔レベルの作品
「S」~何度観ても面白いと思える名作
「A」~傑作
「B」~秀作
「C」~良作
「D」~凡作
「E」~駄作
「F」~ふざけんな
「Z」~黒歴史


ロボットガールズZ

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ストーリー 8
キャラクター 9
演出 9
作画 9
音楽 7
総合得点 42点
総合評価 A

実はかなり好きだったんだけど放送形態がかなり特殊だったので今期作品の中に入れていいものか迷った。しかし1月に放送開始して3月に放送終了するなら立派な冬アニメだろうということで入れました。とにかく「元ネタを知らなくても全く新しいアニメとして楽しめる」というのはかなり優秀だろう。この手のアニメは「元ネタを知っている方が楽しめる」みたいな、知識を持つ者と持たざる者の間に断絶が生まれてしまうことが屡々だが、このアニメは元ネタ全てを一旦分解してからほぼ違う形で再構成するという離れ業を成し遂げた。

ストーリーは基本的にあってないようなもので、かと言って日常系のような緩い時間が流れているかといえばそうでもなく、コメディに傾倒し過ぎず日常アニメとギャグアニメの間隙を突き進んでいるような不思議な感覚を抱く。ドタバタコメディの延長みたいなネタも多いのに、非常にアクの強いキャラが多いためにそうしたネタ自体があまり主張しなくなってる。味方キャラより敵キャラに情が湧く作品は往々にして名作というおれの法則はまだ効力を発揮しているらしい。

味方・敵の主要キャラはもちろん、いわゆる雑魚敵からモブキャラまで元ネタが存在するせいかとにかく個性が強いので、似たような展開の話があってもキャラクタの力で押し通せるという強みがある。制作スケジュールに余裕があるのだと推測できるくらいには作画が安定感あるし、勢い重視のネタがキャラのパワーに拍車をかけている。最近の兵頭一歩はメインで脚本書くといまいち力発揮できてなくてどうしたもんかと思っていたらこんな辺境の地で力を十二分に発揮していた。

毎回出てくる個性的な新キャラともう本気なのかふざけてるのかわからん話の組み合わせの妙を楽しみつつ、ラストにはそれらが一つに収束していく構成の上手さを感じられる。あまり目立ってはいない作品だけど隠れた名作という立ち位置でしぶとく生き残って続編作ってほしい。



生徒会役員共*

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 8
作画 9
音楽 7
総合得点 39点
総合評価 B

1期と全く同じノリ同じ内容同じテンションなので、この2期から生徒会役員共を知ったという人以外は本当に安心して最後まで見られたのではないだろうか。同じことを手を替え品を替えやっているだけなのに何故か飽きないという一種の魔力に近いものを秘めており、1期放送から4年近く経っても何ら色褪せない作品としての強度の高さには喫驚する。GoHandsも1期の時よりさらに作画に力を入れてきて、わりと理想的な形の2期だったように思う。ここまでブレないともはや尊敬に値する。

魔法も怪物も出てこない普通の学園ものでありながらほとんどラブコメ要素ゼロでひたすら下ネタを投げてくるというスタイルなのに低俗さ・下品さをあまり感じさせないのは本当に凄いことだと思っていて、芸能人でいうと高田純次氏に似た独特のオーラを感じる。上品なエロスというか、下ネタを下ネタと認識させないポテンシャルがある。ツッコミも主人公の津田とヒロイン(?)のスズという二人にほぼ限定されているのに、ツッコミが多彩なので今期の『ディーふらぐ』のようにツッコミに飽きてしまうことがない。のうりんを視聴していて確信に変わったのだけど浅沼晋太郎という役者は異常なまでにツッコミの力がある。ツッコミのトーンの引き出しが物凄く多いので、原作読んでる時より楽しめる。

津田とスズが下ネタを放り込んでくるキャラクタに対して矢継ぎ早に突っ込んでいくというスタイルで、様々なキャラクタがいるのにみんな揃いも揃って下ネタばっかり連発してくるという捻りの無さなんだけど、それが逆に癖になって繰り返し視聴したくなる中毒性を生み出している。これに1期の時点でハマってしまったのでおれは原作も全部揃えて4年もの間2期を心待ちにしていた。この2期が放送されるまでに数多くのOVAが発売されたことも記憶に新しい。あのOVAもやってることはテレビ放送版と何ら変わりないので、普通に2期として放送してれば今シリーズは3期として放送できたのでは。やっぱり予算の事情が厳しかったのかな。

とにかくやってることが非常にくだらないのだけど、毎回変に気を張らず何も考えないで楽に見られるので今期の中では清涼剤としての役割を果たしていた。最高得点はとらないが常に平均以上を叩き出す抜群の安定性で最後まで走り抜けて、この先何期までやっても一切クオリティが下がることなくこのまま安定し続けるのだろうな、という確信さえある。正直この調子のままだと原作12巻くらいでネタ尽きそうな気がするんだけど、氏家ト全が本気出せば15巻くらいまでいけそうな気がしないでもない。とりあえず3期は見たい。3期はやってくれ。



最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。

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ストーリー 3
キャラクター 5
演出 7
作画 7
音楽 6
総合得点 28点
総合評価 D

妹の様子はちょっとどころではないレベルで終始おかしかったので真剣に入院を検討しろという突っ込みしかできない作品でした。何をどう勘違いしたのか知らないが最初は土曜の夜10時くらいから放送開始したせいで苦情殺到して、仕方なく放送枠移動させたもののやってることは何ひとつ変わらないという煉獄ぶりを発揮して視聴者の精神をガリガリと削ってきた。

幽霊というファクターを生かさないどころか掘り下げさえほとんど行わず、ひたすら妹を焚き付けて兄への好感度上げさせようとしたり、妹に乗り移って兄へ猛烈にアプローチしたりと単純に作者がやりたいように動かしているのがダイレクトに伝わってきて中々つらいものがあるのだけど、EDにおいて明確に幽霊が昔自動車事故で亡くなったことが示唆されているので最終回近くなったらそこらへんに触れるのかなーと思ってたら最後まで触れないという悲しみ。結局幽霊とは何だったのか最後まで見ても分からなかった。

凄く雑に話を纏めると、12話かけて妹が血の繋がってない兄のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ段階に至ったという一見超スローペースな構成ながらそのぶん密度は濃い...というわけでもなく、似たような話繰り返して結局振り出しに戻るという定型化されたパターン。一番衝撃なのはこれが実写映画化もされるということで、完全18禁で色々進めてるらしいけどもうそれは原作の趣旨から離れてきてるのではという疑問もある。

恐らく、恐らくだが妹は血の繋がってない兄との距離に悩み、突然現れた幽霊の力によって徐々に距離を縮めていくが、幽霊は幽霊で自分の存在について葛藤し、妹と幽霊のふたつの人格がやがて妹の身体の中で共存していく、そうした内側における人間関係(家族関係も内側の関係性といえるだろう)をテーマにしてるはずなので、紳士的要素というのはそうした内側で起こる関係性の変化を外側に表出させるための強い刺激だと考えるべきなんだが、映画はこっちが前面に押し出されているようなので完全に目的と手段を取り違えているようだ。詳しくは見てないので分かりません。見た人いたら教えてください。



ノブナガン

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ストーリー 4
キャラクター 2
演出 4
作画 5
音楽 5
総合得点 20点
総合評価 E

下手に原作の絵を再現しようとせずアニメのキャラデザは原作と掛け離れたものにしたほうがアニメ作りやすかっただろうしそこそこウケたのではないだろうか。最初からコアなファンをターゲットとして狙い撃ちしようと目論んでたならともかく、ノブナガンは原作がアーススターで連載始まった時から大々的に宣伝してたので、そんだけ力入れるならアニメも色々やりようがあったのでは、と思ってしまう。

おれは原作読んでないのだけど、話が進むにつれて深く研ぎ澄まされていく代わりに大衆受けする道を閉ざしてしまった、というような、この手の作品にありがちなパターンに陥っているのが何となしに伝わってきた。あと偶然同クールに『ノブナガ・ザ・フール』というアニメが放送されていたことも悲劇だった。あっちはあっちで酷いアニメなんだが、両者ともに「何らかの超常的な力を特定の時間から輸入する」という点で似通っており、せめてこれらを別クールで放送するとか出来なかったのかという無念さが残る。ノブナガンは過去から偉人の力を、ノブナガザフールは未来から機械の力をそれぞれ借りてきている。

しかしノブナガンにおける偉人たちはどれも皆渋い。主人公が信長の力を借りてるのに他のやつらがジャックザリッパー、ニュートンジェロニモ、ロバートキャパといった渋すぎるラインナップ。中には「こいつ偉人か...?」というやつもいて首を傾げていた。もう原作者が出したいやつ全部出したみたいな闇鍋感あって面白いんだけど、こうした闇鍋感はドリフターズの方が遥かに上回ってるんだよな。あっちの方がテーマもストーリーもしっかりしていて面白い。ヒラコーがアニメ化してもいいよと言ってくれればあれがアニメで見れるわけです。お願いします。

作画によくわからん仕込みとかあって結局最後までそれが何の意味を持つのか理解出来なかった(あの薔薇みたいなエフェクトとか)。しかも何も解決しないまま最終回までいったので不安しかなかったんだけど、いつの間にかノブナガンとジャックザリッパーが結ばれてて2話ぶんくらい見逃したのかと本気で焦ったけどそんなことはなかった。今までの浅い積み重ねで何故二人が恋仲になったのか全くわからなかった。尚親しい人間から「原作読めよ」とめっちゃ言われてるのでそのうち読んでみて疑問解決したらその時は又改めて何か言います。



ウィッチクラフトワークス

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ストーリー 9
キャラクター 8
演出 8
作画 8
音楽 10
総合得点 43点
総合評価 A

原作の絵とか見てストーリーより絵の美麗さを重視するタイプのオシャレ漫画なのかなと思ってたんだけど、いざ放送が始まると予想を大いに裏切る日常系作品のエッセンスを根幹に据えたファンタジーバトルコメディみたいな何でもありという有様で、そのうえ主人公がヒロインでヒロインが主人公のような役割を果たしているためこの手の作品には珍しく目立ったラブコメ要素がほとんどない。ヒロインが感情をほぼ表に出さないキャラだということを逆手にとった映像表現や、ガルパンで培った空間把握能力は水島勉の高い能力を示している。

正直なところシナリオ自体は特に目新しい面白さとか無いんだけど、主人公とヒロインを中心として登場人物のほとんどが非常に強いクセをもったキャラクタであるため、キャラクタが喋って動いているだけである程度の面白さが担保されているという、キャラクタ主導型の見本のような作品だった。魔法での戦いは最終回付近になるまでメインどころかサブにすらなっていないという異質ぶり。ウィークエンド編になると本格的な戦いが始まるが、それまでが日常に近接し過ぎていたせいか本来メインで想定されていたであろうはずの戦いの方に違和感があるという逆転現象が生じた。

終始作画の乱れもなく、11話では優れた剣戟を披露し作画の素晴らしさを惜しげも無く見せつけた。できればこれ最終回で見たかったなという気もするが、最終回では処理すべき問題が多過ぎてそれどころではなかったというのが実情だろう。それより最後まで主人公がヒロインでヒロインが主人公なのはどうにも残念さがある。主人公が秘められた力を発揮したところまではよかったんだけど、再契約のくだりで結局もとのヒロイン系主人公に戻ってしまい、「守られる側から守る側になる」という王道は達成したものの日常への回帰というラストを導き出すのに伴って主人公の役割まで元に戻ってしまったという感じ。

しかし小難しいことを一切せず綺麗な作画でやりたいことをやるというスタンスを貫いた結果平均以上のものが出来たというのは、監督のセンスが突き抜けていることの証左であり、水島勉は何でも卒なくこなせるという事実が益々真実味を帯びてきた。ホラーもラブコメもファンタジーもギャグもできるとなると後は紳士アニメくらいか。

あと主題歌ふたつとも良かったですね。OP・EDともに今期ベスト最有力候補ってのは最近ほとんどない事例。fhanaはアルバム早く出してほしいしEDの魔女たちはサマーソニッククラフトワークとコラボしてほしい。



スペース☆ダンディ

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ストーリー 6
キャラクター 6
演出 10
作画 10
音楽 6
総合得点 38点
総合評価 B

2期が7月から放送されるらしいしそもそも一本筋の通った物語は存在しない完全1話完結型作品なので、全体的な評価を下すということが難しい。しかもこのアニメは各話の出来に凄まじいくらいのばらつきがある。とても面白い話ととてもつまらない話が共存しているのだ。円城塔の脚本回とか皆微妙だと言ってたけどおれは楽しめたし、ダンディが子供のために奔走する回とか最後のQTのSF恋愛小説のような回とか、単体で見ると面白い話もあるんだけど全体的には4:6で微妙な話の方が多かったりする。

しかし話の内容を抜きにしてアニメーションだけ見てみるとここ数年のアニメの中でもトップなのではないかと思えるくらい作画が凄い。アクション面ではもちろん、ちょっとしたキャラの仕草や爆発エフェクトまで何もかもが芸術のような出来栄えで、話の内容がつまらなくてもただ見てるだけで楽しめるという、まさしくアニメの本質を追求した作品だった。これは誰がどう見てもアニメでしか出来ないし、アニメでやることに意味があって、惜しむらくはアニメーションと音楽がトップクラスのこの状況で最高クラスの脚本が投入されていれば作オタ以外の視聴者からも広く人気を得られただろうということか。

毎回1話完結なので次回の展開がまるで予想出来ないという楽しみも久々に見出せた。主要キャラは変わらないがとにかく話の内容が多岐に渡る。SFだけに収まるのかと思いきやありとあらゆるジャンルを包括していて、このバリエーションの豊かさには確かに目を見張るものがあるが、あまりに広範囲を手中に収めようとして中途半端に咀嚼されたものが多い、というのが欠点。海外ウケしそうなノリのものが多いが、肝心な部分を映像に頼り過ぎているというところもある。

映像のクオリティと脚本の内容が完全に噛み合ったのは前述した第5話「旅は道連れ宇宙は情けじゃんよ」で、まあおれがこういうタイプの話を好むということもあるんだが、全部通して見てもこの話だけ明らかに脚本のレベルが違っていた。シンプルかつ奥深い話を映像の力で数倍魅力的に見せるという理想形が存在していた、あの回を超える話がシーズン2で到来することを願う。



ノラガミ

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ストーリー 8
キャラクター 6
演出 8
作画 8
音楽 9
総合得点 39点
総合評価 B

毘沙門天編の前半、雪音を穢れから救うところから原作の内容と乖離してきて、10話~最終回まではほぼオリジナルという結果になった。個人的にはこれが何より勿体無いと思っていて、というのもこのノラガミという作品で今のところ最も面白いのは毘沙門天編の後半、つまり雪音が救われてから後の話だからだ。そこでは夜トが昔大量の神器を斬った理由や一馬の恩義・毘沙門天との確執など作品の核になっている部分が多く明かされるし、主人公の夜トの人間性が明確に打ち出されるので作品の向かうところがはっきりと理解できる。これまで自ら進んで悪に堕ちたわけではない者たちがほとんどだった中で、毘沙門天編におけるある登場人物は自ら進んで悪の道を進んでいて、今まで戦ってきた敵たちと対照的な存在として印象的に描かれている。そうした重要な部分が尺の都合によりばっさり削り取られるというのは本当に勿体無い。

しかしそれ以外の部分はえらく原作に忠実に作っていて、作画も丁寧だしシナリオも本当に細かい部分を削った以外は完全原作準拠といっていい。ひよりはヒロインというよりは元々持っていた母性的な部分を強く出して9話ラストの雪音救出のシーンを感動的に演出してみせた。ノラガミって実はラブコメどころか恋愛的な要素がほとんど無くて、これは世界観の問題なのか作者が意図してるのかよくわからん。アライブ描いてた時は原作じゃなく原画担当だったので物語についての指向性はあんまり見えてこなかったんだよな。

音楽と演出、派手になりすぎない作画などで物語を効果的に見せており、やや省エネ感はあったものの全体的にはよく纏まった作品として印象的だった。毘沙門天のことが放置されているのは残念だが、夜ト・雪音・ひよりの三人の結び付きが強く示されているのは面白かった。ああでも主題歌はOPもEDもインパクト強くて良い刺激になってた。HSとか今まで何か変なことやってるバンドだという印象しかなかったけどこのOP曲聴いてから印象完全に変わったし、ED曲聴いたら早くryoはやなぎなぎのサウンドプロデューサーやれやという気持ちになりました。

余談ですが、ノラガミがアニメ化されたんならアライブもやってくれよという気持ちが本当に強くて、原作者の河島氏が亡くなってしまったことは本当に悲しいが追悼的な意味でも立ち消えになってたプロジェクトを復活させてもいいと思うわけです。原作は全21巻なので皆さんぜひ読んでみてください。



バディ・コンプレックス

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ストーリー 5
キャラクター 5
演出 6
作画 7
音楽 6
総合得点 29点
総合評価 D

とにかく全てがどこかで見たようなネタ。テンプレート化している話を継ぎ接ぎして組み立てたオリジナリティ皆無のストーリーに心動かされるはずもなく、終始冷めた目で視聴することを余儀無くされた。これならまだクソアニメに振り切れてくれたほうが楽しめたかもしれない。「王道」と「どこかで見たような捻りのない物語」は全く違うのだということを制作陣には理解していただきたい。

第1話だけは良かった。あれは今後の展開に期待のできる、良い意味で余白の多い回だったんだけど、回が進むにつれて余白は減り気持ち悪いくらい過去の作品の話の断片を取り込んでいった。盛り上げ方も下手なので緊迫感さえも伝わってこない。あと過去や未来といった抽象的かつ広大な時間設定を有しているのに、戦闘するやつは基本的に同じ敵で「侵攻→撤退」を繰り返すという狭さ。

このアニメ見るくらいならまだEVOL見たほうがいいよなあなどと思いながら最終回まで見たけどやっぱり駄目だった。アオバとヒナの絡みが少ない、というか基本的にはアプローチがアオバからヒナへの一方通行だったので、最後に自らの命を賭けてヒナがアオバを救おうとする(第1話において未来からヒナが過去にやってきてアオバを救うシーンに繋がる)、というシーンに説得力がない。

これ2期あるらしいけど2期でギャグでもいいから大きく路線変更しないと視聴継続できる気がしない。敵キャラで面白そうなやつとかいたんだけど、こいつをもっと最初の段階から馬鹿みたいな感じで出してればネタ的に消費できた。あと主人公に主人公のオーラ、ヒロインにヒロインのオーラが全くないので2期やるんならそこらへんもしっかりしてください



咲-Saki-全国編

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ストーリー 5
キャラクター 7
演出 7
作画 7
音楽 6
総合得点 32点
総合評価 C

女子高生たちが麻雀やってる姿に全く違和感を覚えさせないというのはこの作品の功績なのは間違いない。麻雀といえばヤニ塗れのおっさんや堕落した大学生がうひゃうひゃ言いながらやってるというイメージがゼロ年代前半くらいまで染み付いていたが、咲という作品が世に現れてからはフレッシュさが出てきたというか、麻雀そのもののイメージが若返ったという感覚がある。おれ自身は麻雀やらない人間なので卓上で繰り広げられてる事態を完全に理解把握してはいないが、それでもあんま問題なくて、ある種専門的なゲームなどを一般人に見せる場合の単純化という作業を行わずに「よく分からん能力を持ったチートクラスの化け物が色々変なことやってる」というオールスター戦のような豪華さと異常なまでに多いキャラ数だけで興味を惹かせる、というのは発想の勝利だった。

とはいえ咲の試合ペースが不安定なのは少なからず作品の出来に影響していて、アニメにおける演出がいまいち原作を超えてないこともあって冗長に感じる部分が多い。後は4人という限られた人数が閉ざされた空間にいて麻雀やってるので、4人のうち誰か一人がメインで語り部を担う必要があって、それはほぼ確実に4人の中で一番能力が劣る者になる。つまり語り部を任された人間が判明した時点で試合結果がおおよそ予測できるということだ。口数の量が如実に実力や試合運びに結び付くのはこの作品における最大の弱点で、それは今回のアニメ全13話通しても放置されており残念と言う他なかった。

誰が主人公かわからないような筋運びは前述の語り部の選出により起きている事態で、本来主人公であるはずの咲が11話以降ただの化け物のように描かれているのも視点が咲以外の3人に移動しているからだ。咲の視点は代わりに他の清澄の面子が保有しているが、卓上で咲が何を考えているかは咲以外知る由が無い。そういう意味でこのアニメの主人公はもう宮永咲ではなくなっていた。

物凄く中途半端なところでテレビ放送は終わったが、どうやらこの後何かしらの形で続編が放送・配信されるらしいので最終的な評価はそれ待ちになる。しかし今期はキルラキルといい咲といい世間が熱を上げてるものにつくづくハマれなくて、自分の感性がズレてるのか周りがおかしくなってるのかいよいよわからなくなってきた。



とある飛空士への恋歌

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ストーリー 7
キャラクター 5
演出 2
作画 4
音楽 8
総合得点 26点
総合評価 D

作画のしょぼさのせいでストーリーの重厚さがかき消されていた。なんでこんな平面的で安っぽく見えるキャラデザや背景美術でいけると思ったのか本気で謎なんだけど、問題はあの『ラストエグザイル 銀翼のファム』を遥かに下回る出来だったということだろう。話自体はこちらのほうが簡潔で盛り上がりどころもわかりやすいはずなのに、作画がしょぼいせいで演出までしょぼくなり、結果アニメーションとしてはかなり出来が低くなった。

シナリオも実際のところ細かい部分にはかなり粗があって上出来とまでは言えないのだけど、今期はこれよりシナリオが酷いアニメがかなり存在してるので相対的にこのアニメのシナリオがマシに見えたという。物凄い嫌な話なんだけどまあ「いつ放送されるか」という運も作品の良し悪しの判断や売り上げに少なからず関わっている。

ただ絶妙に盛り上がれないというか、登場人物が次々と死んでいくのを見ていても悲壮感とかあんまり伝わってこない。まあ演出が悪いんだけど、「人の死」というものを扱う場合それなりの覚悟が必要なのは当然のこと、その死をドラマティックに見せるかシステマティックに見せるか、その裁量さえも委ねられるからしてとにかく慎重さが要求される。ミツオの死は第三者的視点を持ちながらチハルとミツオ両者の視点も包括していてかなり良かったんだけど、それ以外のキャラクタの死はいたって事務的に処理されているかのような淡白さを随所に感じてしまった。

終わり方は雑で最終回としては物足りなかった。あとED曲が素晴らしいのでOPよりこちらの方をタイミング見計らって流してほしかった。赤い公園はメジャーデビューしてからハズレ出てねえなあと感心しているんですがアニメには全く関係ない話ですね。OPについてはノーコメントで。



そにアニ -SUPER SONICO THE ANIMATION-

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ストーリー 4
キャラクター 5
演出 5
作画 7
音楽 5
総合得点 26点
総合評価 D

こういうアニメのことを我々は「狂気」と呼ぶべきなのだと思いました。ほぼ全てのシナリオに得体の知れない気持ち悪さや不安や底の見えない闇が見え隠れしており、そに子が一人でただ旅するだけの話などはそれがかなり顕著だった。まずすーぱーそに子という架空のキャラに声を当てているのがすーぱーそに子だ!というスタンスを一切崩してないのが怖すぎる。田村ゆかりが自らを17歳だと公言するといった類の嘘とは全くベクトルが違う、「そもそもすーぱーそに子に中の人などいない」というわけではなく「すーぱーそに子は実在するのだ」という幻想をこちら側にも押し付けようと(共同幻想にしようと)するような恐怖感。これは本当にゾッとする。

もちろんこのアニメには最初から面白さなど微塵も期待していない。3話あたりで秘められた狂気がどんどん表出してきたので「ああこれは各話にどの程度の狂気が秘められているか測定すればいいんだ」という視聴方法を見出せて楽になった。巷ではそに子のフィギュアなどがそれなりに売れていて紳士的要素があるのかと思っていたがそうした要素は実際ほとんどなかった。気持ち悪いくらいクリーンな日常を気持ち悪いくらい正面から描く。ある意味で現代社会へのアンチテーゼとして作ってるんじゃないのかと思ってる。

もうひとつゾッとするのが「そに子はいつどんな時でもヘッドホンを装着している」ということだ。人と会話する時も大学の講義受けてる時もライブしてる時も風呂入る時も寝る時もとにかくヘッドホン。過去回想の時もヘッドホン着けてる。何があってもヘッドホン外さないので、これは聴覚障害もってるという裏設定あってもおかしくないのではという結論に達したのだけど、そうしたダークな設定が思い浮かぶほどこのそにアニの日常にはそこはかとない狂気が潜んでいる。

第一宇宙速度とかいうそに子のバンドがどの程度の知名度を持っているのかも分からないのだ最後のライブでめっちゃ盛り上がってることに違和感あるし、大学生のくせに大学におけるイベントとかほとんどないし、そに子の婆ちゃんは何でも出来る万能キャラとしてそに子よりも存在感発揮してるし、変なところとか不満とか挙げ始めたらもうキリがないだけど、かといってすげえ良いところがあるかと言われたら残念ながら見当たらなくて、最終回で「これはそに子が見てた夢だった...本物のそに子は人工呼吸器(=夢の中におけるヘッドホン)を外せず植物状態のまま病院のベッドに横たわっている...」とかだったら逆にめっちゃ評価してた気がする。

取り敢えず全くもって面白くないけど「意図せず現れてしまった人間の狂気」を知りたい方は見てもいいんじゃないでしょうか。



ディーふらぐ!

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ストーリー 6
キャラクター 8
演出 5
作画 8
音楽 6
総合得点 33点
総合評価 C

惜しい、という感想が最後まで拭えなかった。というのも主人公のツッコミがほぼ一辺倒なせいで多彩なボケが殺されているのだ。似たようなテンション似たような発語方法で突っ込まれてもすぐに飽きてしまう。「漫才コンビではボケよりツッコミのスキルの方が重要になってくる」というのと同根の問題なんだけど、これはたぶん音響監督が悪いので悲しいことにこの悲劇は違う作品でも繰り返されるかもしれない。つーか最近の音響監督は関西弁の指導とか適当すぎ。まるで仕事してない。

小手先の技に頼らずほぼノリとテンションで押し切るギャグアニメなのは清々しい。テクニカルなボケとかも見てみたかったんだけど、ハゲをそのままハゲとして一切調理せず提示してみせたりゲロとか下ネタとか小学生みたいに使いまくってることに低俗さは残ってるんだけど、そこらへんが高尾と船堀というツートップキャラクタで消し飛ばしてるのは素直に凄かった。高尾船堀はハヤテあたりの作品に出ててもおかしくないんだけど、骨格になってる話自体にどうしようもなく深い溝があって、この小学生でも考えられるような話の中に明らかに大人が頑張って考えた高尾船堀という、ラブコメだとメインヒロイン級のキャラクタをさり気なく放り込むことで奇妙な歪みが生まれている。

ゲーム制作部がメインなのによく分からん戦闘みたいなこと繰り返しててほとんどゲームやってないのは最近の部活ものにありがちなパターンなので今更何も言う気はなくて、それより高尾部長という史上最高クラスのヒロインがこんな恋愛要素をまともに生かさない作品で出てくることが悲しすぎる。EDクレジットも最後まで「高尾部長」で下の名前は一切明かされないしキャラクタをコンテンツの核として展開していく気が全く見えてこない雑さ加減が凄い。まあこういう人間関係とか無視した雑さ満載の作品だからこそ高尾部長が一人だけ異常なまでに存在感を放つのかもしれない。

船堀もネット上でネタ画像として扱われたり知名度はそこそこあるはずなのにアニメ本編では全体の4分の1くらいしか出てこない上にどれもそこまで重要な役回りではない。唯一、主人公のカバンを被った話ではメイン級の活躍を見せたがそれ以降はすっかり音沙汰無くなってしまった。そのくせEDのキャラクターソングにはちゃっかり参加してるあたりに「出てこないことが強み」という個性の発揮ぶりが見て取れる。

何度も言うが全体的にはとてつもなく雑なんだけど、見ているうちにまあこのくらいでもいいんじゃないでしょうか、みたいな妥協点を見つけられるので、視聴するのはそこまで苦ではなかった。途中から高尾部長のためだけに視聴してた感はあるけど、最終回の最後の最後まで高尾部長の女子力が遺憾無く発揮されていたので充分満足できた。ぜひ高尾部長メインのスピンオフを作ってください。



うーさーのその日暮らし 覚醒編

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ストーリー 3
キャラクター 5
演出 7
作画 5
音楽 6
総合得点 26点
総合評価 D

wooser.



中二病でも恋がしたい!戀

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ストーリー 3
キャラクター 8
演出 9
作画 9
音楽 8
総合得点 37点
総合評価 B

ISとは違ったタイプの2期失敗例。1期の時点で既に勇太と六花の物語にはある程度の決着は付いていたわけで、それならば1期であまりキャラクタとして個性を発揮できていなかった森夏、くみん先輩、凸守あたりをメインにして作った方がファンサービスとしては確実に成功していたと思う。確かに「付き合う」というのはある意味スタート地点で、そこから先にも物語は続いている。クリスティの『ゼロ時間へ』で推理小説に関して似たようなことが指摘されているが(推理小説は事件が起きてからのことを扱うが、実際には事件が起こる前に数多くの物語が存在している、事件はあくまでそうした物語の集約点にすぎない)、恋愛作品においては逆に男女が結ばれるまでの物語と結ばれたゴール地点が描かれるがその先は描かれない。むしろそちらの方が重要になる場合も多いのにそれが描かれないのは、単純にその先を描くのが非常に難しいからだ。

手を繋ぐことから先に進めない、という状況で1期を終わらせたのでそこから進めることは可能だったのは間違いないが、まさか付き合うという段階からキスするまでの段階へ至るまで12話使うとは思わなかった。どう考えても遅すぎる。それなら六花と勇太の関係が進展する内容をサブに据えて、森夏と凸守の関係が進展する話とくみん先輩が部長として活躍する話をメインにすればよかった。どちらともこの2期で扱われてはいるがメインとしては短過ぎた。特にくみん先輩には最低でも2話使うべきだった。原作にはいないオリジナルキャラなのに「どこでも昼寝出来る」という個性以外が弱い。

このアニメはラブコメという体裁をとっていながらほとんどキャラクタの力に頼っていて、それが話の核になった1期とは違い2期はキャラクタの個性に合わせて話を作っている感が前面に出ていたのも残念だった部分。七宮という新キャラを投入することで六花と勇太の関係を揺さぶろうとしたのはよかったんだが、六花と勇太の結び付きが強過ぎて揺さぶりにすらなっていなかったのは悲しい。結果的に七宮が負けるとわかっていても突撃するし負けがわかってからは二人の良き理解者となり、最終的には聖人のような立ち位置になる。せっかくの「六花よりも前から勇太のことを知っていて仲が良かった」というアドバンテージを全く生かせてないのは、勇太という男が鈍感ながら己の感情については1ミリもブレない鉄の人間だったからだ。周りにたくさんの女性がいてアピールされることもありながら、そのどれもに靡かないのは主人公として強すぎる。

そして『中二病でも恋がしたい』、1期が「中二病」に、2期が「恋がしたい」にそれぞれフォーカスしているのだが、2期では1期である程度ケリをつけた「中二病」の要素が見事に邪魔をしている。中二病は1期で六花が現実を受け入れないための防御策として使っていて、それがやがて自分の主人格と重なって常に中二病を発症しているという状態になったわけだが、2期はその中二病を発症せざるを得ない状況が解決された段階でスタートするので、今度は六花の中二病が「勇太に対して本心を隠す」という機能を持つことになる。しかしこの本心を隠すはずの中二病を同様に持った七宮というキャラが現れてしまったため、二人の中二病は「同じ機能を持つ者」として最初にぶつかり合い、最後には共鳴する。それならば「勇太を奪い合う」というシナリオで勇太を揺さぶったほうが話としては面白かった。それもせずに七宮は物分り良くすぐさま身を引くので残った中二病だけが虚しく空を彷徨う。

あと、1期最終回のラストでは夕陽に向かって六花と勇太二人が自転車で走っていたが、この2期最終回のラストでは夕陽に向かって走る六花と勇太を森夏・くみん先輩・凸守・七宮が追い掛けるという構図で、そう考えると2期は六花と勇太の関係性にフォーカスされた1期から抜け出し全体的な関係性を描こうとした、という話になりそうだが、結果的に森夏・くみん先輩・凸守・そして新キャラの七宮も掘り下げが不十分だったので全体を見通すには物足りなかった。



未確認で進行形

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 9
作画 9
音楽 9
総合得点 45点
総合評価 A

今期の大穴は何かと尋ねられた場合、ほとんどの人間が『未確認で進行形』だと答えるのではないだろうか。最初は『のんのんびより』に続く日常アニメ枠として期待していたが、次第に砂糖より甘いラブコメへと姿形を変えていき、気付いたら人獣がメインキャラでありながらニセコイよりもよっぽどラブコメとして完成度の高い作品にブラッシュアップされていて、まさしく最後までその成長過程が未確認のまま進んでいった不思議なアニメ。動画工房は不必要な部分まで動かすというアニメーション特有の弱点を抱えていたが、このアニメにおいては主人公兼メインヒロインの小紅の調理シーンにやたら力入れることで上手く視聴者の目線を逸らしていた。

小紅の許婚として現れる白夜は、序盤の段階でただの人間ではないだろうとわかる程度に伏線が張られていて、それが中盤で回収され、ただのラブコメから人間と獣のラブコメという形に変わっていく。ここで注目すべきは相手が獣であれやってることは人間同士の恋愛とほとんど変わらないという事実だ。人間と獣のラブコメというとやはりフルーツバスケット、最近だと神様はじめましたや同期のいなりあたりが浮かんでくるが、あれらとは違ってこちらは白夜やましろをほぼ完全に人として扱っており、なので物語が重くなっていくこともない。人間関係における微妙なシリアス展開はありつつも、生命に関わる話は最終回以外に存在しない。

最終回で急に学校や自宅周辺からフィールドを広げて白夜たちの実家付近へ移動したのは小紅と白夜の過去に決着をつけ、小紅が始めて勝手に決められていた許婚という関係性を認めるためだった。これまではあくまで日常系という分類の範疇を抑えたうえで進みそうで進まないラブコメを死守していた(学祭・体育祭・修学旅行などのイベントが全くない)が、話を動かすには場所も動かす必要があった。

ましろが菓子のおまけでひたすらネッシーを引きまくったりするあたりにギャグのセンスも感じられるし、アニメーションとして優れた作画や演出も随所に見られた。紅緒というどんな時でもブレないキャラクタがいたおかげで話の重心が傾くこともなく、主人公の小紅は回を重ねるごとに主人公よりもヒロインとしての視点を得てシナリオに少女漫画のような繊細さが加わった。漫画原作アニメとしては充分な成功例だろう。



お姉ちゃんが来た

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ストーリー 4
キャラクター 4
演出 5
作画 6
音楽 5
総合得点 24点
総合評価 E

甘やかしてくれる姉がほしい。



銀の匙 Silver Spoon 第2期

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ストーリー 7
キャラクター 7
演出 7
作画 8
音楽 7
総合得点 36点
総合評価 B

農業の方に重心を置いた結果、学生生活がメインだった1期よりも深く重い内容になったが不思議とシリアスな空気にはならない。これは雄大な舞台や生き生きとした動物や食料品などに関する多彩な授業、そして八軒自身がエゾノーの生徒たちに影響されて強くなったことが大きい。御影アキというヒロインでもありもう一人の主人公であるキャラクタの進む道が、八軒自身にも如実に影響して二人三脚で未来を切り拓こうとしている姿は実に少年漫画的である。1期の頃と比べ明らかに御影と八軒の距離は縮まって互いを意識しているにも関わらず、まず最初に考えるのは将来の選択という真面目ぶり。この作品はいい意味で遊びが少ない。あらゆる問題に対してほぼ真正面から挑んでいる。

命を扱うということの重要性に気付き多くのことを学んで成長した八軒が、2期では御影という他者と歩み寄り共に成長できたのは1期で得たものから余裕が生じたからだろう。現実の楽しさよりも厳しさが全体を包んでいた2期において、1期で重石になっていた動物や同級生たちが空気を良くするための支えとなっていたのが面白かった。能天気なやつもいればクソ真面目なやつもいるし、教員たちはある意味マスコット的な存在として君臨している。

借金により高校を辞めるやつが出てきたり、将来の進路を見据えて親と衝突したり、現実的な問題が大量に浮上してくることでぐっと奥行きが出てきて素直に面白くなった。農業というものは現状とても厳しい境遇に置かれていて、そこから目を逸らさず直接的に描いたのは原作者の生い立ちも関わっているだらうが、自分の生み出したキャラクタたちに愛着が湧いたからこそそうしたのだろう。現に駒場という男に降り注いだ問題は一人二人の力では到底解決出来ない問題だったが、それを必要以上に深刻に描かず、ただそのままを映し出すことで駒場の生真面目さが浮かび上がってきた。

八軒と学校生活にフォーカスした1期、そして様々な人の繋がりと現実の問題を直視した2期、雰囲気はかなり違うものの作品自体に確固とした原作者の意思が宿っているのでアニメも最初から最後までブレることがなかった。とにかく力強い。そうした芯の強さがはっきりと伝わったという点でおれは2期のほうが好きだった。原作完結と同時に3期とかやれたら理想的ですよね。



GO!GO!575

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ストーリー 3
キャラクター 3
演出 3
作画 7
音楽 6
総合得点 22点
総合評価 E

ゲーム終了お疲れ様でした。



魔法戦争

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ストーリー 1
キャラクター 1
演出 2
作画 2
音楽 8
総合得点 14点
総合評価 Z

愛すべき究極のクソアニメ。それしか言えねえ。



鬼灯の冷徹

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ストーリー 2
キャラクター 5
演出 7
作画 6
音楽 5
総合得点 25点
総合評価 E

1話見た時点でこれは最悪だと断言したのだけど何だかんだで最後まで見てしまった。しかし惹かれるものは無かった。ほとんどBGVとして機能していた気がする。



Z/X IGNITION

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ストーリー 6
キャラクター 3
演出 6
作画 7
音楽 7
総合得点 29点
総合評価 D

決して悪くはなかったのだけど、もう少し構成を整理して本当に見せたいものに焦点を当ててくれればより良いものになったはず。うつのみや理が参加した回は作画凄い良くなるのかなと期待したけどそこまでレベル高くなかったし、主人公の関西弁は尋常じゃないくらい下手で気持ち悪い。プラス要素よりマイナス要素のほうが目立ってしまったのは残念でならない。

Z/Xと人間がタッグを組んで闘うというのが主題の作品なので戦闘メインになるのは当然だが、単純な戦闘にせずZ/Xのパートナーとなる人間の心情に踏み込んで過去と決着をつけるというのは物語の作り方としては良かった。しかしなにぶん日本全体を舞台にしていたために最終回になっても解決すべき問題がいくつか残ってしまった。まあ全てを終わらせてしまうと原作カードゲームの販促にならないだろうから、次に繋がるように幕を引くのはコンテンツとして正しい。

結果的に何がしたいのかよく分からなかったし、そもそもこれ主人公は天王寺飛鳥ではなく上柚木綾瀬であったはず。フィエリテという存在が天王寺飛鳥を主人公たらしめていて、なのでヒロインという存在も綾瀬なのかフィエリテなのか御影藍那なのか判然としない。フィエリテはやはりパートナーの域を出ない立ち位置なのに、第三者の視点ではそう見えない、というところから齟齬が発生する。

最後に今まで神戸に集まっていた人々が次々と去っていくシナリオは良かった。ずっと住んでいた藍那が神戸を離れていくシーンからは寂寥感が伝わってくる。このように良い部分も探せば結構出てくるので結果平均的なところに収まってしまったというところ。



Trick

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ストーリー 3
キャラクター 4
演出 5
作画 5
音楽 6
総合得点 23点
総合評価 E

百合信仰者でも何でもなかった人間がこれを見たせいで今後目にするあらゆる百合作品に対して「もっとやれ!桜Trickならあんなことまでやってたぞ!!」と言い出す未来が訪れそうで暗澹たる気持ちです。ある意味でヨスガノソラの再来というか、「ああここまでなら(地上波で)やってもいいんだ」という線引きを新たに広げてしまった作品で、それは果たして業界にとって幸せなことなのだろうかという疑問が拭い去れない。毎回1度は必ずキスするというアホみたいなノルマがあって、それをおれたちはどんな顔して見ればいいんだという苛立ちやストレスなどその他諸々の蓄積。我々は桜Trickを見ることで確実に精神を磨耗させている。

百合というジャンルにおける定義付けをおれが勝手にしてしまうと多方面から反感を買う恐れがあるので自重するが、普通の百合愛好家が思う百合と桜Trickの百合とでは、今期作品でいうと『いなり、こんこん、恋いろは』と『芋ちょ』くらいの隔たりがある。百合というのは女性同士の関係性ではなく女性同士の特定の関係性を描いた作品のことを指す言葉なので、厳密に言えばこの桜Trickという作品は百合に当てはまらない。百合というジャンルにおいて女性同士が何の躊躇もなくいつでもどこでもキスするというのは異端どころか異教の世界といっていい。

で、アニメの内容そのものはとにかく女子高生同士がひたすらいちゃつくだけなので、これに耐えきれない人間にとっては地獄だと思う。特に抵抗感ない人間でも毎回キスとかやってるせいで体調悪くなるし。アニメーションとしてはOPのダンスが見てるだけでリアルに吐き気催すので毎度早送りしてました。「ぬるぬる動かす=作画すごい」は成り立たない等式なのだということを教えてくれるという点では有益だった。気がする。たぶん。

しかしこうした作品で卒業式までしっかり描くのは以外だった。卒業式したのはメインキャラの姉だけど。「別れ」というものを明確に描いても喪失感が前面に出てこないのはやはり作品としてそれなりに強度が高いということだろうが、この作品の強度が高いのは「とにかくメインキャラ二人にひたすらキスさせる」という信念を貫いているからだろう。どんなものであれ何かの信念を貫いている作品はとにかく強い。

ちなみにこのアニメで一番評価してるのは劇伴です。OPとEDにはそんなに惹かれなかったんだけど何故か劇伴が異常にレベル高い。サントラ盤発売されたら間違いなく買いに走ります。



pupa

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ストーリー 1
キャラクター 2
演出 1
作画 2
音楽 5
総合得点 11点
総合評価 Z

こんなクオリティでアニメ化されても誰も幸せにはならない。



のうりん

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ストーリー 7
キャラクター 9
演出 9
作画 8
音楽 6
総合得点 39点
総合評価 B

幸か不幸か今クールには農業を主題にした作品が二つも放送されることとなった。言うまでもなく『銀の匙』とこの『のうりん』だが、前者はとにかく真面目に学校生活や農業や将来の選択と向き合っていたのに対し、こちらのアニメは基本的にやりたい放題やっておきながら決める時には真面目に決めるという一番おいしいところをもっていくパターン。好き勝手パロディを組み込んだりぶっ飛んだギャグで場を掻っ攫ったり、真面目さとは対極にあるように見せかけて農業の厳しさを真摯に訴えかけるという。これがギャップ萌えというやつなのか。

とにかくベッキーというキャラがのうりんという作品の本質を覆う隠れ蓑だったので、中盤になるまでのうりんはただの下らないギャグアニメだと思ってしまっていた。パロディも元ネタを知ってるものと知らないものがはっきり分かれたのでそれなりに冷めた目で見てたんだけど(個人的にパロディはあんまり好きじゃない)、それすら全部踏み台にして農業の核を描くという離れ業をやってのけた。大沼心はバカテスの監督やって本当によかったなーと思います。バカテスやってなかったらこのアニメは出来ていなかった。

ガサツだと思ってたやつがいきなり繊細さ見せるみたいな、そういうのおれからしたら結構好きなんだけど、のうりんはガサツの域を超えて初っ端から低俗極まりなかったせいでハマるというところまでいかなかったな、という残念さがある。しかし耕作の生い立ちが初めて明らかになった時も、ラストの嘘結婚式がバレてしまった時も、とても重苦しい状況のはずなのに全然シリアスに見えないのは作品の根幹が一切揺らいでない証明でもある。

一応ラブコメというフォーマットでありながら、農業という広い枠を利用して好き勝手やった結果、闇鍋も裸足で逃げ出すほどのカオスな作品に仕上がった。ヒロインひとりを選ぶような状況になった時、耕作が「どっちも好きでいいじゃん」と完全に開き直ったけど、そこには気持ち悪さも嫌味も全く無くひたすらに馬鹿さが伝わってきたので、畑耕作という男は本当に素晴らしい主人公だったのだと再確認できる。何だかんだで今期の中でも上位に位置するくらい面白かったような気がしたりしなかったり。



Wake Up, Girls!

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ストーリー 6
キャラクター 8
演出 6
作画 3
音楽 9
総合得点 32点
総合評価 C

過去エントリを参照



世界征服~謀略のズヴィズダー~

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ストーリー 3
キャラクター 7
演出 6
作画 7
音楽 9
総合得点 32点
総合評価 C

どう考えても尺が足りないし岡村天斎は昔から何ひとつ変わっちゃいなかった。そもそも最後まで主題が分からないので常に何をしたいのかはっきりしないし、軸もブレまくっていた。その時々でやりたいことをやりたいようにやった、みたいな奔放な構成は成立させること自体とても難しいし、現にそれは上手くいかなかった。

この「世界征服」のよく分からなさはサムライフラメンコにおけるヒーローの在り方にとても良く似ている。最初は小さなところから始まって、気付いたら手の届かないところ・想像の埒外にまで肥大化しているという手のつけられなさ。スケールの伸縮を自在にした結果、本来やるべきことを見失ってしまった。情報量の多さや独特な世界観を生かせず、世界征服と謳いながら11話では幼女と東京都知事がタイマンで決着つけようとしててえらくコンパクトに纏まってしまったなー、と思ってたら最終回がそれまでのどの話よりも雑で泣いた。今までの積み重ねが生かされない最終回ほど泣けるものはない。

語ることに困るくらい「何がしたいのかわからない」というアニメだったので勿論消化不良だし、キャラの関係性も曖昧で掘り下げの足りなさを否が応にも感じさせる。幼女のおままごとがいつの間にかリアリティを得てしまった、という簡単な話でもない。設定も知らないうちに物凄く重たいものに様変わりしているのに、雰囲気はそれまでとさほど変わらないという妙な感覚。キャラデザや作画が影響しているのかは定かではないが、このアニメは何をしても本気に見えないというか、どこか子供の遊びの延長みたいな空気が常に漂っていた。

ただバンドアパート坂本真綾がタッグを組んだOPは良かったし新居秋乃の雰囲気を感じさせるEDも良かった。このアニメで一番良かったのはもしかしたら音楽だったのかもしれない。



てさぐれ!部活もの あんこーる

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ストーリー 5
キャラクター 8
演出 8
作画 5
音楽 8
総合得点 34点
総合評価 C

2期開始時点ですでに手探り感ゼロなのが面白かった。もうどこをどう切り取ってもいつもの石館光太郎の作風で、gdgd妖精s直球表題ロボットアニメのスタイルがそのまんま取り入れられている。なのでこれら2作に抵抗なければこのてさぐれもすんなり受け入れられるはず。違うのはキャラクタ・設定・キャストだけでやってることは同じ。しかし個人的にはgdgd妖精sインパクトが強過ぎてロボットアニメもてさぐれもそこに辿り着いてないかな、というところ。ロボットアニメもてさぐれも役割分担が不透明で普通の声優ラジオの範疇にとどまっていたのが勿体無い。

キャストが小慣れてきたこともあってか1期よりは安定していた。しかし我々が欲していたのは安定よりも突き抜けた爆発で、それは最後まで見ることができなかった。西明日香がなぜかほぼ毎回下ネタぶっこんでくるのは面白かったがそれに対して的確なツッコミがなされなかったのが悲しい。石館光太郎の監督作品に共通しているのは腕の立つツッコミがいないのでボケが放流されまくって飽和しているというところ。まあ役者にツッコミを求めるのもおかしい話だが。

とりあえず石館光太郎は今年の夏頃にまた似たようなアニメやるらしいのでそこで今までの様々な問題点が解決されていれば良いんじゃないかな、という感じです。



ウィザード・バリスターズ~弁魔士セシル

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ストーリー 4
キャラクター 6
演出 9
作画 9
音楽 8
総合得点 36点
総合評価 B

作画はほぼ文句なしだった。「ほぼ」というのは11話において究極の紙芝居を見せられたからで、あれさえなければ作画は満点あげていた。紙芝居やるならやるで、もうちょっと不自然さが目立たないようにシャフトみたく誤魔化せばよかった。キャラクタの顔や頭身がおかしい時は結構あったけど、戦闘における作画からキャラクタの何気ない動作まで、「動き」に関しては目を見張るものがあった。

とにかくガリレイドンナよりも梅津のやりたいことが前面に出てきているので、元々話自体にはさほど期待せず作画にのみ集中して見ていた。予想通り話はボロボロだが作画は一級品という歪な作品になっていき、改めて梅津はシナリオライターではなくアニメーターだということを再確認できた。梅津監督作品に腕の立つ脚本家を起用したらかなり良いもの出来る気がするんだけど。

最終回で裁判やるというのはガリレイドンナと全く同じ筋運びで驚いた。つまりガリレイドンナは完全にこのアニメのためのウォーミングアップだった、ということになる。なぜ梅津がそこまで裁判に拘ってるのかわからないんだけど、このアニメでまともに法律が機能しているのを見たことがないので完全に形骸化してるし、そもそもこれ主人公が弁魔士(弁護士)である必要もない。結局梅津のやりたかったことは何だったのかなーと疑問が残る。

しかし何度も言うように作画だけは本当に素晴らしく、1話のバトルシーンは久々に「ああおれはアニメーションを見ているんだ」という感動に包まれたのであの路線でひたすらバトルやるファンタジーにしておけば傷が減ったような。変に弁魔士とかいう現実性を取り入れたせいで魔法とかの要素と釣り合いがとれず、結局弁魔士の仕事は副次的要素に成り下がってしまった。改良の余地が多く見えただけにもったいなかった。



いなり、こんこん、恋いろは。

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ストーリー 9
キャラクター 10
演出 9
作画 9
音楽 9
総合得点 46点
総合評価 S

全10話という話数の少なさ、それにより原作の様々な部分が削られたということを除けば特に文句無い仕上がりだった。とにかくメインアニメーターの沈宏が本当に素晴らしい仕事をしてくれた。作画監督になるとがっつり修正入れるけど各人の個性を殺さず一度も作画の乱れを表出させないという離れ業をやり遂げた。総作画監督は高品有佳(キャラデザ)なんだが、作画監督として沈宏が関わった回の作画は目を見張るものがある。いなりの特徴である優れたコマ割りもそのまま生かされていて、漫画原作のアニメ化としては最良の成功例のひとつだろう。

この作品は主人公のいなりよりも、うか様という神をどう描くかという部分で作品全体の出来が決まると原作読んだ段階で予想は付いてたんだけど、期待してた以上にうか様というキャラクタが魅力的に描かれていて毎回見終わるたびに桑島法子に感謝を捧げることになった。声・動作・キャラデザが見事に原作のイメージに合致しており早くも2014年最高峰のキャラクタに名乗りを上げた。いなりも想像してた通りの声や動作で違和感もなく、方言指導も徹底されていたようで関西弁を聞き慣れている人間でも不快感はなかった(コッペリオンとかZ/Xとか咲でクソみたいな関西弁に対して不満溜まりまくってたので)。

最終回はコンテがかなりウテナを意識していて驚いた。うか様といなりの関係性・天の岩戸の構図からウテナの扉にイメージを繋げたのは凄かった。もちろん原作ではウテナのウの字も意識させないのでアニメ監督の高橋亨が非常に優秀だということを意味している。原作のコマ割りの素晴らしさを損なわず、且つウテナの構図を組み込むことで抽象的だった筋書きが具体性を帯びる。最後までアニメーションとしての面白さを追求していたのも評価できる。

アニメはうか様と橙火よりもいなりと丹波橋のカップルをメインで描いていて、それは少し勿体無い気がした。キャラ付けはいなりよりうか様の方がよくできていたので(人気も圧倒的にうか様のほうが高い)、うか様と橙火をメインにしていなりと丹波橋、そしていなりの神通力を描いてみせたほうがよかった。

途中から尺の都合上オリジナルのシナリオが組み込まれてきてどうなることかと不安だったんだが、最終回中盤で原作の内容に戻してきたので2期の可能性は存在している(ただ原作ストックがほとんど残ってない)。とりあえず続編かOVA作るならキャラデザそのままで総作画監督を沈宏にすればもっと凄いものが見れると思います。控えめに言っても産業廃棄物ばかりだった2014年冬アニメの中で唯一の救いだったアニメ。



マケン姫っ!

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ストーリー 4
キャラクター 6
演出 7
作画 8
音楽 7
総合得点 32点
総合評価 C

戦闘を減らし日常・ギャグパートを増やすことで1期の時とは完全に路線を変えてきた。全10話という尺の減少がそうさせたのかもしれないが、個人的にはこちらの方がマケン姫という作品の良い意味でのくだらなさが前面に押し出されていて好感が持てた。本当に何もかもがくだらないんだけど、おれたちが心からくだらないなーと思える作品自体すっかり地上波から姿を消したのでこういうタイプの作品は貴重だろう。原作通りなのかは知らないけど、これがオリジナルならそれはそれで凄いことだと思う。この2期を見終わったあとでは完全に1期の記憶が吹き飛んでしまうというのも底力の強さを示している。

1話完結という潔いコンパクトな構成を選んだのも正解だった。最近積極的に戦闘と紳士アニメの要素を融合させて成功した作品といえばハイスクールD×Dが真っ先に思い浮かぶが、このマケン姫っ! 通 を仮に1期の路線の延長で作り続けた場合、DD等と比べ見劣りしてしまうことは分かり切っていたことなので(マケン姫1期はそんなに面白くなかった)、それならばと全く別のベクトルへ方向転換したのは続編の作り方としてはイレギュラーだがコンテンツ的には命を繋ぐ良い判断だった。見ていてテイストはちょっと違うけど魔乳秘剣帖を思い出した。

1話1話見た時にはかなりのインパクトがあるのに1日経つと内容ほとんど忘れてしまうのは良いことなのか否か微妙なんだけど、情報化社会においてここまで情報が無いのはロックだ。そういえば2期ED曲は1期ED曲のポップミュージックの殻を破って完全なロックミュージックになっていた。馬鹿みたいなシナリオも奇形に近いキャラデザも全て許せてしまう器の大きさは人々から「本質的なアニメ」と呼ばれることをも納得させる力がある。

最終回が一番どうでもいいというか、一番2期のレールから外れたタイプのシナリオで「なんで最後にこんな話やるんだよ...」という不満は積もったが全体的には1期よりも構成が良かったおかげで飽きずに見られた。話自体はほぼ全てスッカスカなので物語性を楽しむというのは不可能だけど、人間の欲望をオブラートに包まず直接的に表現してるので、社会生活に疲れた時とかに見るのがおすすめ。



凪のあすから

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ストーリー 5
キャラクター 7
演出 8
作画 7
音楽 8
総合得点 35点
総合評価 B

万物は海から生まれている、という説が根強く残っていることからもわかるように(事実、全ての生物は海から生まれてきた)、海はあらゆるものを生み出す母体のような存在であるし、時には己が生み出した生命を飲み込んでいく自然災害の塊と化す。人類が滅ぶ時でさえ海の全てを知ることは出来ないだろうし、人類が海を統制下に置くことも出来ない。人間の体内には多量の水が存在している事実は水の根源と人間の存在を切り離せない証左で、禊という行為は入浴という自浄習慣に姿を変えつつも長らく存在し続ける。水の行き着く先である海は地球上の生命の源といってもいい。何れにせよ、海は人間の生命に最も近い自然で、だからこそ海をテーマに据えた作品は神話的なものから世俗的なものまで、人間の全てを包括するほど幅広い。

さて、この凪のあすからという作品は地上で生活している人間と海中で生活している人間、二つの種の存在を描いている。ならばこのアニメのテーマとは海と地上の人間の交流であろう、と考えるのが普通だが、このアニメで扱われるのはほとんど海の人間だ。正確に言えば、作品の根幹に関わるのは海の人間だ。地上の人間は後半に進むにつれて蚊帳の外になる。確かに主役4人が全員海の人間であることを考えればこの展開は予想できるが、それなら地上の人間の視点はもう少し慎重に扱うべきだった。ただ「変な人間→友達・恋人」という過程をなぞるだけでは、都会の人間・田舎の人間というありがちな対比でも成立していた。海と地上という大それた二項対立を用意したのに、劇中で繰り広げられていることは世俗的な事柄に終始している。

これはもちろん脚本の岡田麿里の影響が強い。しかしこのアニメにおいて最も重要かつ斬新な設定「冬眠」によって2クール目開始時に劇的な変化を遂げる。この冬眠という設定により、同世代の人間たちの年齢を強制的にバラバラにして、そこから年齢の違いにより生まれる葛藤や人間関係の破綻などを繊細に描く。この設定に関しては本当に文句無しに素晴らしく、これが出た時点でこのアニメは勝利した...はずたったのだが、なぜか回を重ねるにつれて冬眠によりばらされた年齢や人間関係ではなく、お女子様や海の儀式といった神話的な部分にフォーカスされていき、結果的に冬眠という設定が効力を失ってきた。

そして最終回まで解決不能なことが明らかな海神様やお女子様のことを扱っていた。これは監督である篠原が誘導したのだと思われるが(RDGでも氏は神話的な要素に強く惹かれていた)、この路線はやはり間違いだった。海の中の神話的要素を片付けようとしたため、肝心の人間関係の問題解決が非常に雑なものとなった。前述した通り、この作品は海の人間と地上の人間の二種を描いていて、この時点で丁寧に描かれるべきは「人間」のほうだということに気付く必要があった。海の人間はなぜ海の中で生活しているのかという部分に迫っていっても最終的な答えはフィクションという壁にしか行き着かない。ならば海で生活しているということを常態として最後まで冬眠と人間関係をメインに扱うべきだった。

2クール目開始時は「1クール目の話が全て長大な前フリだった」ということに気付かされたこともあって物凄く感動していたのだが、最終回に近づくにつれて心が再び離れていった。篠原氏が最後まで岡田麿里に脚本と構成の全権を握らせていたら、また違った結果に終わっていたのかもしれない。



キルラキル KILL la KILL

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ストーリー 4
キャラクター 6
演出 7
作画 7
音楽 7
総合得点 31点
総合評価 C

物凄い熱量で盛り上がってることは分かるんだけど、熱量が上がれば上がるほど個人的には客観的に冷めた目で見てしまうというか、この熱さは根本的に寒さと表裏一体で、おれはその寒さのほうを敏感に嗅ぎ取ってしまったということなのだろう。つまりおれはこのアニメにのめり込むことはできなかった。グレンラガンの時と一緒だ。内容も周りも凄く盛り上がってるのに自分だけは全く付いていけないあの心地悪さ。このアニメにはそうした心地悪さをずっと感じていた。いい歳したおっさんたちが中心になって若かりし頃の輝きを取り戻そうとするかのような、あるいはおれたちはまだやれるぞという証を残そうとしているかのような、そうした裏側が見えた時からおれはまともに向き合うことが出来なくなった。

作画にしても前期は勇しぶに、今期はスペースダンディに遅れをとっていたのであまり印象に残る部分はなかった。いかにも昭和漫画チックなキャラデザや背景美術は慣れれば問題なかったんだけどシナリオのテンションはそうもいかない。もう先天的アレルギーみたいなものなんだけど、それでも序盤の数話やマコが喧嘩部の部長として流子と戦う回などは白熱した空気がこちら側にもダイレクトに伝わってきて「あれ、これはいけるか...?」という期待も持ち上がってきたのだけど、2クール目から本格的にああこれは自分の苦手なやつだと悟ってクールダウンした。最終回における演出の過剰さにははっきり言って気持ち悪さを覚えた。

皐月以外ほぼ全員落ち着きのない人間というのはある種の賭けだったのだろう。事実このテンションの高さを「終始熱い」と捉えて好きだと公言する視聴者が増えた。しかしその傾向が強まれば強まるほど、おれ自身は疎外感を感じずにはいられなかった。「ジェットコースターのような展開」と称される怒涛の展開は確かに上がり下がりが激しいものの、予測不能というレベルではなかったので、1クール目の時点で「流子と皐月が共闘して悪の元凶であるラ行を倒す」という筋書きは見えていた。まあほぼ全てのキャラが最終的に共闘する最終回近辺の展開には盛り上がりを感じられたが。あと針目縫が最後まで生き残るどころかキーパーソンとしてラ行と合体するのはさすがに読めなかった。

しかし満艦飾マコというキャラクタはとても素晴らしかった。常にムードメーカーとしての役割を果たすだけでなく、時には道を踏み外した流子の前に立ちはだかりその道を正すこともやってみせた。サブキャラなのにもはやメインキャラを食う勢いで縦横無尽に活躍し、最終的には重要な戦力として戦場で戦っている。流子の成長よりもマコの成長を見ているほうが面白かった。過剰演出もマコの場合には全く苦にはならなかった。マコ主役のスピンオフとか作ってくれれば見ます。



ゴールデンタイム

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ストーリー 1
キャラクター 1
演出 3
作画 4
音楽 6
総合得点 15点
総合評価 Z

どこがゴールデンなんだよ見渡す限り闇じゃねえかと突っ込まずにはいられないおぞましい作品。竹宮ゆゆこは元から癖の強い作家だったのでとらドラが大衆に受け入れられたこと自体奇跡みたいなものだったんだが、このゴールデンタイムは作者の闇が前面に押し出されており、しかもアニメ側はその闇だけを肥大化させたのでまさに地獄のような映像作品に仕上がってしまった。主人公の多田万里という人間の心情描写をほとんど削ぎ落としてしまったことでただの狂人あるいは精神異常者として描かれている。これを恐ろしいと言わずして何と言う。

もっと他にいくらでもやりようがあったのでは、と思うんだけど如何せん原作を読んでいないので何とも言えない。アニメのほうは後半になると何かあるたびに多田万里が「うわあああここはどこだあああリンダああああ」と叫ぶシュールギャグと化していたのでこちらも苦笑いしながら見ていたのだが、原作はしっかり「なぜ多田万里が突然人格おかしくなってしまうのか」というところを描写しているのだろうか。それがあるだけで物語の見え方はだいぶ変わってくると思うのだけど。

記憶喪失ではなく記憶混濁というところに扱いの難しさがあって、記憶が現在と過去の間を彷徨っているという状況のせいで都合のいい時に過去の人格になるみたいな意味不明な展開を作ってしまう。いっそ記憶喪失して現在の記憶を全て消し去り、一度だけ現在の記憶を取り戻したがそのあと結局現在の記憶を無くす、という筋書きのほうがブレなくて異常性も減ったと思う。このアニメは最初から最後までどこか猟奇的な異常性があった。多田万里たちが新興宗教の集団に連れ去られた最初の時点で既に一抹の恐ろしさを湛えていたが、回を重ねるごとにそれが肥大化していき形容し難い不安が募っていった。

最終回はどう纏めてくるのかなという不安(ある種の期待かもしれないが)を抱えて見ていたが、結果的に異常性そのまんまで「人間なんてみんなおかしいじゃん?」みたいな感じで終わったので死にたくなった。最終回にしていきなり自分自身と対話し始めたあたりは本当に恐ろしかった。結局リンダも香子も異常だった。精神異常者たちの見ている世界を垣間見れたことは経験になるのかもしれないが、願わくば二度と同じような体験はしたくない。



ストライク・ザ・ブラッド

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ストーリー 7
キャラクター 9
演出 7
作画 5
音楽 7
総合得点 35点
総合評価 B

設定とか一切理解しなくても問題なく楽しめるという親切設計のアニメ。多忙な中で見るぶんにはこのくらい中二病とラブコメとバトルアクションが分離してるほうが良い感じがする。上述の要素全てが混ぜ合わさってる作品は数多いが、このアニメのように全てがほぼ分離しているというのは珍しい。中二病の設定や面倒臭い用語は全部捨て置いても、残りのバトルやラブコメが残ってるのでそれだけ取り出して見ればいいという。ストレスがほとんどないという点ではまさに原作者の術中に嵌ってしまったのだなと納得した。禁書とはまた違ったタイプの面白味がある。

別に2クールやる必要は無いんじゃないのとも思うんだけど、2クールやったことで不必要なものが削ぎ落とされ必要最低限の要素が研ぎ澄まされたので、結果的に最終回見終わってしっかり完全燃焼できた。1クール目の前振りがあったからこそ2クール目で多少強引なこともできてて、特に錬金術師の話なんかはかなり強引なんだけど今までの積み重ねがあったから許せた。主人公の暁古城は過去のラノベ主人公のテンプレートをかき集めたようなキャラクタだし、同様に姫城雪菜もまたラノベヒロインのテンプレートをかき集めたようなキャラクタだ。だからこそ何やっても「まあこういうやつらだし...」と納得できる。

「吸血」という要素が唯一バトルとラブコメ中二病を繋ぐ架け橋になっていて、これがあることで上手く全体の構成が纏まっている。なぜか古城がところどころ吸血せずに単身敵の懐に乗り込むみたいな話もあるけど(最終回前半でもやってた)、最後に戻る場所は吸血、という回帰が約束されているので安心して見られる。極論を言えば吸血に関わらないキャラクタのことは理解してなくても問題ない。公爵とか最後までよくわからんやつだったけど視聴に何の影響も及ぼさなかった。それだけ主人公とそれを取り巻く女性キャラの個性が強いという話なんだけど、なぜか肝心の正妻枠雪菜は3日経ったら忘れそうなくらい薄めのキャラなんだよな。

今期は本当に見てるだけで頭を抱えてしまうアニメが多かったので、こういう肩肘張って見なくていいアニメというのはそれだけで結構価値があった。毎回ハーレム来そうな展開の連続なのに最終的に雪菜の元に収まるというのは一見硬派にも思えるが、実際は遊びというか余白が多いので浅葱ルートも紗矢華ルートもいけるという。新鮮なものはひとつも無かったが安心安定のテンプレートを見たいならこれは鉄板だろう。



ログ・ホライズン

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ストーリー 7
キャラクター 7
演出 7
作画 8
音楽 6
総合得点 35点
総合評価 B

とても計算されているはずのシナリオなのにその「計算高さ」といった臭みがほとんど無いのは、主人公シロエの周囲の人物たちが無垢といっていいレベルの善人たちばかりという点が大きく影響しているものと思われる。このアニメに出てくる主人公の味方は皆悪意など一欠片も持たないような人物ばかりで、普通ならそういう作り物のような世界はむしろ脳が拒否するんだが、シロエの他にもう一人、クラスティというブレーンを配意することでシロエに集中するはずのヘイトが分散され、世界観に対しての疑いも減っていく。

オンラインゲームの世界やシロエというキャラクタは否が応でもSAOとキリトを想起させるが、決定的に違うのは「オンラインゲームの世界から抜け出すことを模索するか、オンラインゲームの世界で生きていく術を身につけるか」という部分で、つまりオンラインゲームという世界に対して「囚われた」という負の感情を抱き続けそれが原動力となっていたSAOに対し、ログ・ホライズンはどこまでも世界に肯定的であり、加えて元の世界に戻るための明確な手段が作中で今のところほとんど明かされていないので(最終回でその手段の片鱗が見えてきた)、現段階ではやるべきことが「オンラインゲームの世界の中でいかに生きていくか」という部分に集約されていく。

そもそもこの世界で生活している人間たちは「元の世界に帰りたい」と願っているのかという疑問もある。最初こそ動揺と混乱が広がっていたが、すぐにそれらは終息し、子供から大人までオンラインゲームの世界に適応していく。そこにあるのは現実感ではなくファンタジーとしての創作感だ。だから人々の命を脅かす最悪のモンスターも現れない。だがそれだけでは物語が単調になってしまうので、ゴブリンの群れが現れたりルンデルハウスが死にかけたりといった危機感を煽るエピソードも存在した。最終回でシロエが「今はここ(オンラインゲームの中)が僕たちの世界で現実、僕たちはここから世界を変えていく」と宣言したことで彼らにとっての現実はゲーム内で確定しそれが肯定された。

ラストで2期があることが発表されたのはまあ予定調和だったが、2期で元の世界に戻れるのかは怪しいところ。前述のようにシロエはゲームの世界を自分たちの現実世界だと位置付けてしまったので、それを覆すとなると相応の代償を払うことになるだろうし、何より日本全土がゲームの世界になっているので解決すべき問題が多過ぎる気が。とりあえずアカツキとミノリの問題は掘り下げてほしい。



マギ 第2期

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ストーリー 3
キャラクター 4
演出 7
作画 7
音楽 6
総合得点 27点
総合評価 D

全くもって2期をやる必要性を感じられなかった。恐らく元々2期前提で1期が制作された+下手に1期のBD/DVDが売れてしまった ことにより2期への勢いがついてしまったのだろうが、1期の時点で意味不明なオリジナル要素に辟易してたところで2期の原作軌道修正があっても、そこまで入り込むことができなかった。まあ1期に比べれば盛り上がりどころも多くてどちらかといえばこの2期のほうが体感的には面白かったのだけど、それでもやっぱり冷やご飯なわけです。個人的な好みの問題かもしれないんだが、最後まで好きになれなかった。最近のサンデー連載漫画はなんでこう微妙なものばかりなんだろうな。12年前くらいのサンデーは本当に連載されている漫画が何もかも面白くて毎週買うのを楽しみにしてたというのに。

マギという作品から話は少し逸れるんだけど、昔のサンデーは良かったなーみたいな話を振ると必ずと言っていいほど「老害老害!」と指摘されて悲しくなる。実際本当にゼロ年代前半のサンデー連載漫画は多種多様でどれも面白かったんですよ。あの頃サンデーで連載されてた漫画はほぼ全て単行本で所持してるし。王道バトルものはガッシュ、うえき、メルヘヴンが最強だったし、ラブコメもギャグも日常系も、とにかくあらゆるジャンルの作品が網羅されてて、だからおれは少年ジャンプを今に至るまで一度も読んでいない。

で、マギというのは確かゼロ年代最後、2009年あたりにサンデーで連載が始まったんだが、この頃は主要な漫画はほとんど連載を終えていて、サンデーというブランドの凋落が目に見えてわかる時期だった。そしておれがサンデー購読を止めた時期でもある。なのでおれがマギの「原作」を読んでいたのはごくごく前半、単行本換算で約5巻くらいまでだ。これは1期の中盤くらいに相当する。つまり2期は最初から最後まで完全に自分の知らない領域の話であり、これに対しておれが「(原作と比べて)おかしい」と発言することはない。整合性という点においても原作がどのように発展していったのかもう知らないので、2期のような人権や階級闘争といった社会的な要素を盛り込んでいることに対してマギらしくないと批判することもしない。

おれはマギがこの方向に舵をきったことに関して得策だとは思わないが、かといって初期の乱雑な頃に比べれば目指すべき部分が明確に見えているので必ずしも悪くはないような気もする。しかしこの漫画はどのように終わりを迎えるのか全く予想できない。世界の格差全部無くして平等な世界作るとか無理なので、そうなると権力者たちが協定を結んで云々というありがちなパターンで終わるみたいな感じかな。何か嫌ですね。



ガンダムビルドファイターズ

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 10
作画 9
音楽 8
総合得点 45点
総合評価 A

恐らく有識者に言ったらタコ殴りにされそうなんだけど、生まれてこのかたガンダムはおろかロボットにほとんど興味もなく当然ガンダムについての知識などごく初歩的な事柄しか有しておらず、以前見たAGEで「ああガンダムに触れる必要はなさそうだ」と思ってから早2年、おれが何故このガンダムビルドファイターズにハマってしまったかというと単純に「ガンダムを全く知らなくても楽しめる」という親切設計だからだ。

ビルドファイターズは普通のガンダムシリーズとは違っていて、ガンダムのプラモデルを扱う作品なので現実に戦争が起きたり死人が出たりするということはもちろんない。子供から大人まで様々な人達がガンプラを組み立てて戦うというただそれだけのことなんだが、見せ方が非常に上手くて、レイジのミステリアスなキャラ設定から大会の盛り上げ方、細部に至るまでとにかく丁寧に作られている。シナリオも至って単純な友情・努力・勝利の黄金ジャンプ要素に恋愛やコメディを詰め込んで物語を多層に膨らませるというシンプルなもの。シンプルなシナリオに芸術的と言えるほど凝った作画や演出で味付けすると万人に受け入れられる作品になる、という成功例だろう。

とりわけ印象深い回は第21話・24話。主人公のセイとメインヒロインのチナが思いのほか序盤でくっ付いたことに違和感を持っていた視聴者も多かったと思うが、それもそのはず、このアニメの本当の主人公とヒロインはレイジとアイラで、ストーリーが3分の1を過ぎた頃から少しずつ積み重ねられてきた二人のやり取りが結実するのが21話「きらめく粒子の中で」。システムと権力で抑え付けられ非人道的な実験により思考さえも操られたアイラが、生まれつき持っていた粒子を見る力を生かすことで(セイとチナの働きにより)レイジと邂逅し心を通わせるシーンはレイアウトの美しさ含めてアニメーションの素晴らしさを確認できる。

ドラマ性が高いという点ではこのアニメにおけるガンプラバトルはいずれも熱く、頭脳戦による駆け引きや肉弾戦による直接対決まで様々な展開を様々な角度から見せてくれる。最後には共通の目的が生まれ皆が一致団結するという眩しいくらいの王道。ピンチになると師匠クラスの最強の味方も現れて大混戦。子供とか大人とか関係なく盛り上がれるこのクオリティがAGEで実現できていれば...という悲しさをも飲み込んで最後には圧倒的爽快感を与えてくれる。近年ここまで真摯かつ丁寧に、それでいて制作者たちの好きなように作られたアニメはそうそうお目にかかれない。子供をターゲットにしている作品ほど細かいところでの誤魔化しが効かない、ということをよく理解していた上でバトルではスピード感を重視しているところも好感がもてる。

ストーリーの緩急がしっかりしていたこと、大張氏などの豪華なアニメーターを招集したことで異常なまでに研ぎ澄まされた作画、この二つが最後まで揺るがずに根幹に在ったことで途轍もない完成度の高いアニメーションが生まれた。ラスボス級だった真下会長も何だかんだ憎めない性格だったし最後の最後で消化不良だった名人との決勝戦を再び行ったことで改めて決着をつけた。レイジが消えた時にはシリーズ終わらせるのかと思ったけどアイラもレイジに着いていった時点でああ続編作る気なんだなとわかったので安心しました。今後ガンダムについて自ら深く掘り下げることがあるか自分でもわからないが、少なくともこのガンダムビルドファイターズというシリーズにはどこまでも着いていこうと思う。



東京レイヴンズ

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ストーリー 7
キャラクター 6
演出 5
作画 4
音楽 6
総合得点 28点
総合評価 D

常に「面白くなるかな...?」と期待したところでもれなく失速するという悲しみが付き纏うアニメだった。面白くなりそうな要素はいくらでもあるのにいまいち最後まで突き抜けられなかった。メインヒロインかと思われたキャラが序盤ですぐさまいなくなったり、最終回近くでは本物のヒロインが「生き返らせるのは禁忌」となった状況で死んでしまうという展開はかなり斬新なのに、それがほとんど生かせてないのは間違いなくアニメにおける作画演出のせい。これ原作は面白いんだろうけど映像化の段階でだいぶ劣化した部分があって、つまりは原作読めば済むという作品ということだ。

人間関係を複雑化しすぎて処理すべき問題が増え過ぎ、そのツケが作画や演出に皺寄せとして回ってるのが特に悲しいところで、ここらへんがエイトビットの限界点っぽい。原作の内容全てが映像化出来るわけではないので、何を見せて何を見せないかという取捨選択を迫られるのは自明なわけだが、戦闘におけるそれは完全に失敗した。のっぺりしたキャラデザや奥行きを感じられない背景は術による空間を広く使ったダイナミックな戦闘に合っていなかった。それならば単純に「動かす」戦闘を見せようとするのではなくシャフトのようにコンテの切り方を工夫して動かさない戦闘を見せるという道もあった。

評価できる点は「大人が大人として機能している」ということだろう。ただ子供を縛り付けたり成長の踏み台になったりするのは大人でなくても果たせる役目で、このアニメは大友先生という教師を筆頭に主人公の味方側に属する大人が子供のやりたいことを理解して助けてやったり道を正してやるという先達者・年長者としての役割をしっかり果たしている。特に大友先生は今期作品の中でも屈指の良キャラだっただけに出番が限られていたことに物足りなさを感じたりなどした。

全体的にアニメーションとしての安っぽさが目について本筋があまり入ってこなかった。こういう作品の原作って「機会があれば読もう」と思うんだけど結局死ぬまで読まずに終わるという人生になる気がする。



サムライフラメンコ

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ストーリー 5
キャラクター 6
演出 7
作画 5
音楽 9
総合得点 32点
総合評価 C

皆さんこのアニメを異常とかわけわからんとか言ってるようですが個人的には最初から最後までとても楽しめました。ある時はヒーローという存在にメタ視点から斬り込み、ある時は本物のヒーローとして謎の敵と戦い、ある時はヒーローとしての存在意義を真正面から問う。非常に粗が目立つ脚本なのに何故か最後まで見せる力があった。最終回で主人公が真っ裸になってラスボスと対峙し始めた時には「何だこれ...何だこれ...」と言いながら見てたが、その後にサムライフラメンコ(男)が後藤(男)に求婚して全てを悟った。完全に頭イかれてるとしか思えない筋書きだけどもうこれでいいんじゃねえのと思えるくらいには我々のハートもこのアニメを見ているうちに強くなっていた。

このアニメ最大の特徴は「ご都合展開」がひとつも存在しないのにほぼ毎度のように「不思議展開」が襲来してくることだ。都合のいいように脚本を書いたというよりは無我夢中に脚本を書き殴ったという具合で確かに不気味さや異常性はある。しかし肝心なところではしっかり王道のヒーローもののような熱い展開にもっていくのでそこに対する安心感はあった。最終回は納得いかないけど、むしろ今までのぶっ飛んだ展開を纏めるのは誰にも出来ないだろうから、仕方ないなと妥協してしまう。

2クール使ってヒーローというものについて構想していたものを全部出し切ったという感じ。細かい設定とかストーリー同士の繋がりとか無視しまくってるのも普通なら拒否感出るんだけど、このアニメに関してはハナからぶっ壊れているということを前提に見ていたし、何よりOP・EDが1・2クール目共に非常に良かったので最後まで見続けられた。狭正義という主人公の名前そのものがまさに作品の全てを表しているのはやや安易だが、周囲の人々との関わり合い方に個性を見出せた。



ジュエルペット ハッピネス

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ストーリー 7
キャラクター 6
演出 9
作画 8
音楽 6
総合得点 36点
総合評価 B

第11話 「うんどうかいだよ~!」が全てでした。あらゆるギャグアニメはこの回にひれ伏せ。



プリティーリズム レインボーライブ

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 8
作画 6
音楽 9
総合得点 41点
総合評価 A

御伽噺のような空想的要素と社会的要素を絶妙な加減で混ぜ合わせた非常にクオリティの高いアニメだった。プリキュアといいアイカツといい、最近の女児向けアニメはよく練られた脚本と自由度・完成度の高い演出がハイレベルで合わさって深夜アニメを凌駕するものが多く、子供は勿論大人にまで受け入れられるのも納得できる。プリティーリズムのシリーズは上述の2作にやや遅れをとっていたように感じていたのだが、このレインボーライブでようやく肩を並べ三大女児アニメとして誇れるようになったように思う。

メインターゲットが低年齢層の割りにはキャラクタがとてつもなく重い過去を背負っていたりどうしようもない運命に翻弄されたり、まるで社会の厳しさや運命の残酷さを子供達に教えようとしているかのようだったが、同時にそこには直接的な問題の解消とはまた違うが確かな希望もまた与えられ、結果としてほとんどの人間が救われることとなった。人の死というものが話の中核になっているため、終わりを幸福と言えるかは難しいところだが、誰かの幸せのために犠牲になった人間というものは存在しないので終わってみれば全てが良い場所に着地したという印象。

非常に現実的な痛みを伴ったシナリオが根底にありながら、シリアス一辺倒にはならず各キャラの掘り下げを平等に行った結果、華やかで明るいプリズムショーを様々な視点・角度から描き出すことに成功した。現実と接地していながら魔法の力で幻想的な空間を演出するプリズムショーは演者によって全く違う意味を成すが、各キャラの目的がひとつに収束した最終回前話では全員が一体となってプリズムショーをして奇跡を起こしてみせた。それぞれの魔法の力が重なることで幻想的な空間は奥行きと具体性を増して現実との境界線を失った。

最終回前話では現実と幻想の区別がない世界で「あなたの大切な人はいつか必ず死ぬ」という現実を叩きつけ(それが桑島法子の声であったことは象徴的だろう)、それによりなる達とりんねとの別れが現実に近付いていることを示唆する。その別れを幸福に締め括れたのはその前に行われたプリズムショーの影響であることは紛れもなく、だからこそなるは最後に「りんねちゃんのこと、永遠に忘れないから」という現実に抗う約束を誓った。月へと帰っていくりんねと自立を誓うなるの関係性は「さようならドラえもん」を想起させる。こうした狙い済まされたような関係性が構築されていることも、このアニメが現実的でありながら時代に左右されない普遍性を有している理由のひとつだろう。

最終回では「訪れた日常(平穏)のその先」という、後日談のようなものが描かれていた。全てをフラットにするのではなく、全てがあるべき場所に収まった状態での再スタート。若干詰め込みすぎではと思うくらいの情報量だったが上手く捌けていた。特にべるの問題は内輪での解決に留めずしっかりエーデルローズの中で決着を付けている。こうした細やかな補完に脚本の実力が見て取れる。
ラストまで最終回としての矜恃を保ちながら、同時に1年間続いたアニメとしてしっかり幕引きをしてみせた。今度のセレクションにも充分期待できそうだ。





◆ベストキャラクタ◆

女性
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1位 宇迦之御魂神(いなり、こんこん、恋いろは。)
2位 アイラ・ユルキアイネン(ガンダムビルドファイターズ)
3位 高尾部長(ディーふらぐ!)

皆さんは桑島法子氏に祈りを捧げましたか。私は100回捧げました。


男性
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1位 アリーア・フォン・レイジ・アスナ(ガンダムビルドファイターズ)
2位 八軒勇吾(銀の匙 2期)
3位 シロエ(ログ・ホライズン)

この手の性格のキャラにしては珍しく不快感がなかったレイジが1位です。


人間以外(特別枠)
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1位 イノシシ(ジュエルペット ハッピネス)

どうしてもこいつを入れたかった。



◆今期ベスト主題歌◆

OP
ウィッチクラフトワークス OP『divine intervention / fhana』

fhana "divine intervention" (TVアニメ「ウィッチクラフトワークス ...


ED
いなり、こんこん、恋いろは。 ED『SAVED. / 坂本真綾

Inari, Konkon, Koi Iroha. いなり、こんこん、恋いろは。 ED ...


fhana、まじで名曲しか作らないグループと化しているのでアルバムが楽しみすぎて夜しか眠れないぜ。



◆今期ベストエピソード◆

ガンダムビルドファイターズ 第21話「きらめく粒子の中で」
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脚本:黒田洋介  絵コンテ:大塚健  演出:大久保朋、角田一樹  キャラクター作画監督:松川哲也  メカニック作画監督大塚健

生まれつき持っていた粒子を見る力を生かすことでレイジと邂逅し心を通わせるシーンはレイアウトの美しさ含めてアニメーションの素晴らしさを確認できる。



◆今期作品ベスト3◆

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1位 いなり、こんこん、恋いろは。
2位 ガンダムビルドファイターズ
3位 未確認で進行形




今期は1クール作品だといなり、未確認、ウィッチクラフトワークスが良かった。2クールものはガンダムビルドファイターズの圧勝。しかし今期だけで黒歴史作品が3つも生まれてしまった。
これは去年の秋を凌ぐレベルでの凶作、もう飢餓と言っていいと思うのだけど、いい加減アニメ業界は焼き畑的商法をやめて1クール10本程度の本数に絞ってもらいたい。数撃ちゃ当たるという戦法ももはや効力を失ってきた。まあしかし今のところ業界において最たる収入源はBDの売上利益なのでひたすらBDを売るための構えになるのは仕方ない。ただ最近だとBD売れてないアニメのほうが面白いというパターンが多くて、そういったアニメを過去の歴史に埋もれさせないためにはどうすればいいのか考えているが具体策がニコ生一挙放送くらいしか思いつかないので舌を噛むしかないらしい。