The Best Albums of 2020(国内)


50.018『Yellow Pierrot』『I KNOW』


もっと知名度あってもいいラッパーだと思うんだけど、week dudus客演の「222」とかあるので、有名になるのも時間の問題という気もする。とにかく全曲ビートが良く(重低音中心のビートも勿論良いんだが「Burn」「Don't」みたいな狂気を感じさせるビートとか最高)、この上に低く重たいラップが乗っかっており、この手のテイストが好きな人間は沼にハマること間違いないので一度聴いてほしい。アルバム1枚聴いても20分以内で収まるあたりも時代を感じさせますね。



49.赤い公園『THE PARK』

おれたちは津野米咲という天才がいた事実を忘れてはいけない。作曲能力も演奏技術も鬼のように高いのに、それを良い意味で一切感じさせず、超ポップに聴かせてしまうというのは、やはり才能のなし得る技だ。自分と同じ歳の天才が、自分よりも早くいなくなってしまうということのつらさが、今年になってようやく分かった気がする。おれも早いところそっちに行くからな。



48.エレファンク庭『Funky Journey』

明確に自分はファンクをやっていると公言している日本のアーティスト、スガシカオ以来では???土台はファンクなんだけどメロ自体はJ-POPのマナーに則っているのでとにかく聴きやすく耳馴染みが良い。それでいて各曲しっかり決め所やコアなリスナーをハメてくるポイントが設けられているので、そりゃ最高になるわけだわという感じです。



47. 武藤彩未『MIRRORS』『あの頃、君に渡したプレイリストを今でも僕はくちずさむ。』


一時期凄い持て囃されていなかったか???凄いソロアイドルの再来みたいな。あれから月日はだいぶ経ったけど、この人の歌唱力表現力は格段に上がっていて、もうベテランの風格さえ感じられる。「雨音」「Flower」とか。



46.さとうもか『GLINTS』

柴田聡子とかカネコアヤノみたいな、もっとフォーク寄りな人だと勝手に思っていたので、アルバムの多彩さには驚かされた。「パーマネント・マジック」以降の異世界に誘われるような流れがたまらなく良い。



45. 佐々木彩夏『A-rin Assort』

なんじゃこりゃ!と思いながら富良野ドライブ旅の最中に聴いていた。富良野ドライブ中に聴くようなアルバムじゃねえなと思いつつ、この訳の分からなさ、味付けの濃さは富良野旅行中だから自分の中で上手く消化できたのかな、とも思う。途中の芦別赤平で大雨降ってたこととかどうでもよくなったもんな。



44.藤川千愛『愛はヘッドフォンから』

「私にもそんな兄貴が」の歌詞を聴いて刺さらない男は人生やり直してほしい。おれはこんなことを思ってミュージシャンを目指す妹がほしい人生だった。
元アイドルという肩書が足枷になるアーティストもいる中で、この人はそういうバックボーン全部引っくるめて作品に昇華している、まじもんのアーティストという感じでとても良い。そういうマインドはヒップホップ界隈のアーティストに近いところがある。



43.TRIPLANE『unanimous』

10年以上この人達の音楽を聴いてきた人間ほどこのアルバムを初めて聴いた時に薄い!!!と思ったのではないだろうか。おれも最初に聴いた時に全然記憶に残らなくて、11月くらいに聴き直した時にあれええやんけとなった次第である。トライプレインがこんな俗に言うスルメみたいなタイプのアルバム出すことが意外過ぎて最初は脳の理解が追いついていないだけだったようだ。



42.YAYYAY『I'm Here』

このキャリアでこれだけ新しいことに挑戦する姿勢は本当に素晴らしいとしか言いようがない。強いて言えば和風エレクトロニカという雰囲気だが、それにしては荒々しい演奏やささくれだった歌詞が、決して小綺麗に収まらないアクの強さを生み出している。もうちょっとボリュームあれば超名盤だった気もするが、このくらいのサイズの方がかえって胸焼けしないで良いのかな。



41.nuance『brownie』

とにかくここは「初恋ペダル」で突き抜けた感がありますが個人的には「悲しみダンス」を推したい。この曲はABメロの音程の上がり下がりがない(メロディの起伏があまり無い)ぶん高音から始まるサビが映える構成なんだけど、それにしても全体的にここまで無機質に整えられているアイドルの曲をあまり聴いたことがなかったので驚いてしまった。エモの対極にあるような曲なんだけど、人間の感情に振り回された2020年だからこそ心に刺さってくる。



40.ircle『こころの℃』

想像した3.5倍くらい良い曲書きまくってて驚いた。ircleって今まで聴こう聴こうと思っていてもあんましっかり聴いたことが無くて、年末の小樽探訪の際にこのアルバムを何となしに流して歩いていたら曲が良くて探訪に集中できなかった。2020年代のロックバンドが作るアルバムの最適解の1つという感じだ。



39.Dear Chambers×コールスロー『LOVE』

2組とも良いバンドだと思うんですよ。別に凝ったアレンジや示唆的な詞を書いてるわけでもなく、思ったことや伝えたいことをストレートな曲に乗せて歌うという点で、ある意味時代に逆行しているのかもしれない。ただこのコロナ禍においては、伝わったもん勝ちというか、手段はどうあれ受け手に刺した者が正義みたいなところもあるので、時代の波にも乗っている感はあるよな。おれが聴きたいロックはこういうのなんだよ。



38.ハンブレッダーズ『ユースレスマシン』

ここほどバンドやってるバンド、中々いないでしょう。バンドを愛しバンドに愛された男たち。必要最小限の音数にシンプルなコード、歌メロ。しかし表題「ユースレスマシン」のような二段階転調する曲に顕著だが、とにかく聴いていて飽きさせない工夫が凄い。自分たちの型を崩さずにここまで凝ったことができるバンド、最近いないんだよな。



37.ukka『恋、いちばんめ』

表題曲が強過ぎてしばらく聴き込まないと他の曲が霞んでしまうという弱点はあるんだけど、何周かしている内に他の曲が染みてくる。「can't go back summer」とか聴けば聴くほど沼にハマっていく感覚を味わえるので最高です。合間のギターソロとか、メンバー歌唱時以外にもいちいち聴かせるポイントを作ってあるのも憎い。



36.緑黄色社会『SINGALONG』

「Mela!」単独首位なのは間違いないんだけど、他の曲もアルバムの構成員としてしっかり機能しており、トータル肩肘張らず割とどんな場面でも聴けるオールラウンダーなアルバムに仕上がっている。好みとしては1曲1曲がシングル曲並みの主張をしつつアルバムとして流れ含み纏まりのある作品なんだけど、そんなものは1年に1枚出ればいいレベルなので…



35.GOTCHAROCKA『POLYCHROME』

日本で10年近く活動していて名前も曲も知らないけどめっちゃ良い曲作るバンドがいるの、当たり前のことなんだけどストリーミング主流の生活になったことで感覚がおかしくなったのか、感動を覚えることがある。ヴィジュアル系バンドとか特にあんまストリーミングで配信されていないので金脈という感じ。「白いDIA」とか完全にかつての歌謡曲寄りのJPOPど真ん中だもんな。



34.Kolokol『WONDERLAND』

ノーマークだったアイドルがクオリティ高いアルバム出してくるとテンション上がるんだけど、今のところ次作も同じか超えるクオリティで出してくれたケースがまだ無いので、Kolokolにはその先駆者となってほしい。この路線でいけば大丈夫です。



33.フィルフリーク『Reverge Youth』

一聴すると限界まで煮込まれた陽キャラがバンドをやっている感じなんだけど、アレンジとか注意して聴くとただの陽キャラじゃないということが何となく分かる。「eisei」の転調の仕方とかエグくて、只者じゃない感じが漏れ出しており良い。



32.BLUE ENCOUNTQ.E.D

今までよくある量産型ロックバンドだと思ってスルーしていたんだけど、余市旅行の際に車で流していたら思いの外刺さってしまったのでこの位置です。テクニカルな曲もストレートな曲もそつなくこなすあたりが最近のロックバンドだなーという感じがする。その枠からはみ出すためのヒントが「あなたへ」にあるはずなんだよな。



31.ポルカドットスティングレイ『何者』

小慣れすぎていたりあまりにマーケティングを意識しているその音楽性のため今まで苦手だったんだけど、配信シングルの「JET」を聴いて1発で最高!!!!!となりました。サビでボーカルの声が掠れるあたりがすげえ好きなんですよ、意図していないエモーショナルを感じて。このアルバムに関してはそうした「JET」の流れを汲んでいる、良い意味でマーケティングのど真ん中からちょっと外したような曲が並んでいるので初めて彼女らの作品で良いなと思いました。マーケティングを狙うにしても「さよならイエロー」くらいの狙い方だったら全然好きですよ。



30.saji『花火の詩』

随分とポップになったもんだなーと寂しさを覚えつつ、これをもう少し突き詰めれば絶対化けるぞという手応えもある。Unlimited時代から気付けばだいぶ経ってメンバーも1人脱退し、顔出しもするようになったわけだが、今になってUnlimited時代の曲を聴いてみると今に繋がる要素があって、これは順調な進化なのだと分かります。



29.the peggiesアネモネ ep』

『アルプススタンドのはしの方』を観てどハマりしてしまった。今まで何でちゃんと聴いてこなかったんだという後悔。1曲1曲のキャラクタ立ちが半端じゃない。epじゃなくてミニアルバムという触れ込みで出してほしかった。



28.伊藤美来『Rhythmic Flavor』

路線自体がちょっとずつシティポップから現代音楽の方にズレていっているので、食い足りなさを覚えるのは仕方ないのかもしれない。でもやっぱ1stの衝撃、完成度が凄かったので、次作は是非原点回帰を目指してほしい。



27.宮本浩次『独歩』

下手したらソロの方がいいんじゃね、というくらいの完成度。バンドサウンドという制約から解き放たれたことにより、一層歌謡曲志向が増したうえに尖りも忘れておらず、結果的にエレファントカシマシよりもロックなアルバムに仕上がっている。これは今年のうちに聴けて良かった。カバーアルバムは知らん。



26.POP ART TOWN『Sensation』

迷ったのはこのアルバムをどこの位置に入れるかだった。めちゃくちゃ良いことは言わずもがななんだが、聴くたびにここより良い、ここよりちょっと足りないという鬩ぎ合いが生じ、うまく当てはまる位置が見つからなかったんだけど、最終的にここに。あともう2曲くらいパンチある曲があれば余裕で年間トップいけるんじゃないか。



25.ヤなことそっとミュート『Beyond The Blue』

もうアイドルのリリースした作品という雰囲気が微塵もない。これはもうロックバンドのアルバムです。ポストロック的な、ともすれば無機質に感じさせるような楽曲が揃っているのだけど、これを4人のボーカリストが歌うことで途轍もないエモーショナルを生み出すので、ブクガやsora tob sakanaの最終到達点はここだったのでは、という気持ちになる。 



24. 河内REDS『時計じかけのオレたち』

令和2年になってこれだけ昭和歌謡じみた曲を作っても許されるのはボーカルの力でしょう。クサすぎるメロディを伸びやかに歌い上げるボーカル。9mmもこれくらいのボーカルだったらどハマりしてたんだろうな…と思わずにはいられない。



23.a flood of circle『2020』

まさかここが今年になって覚醒するとは思わなかった。いや、田淵プロデュースとかKEBABSの活動とか、予兆はあったんだが、それを見事に見逃してしまった。2007〜2009年頃の、1番良かったフラッドが表現力5倍増しで帰ってきた。2020年の数少ない収穫。「天使の歌が聴こえる」の美しさはどれだけの言葉を尽くしても語れまい。



22.CROWN POP『LIFE』

最初の2〜3曲で舐めてたらエラい目に遭います(自分のことですが)。最初はやけにあっさり目というか普通のアイドルソングっぽくてあんま印象に残らんなーと思っていたら4曲目の「サマータイムルール」から最後の「LIFE」まで怒涛のパンチの応酬です。特に「ホログラフィック・デート」「真っ白片思い」の2曲が続いた時はM-12019のかまいたち和牛の並びを思い出して熱くなりました。〆の「LIFE」もまた良いんですわ。



21.ZORN新小岩

客演の豪華さを見ても分かるように完全に成り上がったZORNの新作タイトルが新小岩なの、『生活日和』から続くZORNの信念が感じられて良い。全曲完成度が高く、随所にパンチラインもあり、そら売れるわという感想です。ここまでやられたらお手上げだよ。



20.Terry&Francisco『Galaxy』

実質ベスト盤なんですが、あまりに知名度が低い現状を憂いて入れました。圧倒的なポップセンス、コーラスワーク、歌詞の美しさ。現在一線で戦っているポップスバンドを片手で薙ぎ倒せるほどの実力を有していながら、それが世に広く知られていない現状はどう考えてもおかしいでしょ。



19.透色ドロップ『透色計画』『透色学概論』


ここにどうしても入れたかった。どちらも収録されているのは数曲ながら全曲ホームラン級の威力。たぶん坂道系アイドルを意識していると思う楽曲群なんだけど、その意識を全然隠そうとせずオープンにしているあたりがリスペクトを感じられて良い。今最もフルアルバムを聴きたいアーティストです。バンドサウンド主体なのでミドルテンポのバラードとかシティポップとかチルウェイヴ的な電子音楽も収録した全10〜12曲トータル45分程度のフルアルバムを作ってくれたらもうベスト入り確定です。



18.サンダルテレフォン『Step by Step』

今まで名前も知らなかったアイドルが傑作を出していた時の驚きと知れて良かったという喜び、未だに言語化できないでいる。つりビット、りんご娘、そしてサンダルテレフォン。みんな違ってみんな良い。今年は特にアイドルという存在に救われた年でした。



17.MAGIC OF LiFE『MAGIC』

やっと『bud』『DOORS』に並ぶ傑作を生み出してくれた。ここ数年は毎年アルバム出すというハイペースぶりで、もっと期間空けて楽曲練ってもいいのでは…と思っており、そんな気持ちで今作を聴くとやっぱ制作期間って大事なんだなと改めて感じた。本来ライブやその他諸々に割かれていた時間が制作に充てられた結果、本来のポテンシャルがしっかり引き出されており、全8曲30分というあっさり目の曲数ながら食い足りなさはまるで無い。



16.WANDS『BURN THE SECRET』

ここはもう上原大史という稀代のボーカルを発掘できた段階で勝利でしょう。癖の強いビジュアル系バンドの癖の強いボーカルをやっていた彼をこんなメジャーど真ん中の歴史あるバンドに迎え入れるあたりの柔軟さ、過去の曲をなぞるのではなくアップデートするボーカリゼーション、時代の流れを読みつつバンドとしての矜持を保つ新曲の数々を聴くと、こりゃもう2020年を代表する傑作だと言わざるを得ない。



15.DIALOGUE+『DREAMY-LOGUE』

声優アイドル、卒業期限もないし恋愛自由だし強過ぎるなと思ったけどメディア露出的な意味だと普通のアイドルよりしんどそうな気もする。それはともかく、声優アイドルという肩書の人達が出す曲は本当に様々なアーティストから提供してもらっている分振り幅が大きくて面白い。ここは全曲ユニゾン田淵提供というアクの強さをクセのないボーカリゼーションで中和しており、その塩梅が良かった。



14.Plastic Tree『十色定理』

メデューサ」を聴いた時点でこりゃ今年トップクラスだと誰もが思ったんじゃないですか(おれだけか???)とにかく1曲1曲のパンチが強い。これはもうアルバムの統一感よりも個々のプレイヤーの個性を活かそうとした結果だと思うし、全員が作曲できるプラにおいてはこの路線が最適解だと思う。



13.Four o'clocks『菫は咲く』

今年1番リピート再生したのはこのアルバムかもしれない。全8曲29分という圧倒的な敷居の低さ。それでいて音楽的には非常に凝ったことをやっているのだけど、リスナーにそれを感じさせない手腕の凄さも随所で発揮されている。コーラスワークの美しさとか、そもそものメロディラインの耳馴染みの良さとか、あらゆる面において隙がなく、こりゃ6年待たされても何も言えんわという感じである。



12.私立恵比寿中学『Playlist』

そりゃこれだけ強い曲揃えたら強くなるやろという感じの横綱相撲でした。しかしこのグループは常にフレッシュさを持ち合わせているのが凄い。もう中堅のポジションで、音楽的にめちゃくちゃ冒険している曲があるわけでもないのに全部新鮮に聴こえるのはメンバーの表現力に拠るところか。一番好みなのは「シングルTONEでお願い」なんだけど、過去を知っていればいるほど「HISTORY」が超名曲として立ち上がってきます。



11.日向坂46『ひなたざか』

『ひなあい』を観ていると今一番アイドルらしくないアイドル番組やっているのに、リリースされる楽曲は1番アイドルらしいという捻れっぷり。欅坂は崩壊して一から出直し、乃木坂は最新アルバムで音楽的な挑戦を果たしている現状、日向坂46がメインストリームど真ん中に勝負を仕掛けてくるのはまあ当然と言えば当然か。しかしどの楽器も強度が高い。何よりこのグループは泥臭さと品の良さが共存しているのが凄い。宝塚と少年ジャンプの魂が融合したような。そりゃハマらないわけがないわという感じです。おれの負け。



10.超ときめき♡宣伝部『ときめきがすべて』

12月末ギリギリに滑り込んできた傑作。大まくりです。去年のM-1でぺこぱがラスト出番で和牛を倒して決勝に行った時の興奮を味わいました。まさか年末ギリで出たアルバムが今までにリリースされた2020年アイドルのアルバムのほぼ全てを薙ぎ倒していくとはさすがのおれも予想できなかった。いやー強い。王道のJPOP、ライブ映え(コール)を意識したアイドルソングBPM早めのロック…スローテンポのバラードが無かったのが残念だったものの、一曲一曲のパンチ力がめちゃくちゃ強いので果てしない幸福感を得られます。そして何より小泉遥香さんが容姿歌声共に最高に美しいので皆さん是非一度確認してください。それでは。



9.Ms.OOJA『流しのOOJA』

カバーアルバムをこの位置にすることには少し抵抗があったけど、まあでも今年の5本の指にはどう考えても入ってくるでしょう。圧倒的歌唱力と表現力。それらを活かす選曲の良さ。何より溢れんばかりに伝わる原曲へのリスペクト。原曲を崩さずにアーティストの歌を際立たせるアレンジも素晴らしい。
フライディ・チャイナタウン」「さよならの向う側」「シルエット・ロマンス」みたいな他のアーティストもカバーしているような有名どころから、「真夜中のドア」「Woman」「駅」みたいな隠れた名曲まで余さずカバーしている懐の広さ。いやしかし「Woman」を初めて聴いた時の衝撃は凄かった。薬師丸ひろ子しか歌えないと思っていたこの歌を、初めて薬師丸ひろ子と肩を並べるレベルで歌っているアーティストに出会えた。なんで今まで聴いてこなかったんだという後悔。オリジナル曲も掘っていかないといけない。



8.POLLYANNA『pantomime』

とにかく多彩。様々な曲を様々なアプローチからアレンジし、それをアルバムというパッケージに纏める手腕は新人バンドのそれとは思えない。1発でインパクトを与える曲もあれば、聴けば聴くほど良さが分かってくる曲もある。それでいて伸び代も感じさせる仕上がり。新人アーティストのファーストアルバムはかくあるべき、という理想の作品。



7.川上きらら『16歳のアリス』

2020年最もスルーされた傑作。全曲シングル表題曲クラス、アルバムの尺や構成も完璧、鬼のような表現力。いちいちツボをついてくる各曲に言葉を失い、アルバム終了即もう一回再生という個人的偉業を成し遂げたのは今年このアルバムだけだった。何が良いって1度目に聴いた時と2度目に聴いた時で1番良いと思える曲が変わってくるところで、毎回新鮮に聴くことができる。今のところ12周したんだけど未だに飽きる気配がない。



6.RYKEY『DEMO TAPE』

ミュージシャンの人格とか一切気にしないので勿論SNSなど言わずもがな。良い曲を作るミュージシャンはそれだけで最高なのである。全曲主力級の完成度、加えて客演の豪華さーーとりわけバダサイが客演にいる時点でもう優勝と言ってもいいくらいなんだけどーーしかしそれだけじゃないんだよな。まじで全曲パンチラインがあって1曲聴き終わるたびにめっちゃ喰らってしまう。今年のリリックベストを作るとしたら断トツ1位です。



5.アーバンギャルド『アバンデミック』

今年はなんかこう、例年に比べて決定打に欠けるというか、衝撃でぶちのめされるようなアルバムが無かったな…と思っていたところにこれですよ。もうジャケ写見た瞬間に「これは!!!」と思ったし先行PV観た時点で相当凄いとは思っていたけど、実際に聴いてみるとこりゃもう今年のトップクラスだと納得してしまった。時流を取り入れ、世相を斬りまくりながら問題提起をするミュージシャンらしいアティテュードも素晴らしく、そういう意味で松永天馬の歌詞は過去最大級の切れ味である(随所にリスペクトしているアーティストのリリックを引用しているのも最高ですよね)。おおくぼけいを中心として行われたであろう作曲面でも隙が無い。「映えるな」みたいなボカロ的楽曲をアーバンギャルドが演るとこうなるのかという感動もあり(MV、別にアニメーションじゃなくてもよかったのでは、という気持ちもありつつ)。
おれが高校生の時に聴いて衝撃を受けて速攻買いに走った『少女は二度死ぬ』の頃に比べてメロディは洗練され大衆に受け入れられるようなポップさを手にしたが、それは別にセルアウトしたわけでもなく、時間の流れの中でメンバーの脱退もあり、各々の個人活動もあり、様々な要素を取り入れていった結果の到達点なのだと、全曲聴き終わって納得してしまった。こういう時代になってしまったからこそ、アーバンギャルドが天下を獲りにくるのは必然だったのかもしれない。



4. ストレイテナー『Applause』

ついに『NEXUS』を超える最高傑作が10年以上の時を経て生み出されたことに感動を禁じ得ない。NEXUS以降コンスタントにアルバムをリリースしていたものの、何かこう毎回同じような感じがしてイマイチ突き抜けるものがないなと思っていたところで、コロナ禍によるライブ中止と長い制作期間。結果的にそれがアルバムの一曲一曲のクオリティを上げる最大の要因となった。全曲シングル表題でいけるという過去最高のラインナップ、11曲40分弱という丁度良い尺。「さよならだけがおしえてくれた」の完全無欠の名曲オーラ。これを推さなくて何を推すんだという感じです。他にも「Graffiti」「叫ぶ星」「Death Game」「ガラクタの楽団」「Dry Flower」「Maestro」「No Cut」と最初から最後まで全く隙がない。凄い凄い言ってたらあっという間にアルバムが終わってしまったよ。



3.Moment Joon『Passport & Garcon』

国内と海外でアルバム分けしてるけど本来音楽は国境とか関係なく存在するものなので便宜上、仕方なくというところがある。これを国内のアルバムに入れているのは日本のレーベルからリリースされた日本語メインのヒップホップだからなんだけど、これが海外のレーベルからリリースされた日本人の日本語の曲だったらどうすればよいのだろう。そんな悩みを抱えるくらいなら、もう邦楽洋楽国内海外という分け方自体を無くせばいいのかもしれない。
めちゃくちゃ聴きやすいのにめちゃくちゃ聴き応えがあり、1曲目を気軽に再生するとそのままあっという間にラストの「TENO HIRA」まで連れて行かれる。今年は去年に続き国内の音楽が不作だったという印象なのだけど(おれの耳が衰えているのかもしれない)、このアルバムがリリースされたおかげで日本の音楽シーンは持ち堪えたように思う。このアルバムを聴かずに2020年を語ること勿れ。



2.イヤホンズ『Theory of evolution』

今年1番実験的なことをしているのが声優アーティストなの、インディ界隈で互いの傷を舐め合っているアーティストたちはもっと真剣に受け止めないといけないぞ。1番実験的で1番刺激的、それでありながらどこまでもポップなの、本当に理想的。全8曲35分、食い足りないと思いきや密度があまりにも濃いので体感は1時間程度だったりする。加えて初回限定盤のDISC2を聴くことで、1枚目(ストリーミングでも配信されている方)の楽曲の構造の謎が解けるまさかの仕様。ストリーミング全盛期におけるCDの売り方として1番ワクワクしたかもしれない。いやしかしイヤホンズがこれだけ化けるとは思わなかった。登別に泊まりに行った帰りの車でひたすら流していて、中毒になるくらい聴いた記憶が今でも蘇ってくる。再生すると思い出が蘇ってくるアルバムは名盤だと昔から決まっているのだ。








1.ばってん少女隊『ふぁん』

今年は3月4月6月7月9月10月11月12月が特に死にたかったのだけど、特に9月以降が本当にしんどくて、車で退勤している途中で(このカーブ曲がらなかったら死ねるかな〜)とボーッとした頭で思いながらハンドルを握っていた。今日も明日も明後日も最悪な日々が続くと分かっていながら生き続けることに何の意味があるんだ、こんなのは拷問と同じだと思っていたところで出会ったのが、ばってん少女隊3枚目のアルバム『ふぁん』だった。
メジャーからインディーズへ、メンバーの脱退、コロナ禍による活動の制限など、本人たちの境遇はとにかくつらいものだったはずで、アルバムタイトルにもそれが現れているのに、実際のアルバムの中身はそんな負のイメージを一切感じさせないほど明るい。空元気でも演技でもなく、現状を受け入れて進んでいく芯の強さ。その強さが自分たちだけのものでなく、アルバムタイトル通りファンによって得られ共有されているものだと気付いた瞬間、信じられないくらい救われてしまったのだった。これまで色んなジャンルの楽曲やアルバムを数多く聴いてきたが、これほどまでに押し付けがましくなく人を救ってくれる作品に初めて出会った。癒しでも導きでも共感でも寄り添うでもなく、完全なる共有。景色や感情や進む道の共有。生きているうちにこんな素晴らしい作品やアイドルに出会えるとは思わなかった。
楽曲単体で取り出しても、「OiSa」の異常なまでに楽曲の世界観を突き詰めた映像の中毒性は凄まじく、楽曲単体でなく映像込みで表現を突き詰めるあたりはアイドルの利点を最大限に活かしている。「スウィンギタイ」「でぃすたんす」「Dancer in the night」「ジャン!ジャン!ジャン!」「ありがとーと」「Dear My Blues」とひたすらに良曲の乱れ打ち。締め括りの「Over」は音源はもちろんYouTubeに上がっているライブ映像が死ぬほど良かった(限定盤の最後に収録されている「Happy」がめちゃくちゃ良いので何でこれを通常盤にも入れなかったんだ…という気持ちはあるが)。
この世の中には名盤と謳われる類の作品が数多く溢れているが、実際のところ「こんなもんは名盤じゃない」と感じる頻度の方が高いんじゃないだろうか。名盤と言われる基準は正直よく分からないが、聴いた人間の心を最終的に救ってくれる存在であるとするならば、これ以上の名盤があるだろうか。間違いなく2020年最高傑作であり、長く語り継がれていくべき名盤です。



さて、生まれてから今までの中で最も酷い年だった2020年。芸能人やミュージシャンが次々と命を絶ち、やはりこの世界で生きている意味などないのだと再認識させてくれた2020年。人間の醜さを改めて教えてくれ、山奥の小さな喫茶店に足繁く通っていた2020年。現職を辞めるために仕方なく新たな労働に向けて動いていた2020年。他の人達はどのように過ごしていたのだろうか。どう考えてもこの年のことを「素晴らしかった」という人間はいないだろうし、日本政府や各国首脳の酷さを見て政治というものに何も期待できなくなった人間は多いのではないか。おれは毎月10万給付する国だったら良かったなと思いました。

つらすぎて今年の記憶が全然無いんだけど、強いていうなら今の労働を今年度中に辞めると固く誓ったのは6月くらいだった気がする。今の職場での労働1年目はとにかく周りの人が良かったのでまだ何とかやっていけたのだけど、転勤の多い職場なので良い人からいなくなるんだよな。そしてそもそもおれは団体行動が苦手なのでやっぱ職場でも連携とかすげえ求められるのが全然駄目だった。おれのやっていることはおれ自身が責任をもつし、人がやっていることは人が責任をもってくれという感じなので、組織に属せる人間じゃないし上の肩書きを与えられるような人間でもなかった。あと6歳下の後輩に「人に興味もってくださいよ〜」と冗談っぽく言われたの、今でも刺さっている。

おれは「寝る前に小汚いハードコアを聴いている」とか「特定の食べ物だけを毎日ひたすら食べている」とか「旅行先で地元民も寄り付かないB級スポットを巡っている」とか、良い意味で狂っていたり、訳の分からないことを好んでやっている人に惹かれるので(自分が至って普通の人間なので)普通にテレビやネットでヒットしてる音楽を聴いて普通に食事や旅行して人生を普通に充実させている人と何を話して良いか分からないんだよな。地下芸人とかになってたら楽しい人生だったのかもしれないと、この前のネタパレに出ていたランジャタイを見ていて思いました。ランジャタイめっちゃ面白いのだけど、M-1決勝とかで見ることはないんだろうな…でもそこが良い…

お笑い賞レースよりもおれがブチ上がったのはラップスタア誕生でした。実は今まで観ていなかったのだけど、なんでこれを今まで見逃していたのだと激しく後悔している。Abemaで過去のシーズンも公開してほしい。プレミアム会員になるから。シーズン4がすげえ面白かったのはもちろん(ralphはもちろん2ndを勝ち上がった10人はみんな良かった)、突如公開されたシーズン3のファイナルステージのJosephBlackwellのライブを観て一瞬でハマってしまった。今配信されているのはライブで披露した2曲だけなんだがこれがめちゃくちゃ良いです。通勤時に「Mode in Psycho」を聴いて高まり、退勤時に「Livin' Life」を聴いてこの世に留まるエネルギーを得ている。この最高のラッパーが売れない日本の音楽シーンはやはりどうしようもないので、一回ぶっ壊すしかない。

お笑い賞レースといえば今年のThe Wはダントツに良かった。まさかのキングオブコントR-1M-1合わせた4大お笑い賞レースの中で飛び抜けて一番面白かったという。吉住優勝はまあ予想できなかった。技巧派の人たちがしっかりと評価される土壌がまさかThe Wで整えられるとは…

M-1はリアルタイムで観れなかったのがまじで悔しくて(The Wもリアルタイムで観れなかったんだけど)、絶対にこの仕事辞めてリアルタイムで観れる仕事に就くぞと決意しました。個人的にはおいでやすこがの圧勝たったんだけど、今年のM-1は見る人によって個人的優勝者が全然違うので面白いよな。10位だったけど東京ホテイソンはめっちゃ面白かったと思うんだ…

あとは今年コロナに抗うかのように喫茶店巡りをしていたのだけど、コーヒーってめちゃくちゃ高いのな。安い缶ビール3〜4本くらい買えちゃうぞ。それと煙草を吸い始めたのだけど、煙草吸って酒飲むと悶々とせず早々に眠くなるので不眠防止に役立っています。2021年も特に何の希望もないのだけど、正しく死ぬために頑張りません。さいなら。