ハロー!!きんいろモザイク 第09話 「とっておきの一日」

2015年6月1日〜3日のうちに死んだ人間の半分以上の死因は間違いなく小路綾の(陽子に対して)「絶対内緒よ、いつでも一緒にいたいの」を聞いたことによるショック死だろう。おれも日々しっかり精神鍛錬していなければ確実に死んでいた。内臓と肝臓はやられたがギリギリのところで心臓は止まらなかった。


以下雑感.



きんいろモザイクにおけるパロディ要素

今回はパロディ要素が多かった。エースをねらえ、Take2東貴博の万札ネタ、マリーアントワネットの有名な言葉など。きんいろモザイクという作品はこれまでほとんどパロディを取り入れていなかったのでこれは珍しい。そもそも、きんいろモザイクはこちら側の世界の創作作品・歴史・人物などと接続するようなことはしない。あくまで「きんいろモザイク」というのはこちらの世界とは切り離された世界として存在している。非現実的な要素は(カレン以外)ほとんどない、「日常」という括りの中にありながら、こちら側からの侵入を許さないという不可侵性もある。


結果的に、こちらときんいろモザイクの世界を繋ぐ切っ掛けとなったパロディ要素はそこまでして投入する必要性があったのか、という疑問が残った。きんいろモザイクは俗世と切り離されているからこそきんいろモザイクという世界を強固に保てているのであって、わざわざこんな下界に枝葉を伸ばす必要などないのだ。己の信じた世界を内側から丁寧に、頑丈に塗り固めていけばよかった。しかし、九条カレンの金持ち設定は今回のパロディでより際立つこととなり、その点においては無駄ではなかったと言える。



■ 大宮忍と小路綾

第4話「雨にもまけず」において綾は美容院へ行った結果、散髪(自分を良い方向に変えること)に失敗している。忍の夏休みデビューというスローガンも、根本には「自分を良い方向に変えよう」という意思がある。そして今回、忍も美容院へ行った結果、散髪に失敗した。きんいろモザイクの世界における美容師の圧倒的な腕の無さには驚かされるが、ここで重要なのは綾と忍、両者の認識の違いだ。


結局両者ともに美容院での散髪に失敗しているが、忍は散髪に成功していると思い込んでいる。だが周りから見ればそれは紛れもない失敗だった。対して綾は、綾本人からしたら散髪に失敗していたが、陽子たち周りから見ればそれは「かわいい」の範疇に入る程度のもので、失敗しているとは思われなかった。ここに自身と他者の認識のズレ、そして自己評価の高低の差が窺える。忍はコスプレ趣味や姉がファッションモデルであることも相俟って、基本的に自身のファッションには自信があったが、綾は引っ込み思案であることが影響してか、あまり自分に自信がない。



■ 部活に誘われる陽子

常に「(陽子に対して)思っていることを口に出せない」という苦悩を抱えていた綾だったが、今回は陽子と引き裂かれる本格的な危機が訪れたことによって、思っていたことを(無意識のうちに)口に出せた。思えば第3話「あなたがとってもまぶしくて」で綾は「素直になりたい」という欲求に突き動かされていたが、今回は本能で動いており、ここから導き出される結論は、陽子が死んだふりをするなどのドッキリに引っ掛ければ綾は思っていることを全て吐き出すのでは、ということに尽きるので、やはり九条カレンが率先して仕掛けてほしい。



■ 続・魔法少女カレン

最後の最後で空を見上げて何かに気付き、前向きに走り出す穂乃花。ここで何に気付いたかは彼女の口からは語られない。映像を見て判断するしかないのだ。これを解く鍵はCパートで穂乃花が語る「お天道様のおかげかな」という台詞だ。太陽は日本だと赤色で表現されるが、イギリスでは金色、つまり穂乃花の言うお天道様はカレンを暗に示しているとわかる。


ここで第4話「雨にもまけず」を思い出してほしい。カレンの魔法、元気パワーを注入された結果、アリスの花は雨に負けることなく綺麗に咲けた。そしてそのカレンの使った魔法を目撃した唯一の人間、それが穂乃花である。つまり穂乃花はもう既にカレンの魔法の効き目を知っているのだ。カレンが、穂乃花がテニスの試合で勝てるようにお天道様にお祈りすればそれは叶ってしまう。夕焼けに染まる空を見上げた時、穂乃花はそのことに思い至ったのだ。
つまり穂乃花の最後の台詞「お天道様のおかげかな」は、祈りを捧げてくれたカレンと、その祈りを聞き入れ実際に叶えてくれたお天道様の二者に対して発せられたものだったのである。



■ 結論
九条カレンはソール。