輪るピングドラム 20話

何か3話前くらいから上限超えた面白さに突入したため別個にエントリ書かざるを得なくなった。

冠葉は夏目の子であり真砂子は実の妹だったということ、つまり陽鞠どころか晶馬と冠葉の血さえも繋がってなかったこと、そして冠葉が高倉家の両親と同じような事件を再び起こそうとしていること。どれをとっても衝撃であるが、これらの要素や今まで張られていた伏線が回収され、ばらばらだった物語の断片が次々と繋がっていくこの展開こそが何よりも衝撃だった。

勿論おれは陽鞠と晶馬の別れから邂逅までのストーリーに涙を禁じ得なかった。最近のピンドラは死ぬほど重い話の中にこういう話を混ぜてくるから卑怯。というか陽鞠の中の人って新人だったんだな。最近の新人はレベル高すぎだろ…

晶馬と陽鞠の関係性をアダムとイヴに見立てて、2人が罰を受けるという事実を我々に否が応でも受け入れさせる。「生きることは罰なんだ」という言葉が現代社会に対して殺傷能力の高い意味を持っていて、以前「生きることは死ぬその時までの暇潰し」と言ってたおれの心臓部にも突き刺さってきた。

作中で晶馬が執拗に高倉家に拘っていた理由も明らかに。つまりは、高倉家の血を継いでるのは晶馬だけってことになる。冠葉は夏目の子で陽鞠は捨て子。だからこそ過去の全ての罪を1人で背負おうとしていた。

猫の名前一つにあんな重い意味があったことも予想できず(陽鞠絶望verが命名したんだな)、選ばれずに陽の光すら浴びる事が出来ず透明な存在に堕ちかけていた陽鞠にとって晶馬は正しく太陽のような存在であっただろう。それはペンギン3号「サンちゃん」に脈々と受け継がれている。

真砂子に関しては今までの所業がもうブラコンからきてるとしか思えなくなってしまったな。いや良い意味で(キスとかしてるけどあれはそっちの意味だったか)。禁忌を犯しているのは「冠葉→陽毬」ではなくて「真砂子→冠葉」だったわけだ。

全員血が繋がっていない食卓の風景は8話で苹果が指摘した通り「家族ごっこ」に見えてしまう。まさしく苹果ちゃんの指摘通り。それを指摘された晶馬のあの怒り様から察するに、やはり陽毬を除く当人たちにもその自覚はあったんだろう。どんなことがあっても3人が食卓を囲んで朝食を取るその図こそが「家族ごっこ」の象徴であった。

記憶を消したり戻したり出来るあの玉は、KIGAの会(ピングフォース)のものだったということもわかり、つまり陽鞠の記憶は高倉家の親父である剣山が消した可能性が高い。その武器を真砂子が所持していることから、夏目家はまだKIGAの会と何らかのコンタクトを取っているかもしれないと予想できる。ちなみに記憶を消す事も運命を変えることになるので、これも運命の乗り換えとしての一つの方法ではある。

陽鞠と晶馬を繋いでいたマフラー、あれがここまでの意味を持つ事で、陽鞠が後々までマフラーに特別な思い入れを持ち、手作りのマフラーをダブルHや冠葉・晶馬にプレゼントしようとしていた意味も深くなってくる。大切に思っている人との繋がりの証を可視化した、その存在こそがマフラーであった。また、ある人から指摘を受けたんだが、「6話のタイトル「M(マフラー)でつながる私(陽鞠)とあなた(晶馬)」ということだったんだねー」と言われてビビった。なるほど、そんなに前から伏線張ってたんだな。

運命の果実をいっしょに食べよう、という晶馬の告白は、運命の果実を食べて受けた罰(生きていくこと)を一緒に受けよう、ということになり、人間の原初の2人で一緒に生きていこうと言ってるのでプロポーズ宣言に近いものがある、が晶馬には恋心のようなものが恐らくないので、プロポーズというよりはまさしく「生存戦略」を宣言したというところか。

「生存戦略」といえば、けっして男女の営みとかそういう意味ではなく、「透明な存在にならないように」、言い換えれば「選ばれし存在」になるための行為であった、ということが晶馬と陽毬の邂逅からわかる。まさしく生きるか死ぬか、文字通りの生存戦略であったわけで、それを高らかに宣言していたプリクリもまた、選ばれなかった存在であったのだろうかとも考えられる。プリクリもブロイラーに何らかの形で関わっていたのかもしれない。

陽鞠の命を過去に救ったのが晶馬、そして今現在救おうとしているのが冠葉。しかし冠葉のやり方は社会道徳的に見れば決して正しいと言えるものではなく、それに対して晶馬、あるいは陽鞠がどうするのかが今後の鍵。それによっては冠葉と晶馬が敵対することもあり得るだろう。OPの最後、冠葉と晶馬が別々の方向へ走り出していたことがそれを示唆していたのかもしれない。だって前回で、「陽毬と晶馬が同じ方向へ走っていたこと」の理由が明かされたのだから。

そして今回の最後に陽鞠がリンゴをすり潰していた描写、これが運命の果実を指しているのか、あるいは苹果ちゃんをすり潰すということなのか…苹果ちゃんをすり潰すのだとしたらそれはやっぱり晶馬奪還てことになるのかね。

剣山の所属する組織のトップはサネトシかプリクリか問題については何とも言えんな。プリクリかと思ったがあの人は単体で現実世界に顕現してないし。でもサネトシは人を束ねてる存在にも見えないしなあ。どっちかというと調整役みたいなイメージ。

いやーとにかく前々回、前回に続き今回も素晴らしかった。特に作画は今までで1番良かったんじゃないか。ED曲も力強いのに切なくて、今の陽鞠を表しているようだった。いやほんと、このアニメはどこまでいってしまうんだ。その未来に恐怖すら感じる。