名探偵コナン 異次元の狙撃手

レイトショーで観たので客層が昼の部とはかなり違っていた。サラリーマン風の男性や金持ちっぽい中年女性など今まであまり見かけないタイプの人たちが観劇に来ており、その中で自分は比較的若いほうだったように思う。まあとにかく名探偵コナンという作品の客層は思っていた以上に幅広いのだと再認識した。

で、肝心の映画の内容についてだが、前作が酷かっただけにほとんど期待せずハードルを低く設定してに観たのにもかかわらず、そのハードルの更に下をくぐるという途轍もない失敗作だった。肩透かしならまだしも肩を透かすどころか肩に到達していない。死に際のセミを延々と見せられた気分だった。とにかく疲れた。途中から (帰って『史上最強の弟子 ケンイチ』を早く見たい...) という気持ちで溢れていた。

とにかく全てがたちの悪いギャグ。コナンがスケボーで公道を爆走・逆走することで自家乗用車が横転したりトラックが炎上したり、犯人が殺した人間よりコナンが重軽傷を負わせた人数のほうが圧倒的に多い。とにかくアクション見せたいという気持ちはわかるけどこれはどう考えてもダメだろう。子供の教育に云々とかそういう以前の問題だ。

加えて謎解き要素もほぼ無し。最終的に犯人は2択というの本当に解せないし(その2択は観客が推理できる余地がなく話の流れでひとつの選択肢が強制的に消える)、トリックとか使わずひたすら犯人の超人的な力を見せつけるみたいなハリウッド映画の様相を呈している。そんな犯人の超人的な力に対してコナンとかいう超人的な小学一年生があらゆる手段で立ち向かう。しかし前述のようにコナンは公道で暴走するし、そもそもコナンが外出するたびに身近な人から見知らぬ他人まで誰か彼かが負傷していくので、もうお前は自宅で推理しろと突っ込まざるを得なくなった。

『銀翼の奇術師』『水平線上の陰謀』のようなクローズド・サークルではないので緊迫感もなく、得意の爆弾を封じたことで画面の派手さも失われ、アニメでしかできないと豪語した青山剛昌とっておきのネタも死ぬほどしょぼかった。こんなもん工夫すれば漫画でもできるだろと思った。というかたぶんできる。

まあ犯人にひねりが無さ過ぎて意表を突かれたといえば意表を突かれたが、どちらかというと拍子抜けしたと言ったほうが正しそうだ。あと『漆黒の追跡者』の時にも言ったんだけど、ゲスト声優を重要な役どころに抜擢するの本当にやめてほしい。今回のはDAIGOよりましだったけどそれでもコナンは主役から端役まで豪華かつ実力派のキャストで固めているので尚更拙さが目立ってしまう。このガッカリ感はジブリ作品のキャスティングに似てる。

とりあえず今までの中で最低だった『紺碧の棺』さえも下回ってしまったことにただ涙するしかない。作画的見所は正直あまりないのだけど(カメラワークに頼りすぎ、耐性のない人は酔うかも)、終盤コナンがビルの屋上で犯人の狙撃をスケボーに乗ってかわすシーンはわりと良かったような。まあ終盤の展開がかなり雑だったことに落ち込んでいたのであまり気にする余裕はなかった。これ観てから去年のやつ見るとかなり去年のがかなり面白く見えるので怖いですね。派手なアクションを劇場のスクリーンで堪能したいという人以外は特に1800円近く払ってまで観る必要はないと思う。10月になればレンタル開始されるし来年の今頃には金曜ロードショーで放送されるのでその時まで待っても何の問題もない。