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クロスアンジュ 天使と竜の輪舞

9.5 2015年冬アニメ 2014年秋アニメ

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21世紀に突入してから15年が経った。おれを含め今この瞬間に生きている人間のほとんどは22世紀を迎えることなく死んでいくだろう。今年産まれた人間でさえ、2100年になる頃には85歳だ。おれは109歳だ。まったく生きていられる気がしない。今でさえ死にたい死にたい言っている人間があと85年も生きていられるとは思えない。人生はつらい。


思えば21世紀に突入してから今まで様々なことがあった。色んな人間と出会い、色んな場所に行き、色んな知識や経験を手に入れた。世間的にはまだまだ若造なのだろうが、おれは社会の真理に到達してしまったし、今更足掻いてもどうしようもないと割り切って開き直ることしかできない。20世紀から21世紀になっても尚変わらなかったのは食べ物の好き嫌いだけだ。カレーライスは相変わらず1日3食1年中ずっと食べていられるし、きゅうりはおそらく死ぬまで嫌いなまま食べることはないだろう。


趣味嗜好は歳を重ねるごとに変化していったが、根っこの部分は何だかんだ生まれた頃から変わっていないのかもしれない。未だに一番好きなアーティストは吉井和哉だし、一番好きな小説は『そして誰もいなくなった』だ。音楽は歌謡曲的な要素が含まれているもの、小説はミステリやそうしたパズル・謎解き要素が含まれているものに惹かれる。ドラマやアニメや映画に関してはこれといった拘りは無いのだけど、基本的に絵作りの上手さとかより純粋な物語の面白さに惹かれることが多いように思う。いわゆるストーリー重視と呼ばれるタイプの人間だ。


ストーリーにある程度の面白味があればキャラクタや作画演出音楽がどうであれそれなりに楽しめる、というのは20年以上アニメを見てきておれが導き出した結論なのだけど(ドラマや映画もそうなのでおそらく映像作品全般に適用される持論)、ごくまれに、アニメにおいてのみ、ストーリーがめちゃくちゃでも作画と演出と音楽だけで名作と呼ばれる地位までのし上がってくる作品もあるし、ストーリーといえるほどのストーリーがなくても、キャラクタの魅力だけで押し切ってしまうものもある。これらはアニメでしか成し得ないことだ。だからアニメというジャンルは一筋縄ではいかない面白さがある。


おれにアニメの面白さを最初に教えてくれたのはエヴァンゲリヲンだった。あれを見ていなかったら今のおれは存在していない。普通と言われようがつまらない選択だと言われようがおれは『エヴァンゲリヲン』『コードギアス』『魔法少女まどかマギカ』の3作を死ぬほど愛しているし、自己評価で50点満点を付けられたのもこの3作だけだ。これらはアニメ界に全く新しい価値観を生み出したという点で、30〜40年前の名作にも何ら見劣りしない、おれ個人としては完全にそれらの名作を超えているとも思っている。しかしこのレベルの名作は当然ながらなかなか現れない。早くても10年に1度、といったところだろう。


前置きが長くなってしまった。クロスアンジュの話をしよう。『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』は現段階における21世紀の総決算的アニメだ。ロボット、SF、ラブコメ、友情・努力・勝利、ギャグ、俺(私)TSUEEEEE、百合、異世界ファンタジーバトル、頭脳戦、昼ドラ、歌合戦、次回予告を使ってのお遊び…などあらゆる要素が詰め込まれている。ご丁寧にスピンオフ的扱いの四コマ漫画は学園ものときている。21世紀以降のほぼ全てのアニメの要素が詰め込まれているといっていいだろう。常に笑いと衝撃と情熱と感動に満ち溢れた紛れもない名作。疑いようもない大傑作。おれたちが渇望して止まなかったものがここに全て詰まっている。


これを笑えるアニメとか頭おかしいとか言って褒めている人間も多いが、おれはこれを21世紀に燦然と名を残す傑作だと断言する。先人たちが残してきた、傑作と呼ばれるアニメが内包する要素をかき集めそれを見事に違和感なく再構築している。このアニメがテーマにしているのは新しさの追求ではなく過去の総決算だ。新しさを追い求めるあまり過去の遺産を蔑ろにする作品は総じて駄作に成り果てた。歴史に名を刻んだ名作は(アニメに限らず)歴史を尊重する」という姿勢が伺える。そうした態度は必ず受け手に伝わるし、何らかの形で実を結ぶ。


あと言っておきたいのは「御都合主義=悪」ではないということだ。御都合主義がこちら側にとって不快に感じられるものであったり物語に齟齬を生じさせたり違和感を抱かせなければそれは手法として充分に成立している。クロスアンジュの御都合主義は全て笑いと感動に昇華されているのが本当に素晴らしい。作画の不安定さなんてもうどうでもいいのだと思わせてくれるほどの圧倒的な面白さの塊。まあ逆にこれで作画も良くてパーフェクトだったら逆に取っ付きづらかったかもしれない。


2クール全25話もありながら一度としてつまらなかった回はない。今の時代にこれはもう奇跡と言う他ないだろう。それゆえベストエピソードを決めることさえ困難だ。2クール全てを巨大なひとつの物語としてだけ考えるのではなく、1話1話の中でしっかり起承転結を整えつつ見せ場をちゃんと用意しているからこそ成し得た所業。このご時世にこんな完成度のアニメが見られるとは思わなかった。この文を読んでいるけど『クロスアンジュ』は見ていない、という人のために内容についてはここでは語らないでおく。是非とも自らの目で実際にクロスアンジュという作品の素晴らしさを確かめてほしい。おれたちは歴史の生き証人となったのだ。