2012年冬アニメ総括

未来日記が4月中盤まで放送されていたのでこのタイミングで。秋ほど豊作ではなかったにしろ、毎年飢餓に襲われている冬クールの中で今期はそこそこどころか充分いい作品に恵まれたと思う。さすがに去年には及ばないけれど。


というわけで各評。あとは3ヶ月前の予想と比較してどうだったかとか色々検討したり。

↓いつもの。

評価方法

・評価ポイントは「ストーリー」「キャラクター性」「演出」「作画」「音楽(OP・ED含む)」の5つ。各10点満点
・総合評価(ランク)は「SSS」「SS」「S」「A」「B」「C」「D」「E」「Z」とする(各説明は以下参照)

「SSS」〜生涯愛せる、墓場まで持って行きたい作品
「SS」〜アニメ作品の金字塔レベルの作品
「S」〜何度観ても面白いと思える傑作。
「A」〜傑作
「B」〜秀作
「C」〜良作
「D」〜凡作
「E」〜駄作
「Z」〜黒歴史

夏目友人帳

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ストーリー 6
キャラクター 8
演出 7
作画 9
音楽 7
総合得点 37点
総合評価 A

最終回はどちらかというと美代ちゃん側に感情移入できる話だった。実際問題血の繋がりのない子供を引き取るということは他のあらゆるものを犠牲にする行為であるし(今期の某アニメもそれを証明している)引き取り手が子持ちの場合は、その子供と引き取られた子供との折り合いを付けることが非常に困難だろう。
しかしここまで悲惨な目にあってきた夏目が道を踏み外すことなく成長しているのは普通にすごいことだと思う。塔子さんたちに引き取られてからは環境や周囲の人間含め夏目にとってとても過ごしやすかっただろうけど、それ以前まで耐えられたのは根本的に精神力の問題っぽい。
全体的に3期に比べて話の内容がバラエティ豊富で、そのぶん前編後編というフォーマットの話が多かったりしたものの、マンネリ化を防ぐという意味では効果的だった。しかし個人的には1期の路線に戻ってほしいと思ったりも。


テニスの王子様

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ストーリー 5
キャラクター 8
演出 6
作画 7
音楽 8
総合得点 34点
総合評価 C

今期究極のギャグアニメ。毎回笑ってたと思う。OPとEDも完全にギャグ。
説明不要というか説明の出来ない選手たちの謎能力とか、人類には早すぎるような修行とかあらゆる意味不明な要素をごった煮してるせいでいつ何時観てもスポーツアニメには見えないというのがアレ。まあ作者も演者もギャグアニメと認識してるようなので現状のほうが都合いいのかもしれない。


探偵オペラ ミルキィホームズ 第2幕

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ストーリー 4
キャラクター 7
演出 7
作画 7
音楽 6
総合得点 31点
総合評価 C

結局これは何のアニメだったんだろう…やっぱり農業アニメなのかな…
今まで散々ふざけてきたわりに最終回はしっかりとしていた。もうちょっとふざけてもよかったんだけどな、どうせ最終回なんだし。
IQ1400無量大数になったこころちゃんとか、メインヒロイン級の活躍をしていたアンリエッタ様とか、とにかく1期でサブ級のキャラたちの活躍が目立った2期だった。それもそのはず、当の主役たるミルキィホームズの4人が1話目から頭おかしくなっていたからである。正直若干引くレベルで頭おかしかったのがわりと後々まで響いている。
まあ予想通り最後にまたトイズ消えたので完全に3期やる気なんだろうけどどうなんだろう、GAと違ってあんま1期の成功を生かせていないんだよなあこのアニメ。
個人的にミルキィホームズの面々よりG4の面子の方が好きなのでスピンオフとしてG4主役の話作ってほしい。


キルミーベイベー

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ストーリー 3
キャラクター 7
演出 5
作画 7
音楽 8
総合得点 30点
総合評価 C

まさか原作2巻の内容をこれほどまでに上手くアニメ化するとは思わなかった。しかしなぜ最終回で化けるんだ。
ギャグアニメでありながら最後にちょっとこそばゆい友情のお話にもちこんだのは不意打ちだったけどアリだしどうせなら前々からやってほしかった。
まあこのアニメはOPに全精力つぎ込んだようなもので、中毒性と電波性は今期随一だった。あの歌が生み出されただけでもこのアニメが製作された意味は充分にある。
個人的には総合評価とか関係なく単純に好きなアニメだったので定期的に見返したい。


アマガミSS+

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ストーリー 8
キャラクター 8
演出 8
作画 6
音楽 7
総合得点 37点
総合評価 A

最終回はあらゆる女性キャラクタを温泉にぶち込んだ究極のおふざけ回。好き勝手作ってる感が溢れてて楽しめた。何か各ヒロインの橘さんに対する好感度が高めで一瞬ハーレムルートかと思ったけどそうでもないらしい。しかしキミキスの先生みたくアマガミの高橋先生の小ルート作っても良かったと思うんだが。
1期の時の補足、あるいはアフターストーリーのため各ヒロイン2話ずつという物足りなさは否めないもののその中で最大限に楽しませてくれたので評価は高い。特に通い妻展開の七咲や親友ルートから恋人ルートに持ち込んだ梨穂子など、1期視聴組のほとんどが望んでいたシナリオをやってくれたのは大きい。唯一残念なのはスト子√やらなかったことくらい。


ハイスクールD×D

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 7
作画 6
音楽 8
総合得点 36点
総合評価 B

放送当初に抱いていたイメージとはだいぶ違った作品だった。ラノベ原作というより漫画原作っぽい。
前クールのマケン姫なんかはバトル要素の必要性がわからなかったけどこのアニメはバトルありきで作られてるのでストーリーには何の違和感も抱かなかった。その戦い方に疑問はあるものの(服を剥がして勝つという謎の戦法)。
ヒロインをめぐってのバトルに勝ってハッピーエンドという王道からバトルに敗北するも結婚式場からヒロイン略奪という王道に位相をずらした最終回で結局は王道を通ることになるんだけど、最後は熱く締めてくれたことへの評価はきっちりとする。
主人公であるイッセーの目的も意思も明確だったし(こういう直球熱血バカは久しぶりに見たけど清々しくていいな)、各キャラの役割分担もしっかりなされていて全体通して見るとかなり高レベルな作品だった。最終回で続編を過剰に匂わせることなく幕引きしたのも良い。でも2期は観たいな。売上凄いらしいのでたぶんやるだろう。
そういや吉岡たかをってあんまり印象に残ってない脚本家だったんだけど、このアニメのおかげで名前覚えた。全話脚本担当と上手いシリーズ構成の功績は大きい。


戦姫絶唱シンフォギア

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ストーリー 5
キャラクター 7
演出 7
作画 6
音楽 9
総合得点 34点
総合評価 C

大人たちが真面目にB級アニメを作った、という感じで何というか微笑ましいというか、臆面もなくこんな最終回にしたその心意気には感動した。いまどき有り得ないほどのベタな王道。今まではこの真面目さがギャグっぽくなってたんだけど最後は力技に近いけど「戦姫絶唱シンフォギア」という作品のコンセプトのもと上手く纏められたと思う。
変に凝ったりせず、最後の最後まで見てるこっちが恥ずかしくなるほど古典的歌ものバトルアニメとしてのプライドを貫いたのは面白い。
しかし最後の月の欠片落とすシーンのフィーネの心境の変化はよくわからんかったなー。各キャラの心情描写がもっとほしかった。


ゼロの使い魔F

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 6
作画 7
音楽 9
総合得点 38点
総合評価 A

今まで散々「ワンパじゃねーか!」とは言ってたものの、これで本当にゼロの使い魔という物語が終わってもう二度と動くルイズたちを観られることはなくなるんだなーと思うとやっぱり寂しい。なんだかんだでこのアニメには5年以上付き合ってきたし、何より2期があれば良い方と言われるこの業界の中でよく4期も続けられたなーと思う。
世界の命運がかかった危機を前にして種族や国境を超えて連帯し協力して向かうべき巨悪(危機の根元)を倒す、という展開にして全てを丸く収めるのは古典的すぎて最近ではあまり観られなかった手法だけどやっぱやられると面白いもんで、今まで散々ふざけてきたこのアニメが普通の異世界魔法バトルアニメに見えるので効力は絶大だった。
4期から見始めたという人も多いように、いつどこから観ても楽しめるという強い普遍性を備えていて、刻々とヒロインのトレンドが変わっていく中でこの強固さはもう伝説になってもいいと思う。真新しいものは無い代わりにいつまでも古臭くならないという。
最終回で1期のOP流すのはやっぱ反則だわ、テンション上がるよねこんな事されたら。その後の死ぬ死ぬ詐欺とかも全然気にならないよな。
とにかくお手本のような最終回で、ハーレムルートに持ち込むことなく締めたのはさすがだし、ルイズの家族との諍い(恐らく説得するのに相当の時間を要したはず)をあえて描かなかったのもゼロ魔らしい潔さで良いと思う。最後にルイズを現代世界に連れてくるというぶっ飛び展開も許せる範囲だ。



偽物語

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ストーリー 5
キャラクター 9
演出 8
作画 9
音楽 8
総合得点 39点
総合評価 A

妹がいる自分にとって身につまされる思いで視聴しておりました。うちの妹が偽物だったら、あるいは不死だったらどうしよう…みたいなことを考えた途端おれに勝率0パーセントのデスゲームを叩き付けられることが容易に想像できたので怖くなってやめた。
まあ演出に関しては前作の化物語で大方のネタ消費したのかなーという感じで、看板にしろ影絵にしろストレートに意図が読み取れるものが多かった。ここら辺は好みの問題かな。
曲は前作の「君の知らない物語」を超えられないだろうなあと端から予想してたのでダメージは少なかった。「ナイショの話」は良くも悪くも端正なJ-POPという感じでもっと引き込みが欲しかった。ただOPの「白金ディスコ」は名曲。コード進行に隠された秘密とか見つけた時感動したよ。
化物語』のファンディスク的立ち位置のため必然的に前作より内容は薄くなったものの、化物語から連綿と続く物語シリーズのアイデンティティは保てていた。



BRAVE10

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ストーリー 5
キャラクター 7
演出 6
作画 5
音楽 6
総合得点 29点
総合評価 D

想像してたよりは良い最終回だった。最後の敵をイサナミに宿る闇とすることで、それを倒し乗り越えてイサナミを取り戻しアナスタシアも帰ってきたっぽいし、結果的に全てを丸く収めるという王道展開にもちこんだ。しかし半蔵は才蔵が実力で倒して欲しかったんだがなー(結局才蔵は半蔵に一度も勝てていない)。
才蔵以外の勇士たちが再び立ち上がって眼前の敵を倒すシークエンスは盛り上がるんだけどこいつら瀕死じゃなかったのかという疑問が…まあそこは勇士の隠された力が才蔵とイサナミの邂逅で発現した、みたく考えておこう。そうしよう。
もちろん政宗や家康は生きているしそもそも原作がまだ続いているらしいので勿論全てが終わったわけじゃないんだが、纏めどころとしてはここでこの展開にするのがベストだろう。ただ全体的に突出した部分がないのがもったいないアニメだった。


輪廻のラグランジェ

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ストーリー 6
キャラクター 6
演出 8
作画 6
音楽 9
総合得点 35点
総合評価 C

最終回は完全に分割2期を想定した作りだった。これ2期目なかったら謎解明されてない部分多いのでちょっと判断に困る内容なんだけど(Fate/Zeroみたいな)、戦いに一応の決着は付けたし1クール目としての役割は果たせたっぽい。姉ちゃんも生きてたし締め方も辛気臭くならず、一応はグッドエンドみたいな終わり方だった。無駄に人を殺さないアニメは信用できる。
このアニメは結構外的要因に苦しめられていたんだけど(過剰な鴨川のプッシュや聖地巡礼問題)、そういった部分を含めても充分面白かった。鴨川の過剰プッシュ、おれは鴨川行ったことなかったけどいつか行きたいなーとは思ったよ。実際に行くかはわからないけど。
まあこれは中間報告みたいなもんで、最終的な評価は夏の2期目が終わった後に下すといった感じで。


あの夏で待ってる

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 9
作画 8
音楽 8
総合得点 40点
総合評価 A

「名作」とまではいかずとも良作以上の出来だった。何より眼鏡年上という属性を備えたキャラがメインヒロイン張るアニメ自体久しぶりで嬉しすぎて涙出た。年上系キャラに不安の残る戸松もよく演ったと思う。「ずっと好きでいてね」は名演技だった、あれは戸松のベストアクトでもいいと思うマジで。
これは「感じるな考えろ」という類の作品で、誰がどんな感情を持って何のために行動しているのかを掴んでいくことが要求されるわけだが、最後はもうそんなのどうでもいい、「愛は永遠だ」的テーゼで締めくくってるのが面白かった。今まで積み重ねてきたものを軽々と飛び越えるようなフィナーレ。さすが黒田、話の整合性を多少歪めてまでもハッピーエンドに持ち込む手腕は大いに評価したい。
このアニメは現実と虚構の境界線を行ったり来たりしているのではなく、両者を結合させてるので見やすかったんだと思う。空から宇宙人が降ってきて同棲するというアニメ的展開が主導を握る中で、メガネとメガネがぶつかるシーンや映画撮影の段取りなどの現実性を感じさせる描写・演出を各所に盛り込むことで「アニメに現実を持ち込む」のではなく「アニメなのにリアルさがある」という一般評価に持ち込んだのは上手かった。ちなみにこのアニメとは逆に、「現実的展開が主導を握っているのにアニメ的要素をぶち込んだせいで整合性が取れなくなった」アニメが今期の某父性溢れる作品だったりする。


男子高校生の日常

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ストーリー 6
キャラクター 7
演出 6
作画 7
音楽 6
総合得点 32点
総合評価 C

最後まで笑わせようとする姿勢は多くのギャグアニメが見習うべきものであり最後に堂々と夢オチかます図太さもこのアニメらしくていいですね。ちゃんとタダクニの出番あったし。
取り敢えず見てて飽きることのないアニメだった。ゆるくもなくキツくもなく、肩肘張らずダラダラ見られるような開けたギャグアニメ。たまに爆笑させられることもあれば失笑することもあり、エンドカードではスタッフと視聴者の読み合い合戦が繰り広げられたり、メタネタ仕込んだりしてて、どうにも憎めないというか、「凄く良い!」と評価する人はいなさそうなんだけどアンチもいなさそう。しかし最終回の名護さんが圧倒的可愛さでどう考えても出るべきアニメを確実に間違えている。


パパのいうことを聞きなさい!

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ストーリー 1
キャラクター 3
演出 5
作画 5
音楽 6
総合得点 20点
総合評価 E

あんまコメントしたくないんだけどあれだね、キタエリのOPに救われたアニメという印象しかない。大学1年生が女子中学生・小学生・幼稚園児の3人を引き取って一人で育てるというストーリーが最初から破綻しているアニメで、これほど視聴負荷が莫大なアニメも久々だった。これがもし「女子中学生・小学生・幼稚園児の3人が空から降ってきて姉と二人で面倒見る」とか、「姉夫婦が長期旅行の間面倒見る」みたいな設定だったらストーリー問題は大分軽減されただろう。現実的なストーリーにご都合主義アニメ要素を持ち込んだから目も当てられないことになってるのであって、アットホームコメディという着眼点は悪くなかったと思う。


テルマエ・ロマエ

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ストーリー 4
キャラクター 5
演出 5
作画 5
音楽 5
総合得点 24点
総合評価 E

全3話ではやっぱり評価が難しい。現代(未来)にタイムスリップしてくるお話というのはよくあるものの、タイムスリップした経験を温泉づくりに生かす作品というのは確かに斬新だった。しかしその話の骨格が斬新であるだけで、中身には特に盛り上がりが感じられず、良くも悪くもFlashアニメっぽさの粋を出ていないなーという感じ。


妖狐×僕SS

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ストーリー 8
キャラクター 9
演出 7
作画 9
音楽 9
総合得点 42点
総合評価 A

今期最大にして最強の大穴アニメだった。最初は注目すらしてなかったのに最終的に原作全部買ってしまった。見る人を引きつける力が凄まじい作品だと思う。
最後までりりちよ様を可愛く美しく描いたことに対しては絶大に評価したい。りりちよ様とかるたちゃんに癒され、野ばらさんのメニアックさに共鳴し、いつも弄られ役にまわされる渡狸の恋路を見守り、淡白ながらも面倒見の良い一反木綿・飄々としている夏目・見た目ドS中身ドMの蜻蛉に笑わされ、変態御狐神双熾にはもっと変態になってほしいと思いつつ気付いたら12話あっという間だった。キャラクタ主導でストーリーを形作るタイプのアニメとしては久方ぶりの大成功例。
何よりこのアニメを3巻途中のハッピーエンドで終わらせたスタッフの英断には惜しみない感謝をしたい。4巻以降の話をやって2期を目指すというやり方もあったはずなのに最後は死ぬほど美しい幕引きだった。今期1番綺麗な終わり方なのは間違いない。前回と今回の二話は本当に化け物じみた出来だった。個人的に文字演出が気にかかったくらいでこれといった欠陥もなし。
これほど2期を望まないアニメは久々だ。究極といっていいほどの鬱展開にするくらいならこの幸せに包まれたまま終わらせようぜいぬぼくアニメを。


ゴクジョッ。〜極楽院女子高寮物語〜

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ストーリー 2
キャラクター 4
演出 4
作画 6
音楽 4
総合得点 20点
総合評価 E

誰得アニメだったけどまあこれより酷いのが今期2作も生まれてしまったので特に言うことはないっすね…


ブラック★ロックシューター

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ストーリー 6
キャラクター 4
演出 7
作画 7
音楽 4
総合得点 28点
総合評価 D

圧倒的に尺が足りていない。やっていること/やりたかったこと はわかる。わかるしそれをやるために土台を整えようとしていた形跡もあるんだがこれは岡田麿里が必要以上に思春期の少女が内に秘めた悩み・人間関係から生じる苦しみを痛みを伴って乗り越えようとする「姿」だけを映像としてアウトプットしようと脚本を書いた結果、ストーリーが追い付かずに捻じれてしまい異世界の存在やそれを確証づける設定がボロボロになってしまい最終的に視聴者に違和感あるいは不快感を残すことになった。
なるほど確かに男性女性問わず「主人公が何らかの困難を乗り越える姿」というのは観ていてこちら側に訴えかけてくるものが強い。まして岡田麿里という脚本家は男性に都合の良い女性キャラが溢れる昨今でそれに逆行するかのように女性の生々しい部分や現実感をアニメに取り入れるスタイルで確固たる支持を得た。しかしこのスタイルはどんな作品でも適応できるというわけではない。フラクタルなんかはまさにそれ。
このアニメは前提条件がもう現実の痛みを伴うものであり脚本はそこに沿うだけでよかったのである。過剰な味付けはいらなかった。つまりこのアニメは逆説的に岡田麿里が脚本を担当しなければもっと観やすくなったのではないかということで。


ペルソナ4

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 9
作画 6
音楽 9
総合得点 42点
総合評価 A

今年最終回を迎えた作品の中で1番喪失感がでかかった。でもこれ真エンドが別にあるらしいな…
原作がゲームのものをアニメ化する場合はこのアニメを手本にすればいいと思うほどの出来だった。ゲームやったことないけど。ただゲームのエフェクトそのまま使うのは演出として浮きやすいのであんま多用しないほうがいいかも。
ストーリーと音楽を筆頭に総じてレベル高かったんだけど、唯一作画がものすごく不安定だったのは残念だった。原作絵の再現という一点にこだわったのはわかるんだけど、多少崩してでも安定させたほうが良かったかもしれない。


灼眼のシャナIII

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ストーリー 7
キャラクター 5
演出 7
作画 5
音楽 9
総合得点 33点
総合評価 C

これだけ広げた風呂敷をよく畳めたなーという感心がでかい。終わり方も劇場版っぽくて鳥肌だった。
固有名詞が氾濫してて内容をつかむのに手間取る作品だったけどやってることはもう単なる痴話ゲンカで、その理由付けにフレイムヘイズと徒の戦いがあった、というように見えた。しかしキャラ名と固有名詞の多さと覚えづらさはやっぱりきつかった。2回観るのがデフォになってたんだけど、TV用にパッケージされた作品であればある程度改変入れるか視覚的演出なんかを活用して1回観てわからせないようにしないと視聴者が離れていく。
でもまあ長いこと付き合ってきたシャナシリーズのフィナーレとしてはこれ以上ない出来だった。



ラストエグザイル-銀翼のファム-

ラストエグザイル-銀翼のファム-

ストーリー 7
キャラクター 5
演出 8
作画 6
音楽 8
総合得点 34点
総合評価 C

うん、よくここまですっきりと纏めたな、素晴らしい。これは良いゴンゾ。
1期を超えるとまではいかなくとも1期に比肩する作品になったと思う。観続けてきてよかった。クラウスとラヴィが最後にでてきた時は不覚にも感動してしまった。8年の積み上げだよなー。
最終回は完全におれの予想通りの内容だった。グランレースで〆る。まさに平和の象徴だった。あとやっぱファムはサドリの孫だったんだな。つーかサドリさん死ぬ必要なかったのがアレ。リリアーナはまだしもヴァサントとサドリは助けてやっても良かった気がする。カイヴァーン生きてるなら尚のこと。
ルスキニアの目的は一個の共通の世界の敵を作る、という点でルルーシュに近かった。しかしこの場合はサドリだけでなく他の人物とも連携を取れた気がする。上層部、サーラは幼いから除くとしてもオーラン、ソルーシュ、ヴァサントなら事情を説明すれば被害を最小限に抑えた上で世界の仮想敵を作れたんじゃないかなーと思うのでそこらへんの設定の詰めが甘いという気はする。


未来日記

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ストーリー 7
キャラクター 9
演出 9
作画 7
音楽 8
総合得点 41点
総合評価 A

いや、いやいやいや、どういうことですか。ほぼ最後まで完璧だったじゃないですか。なのになんで残り3分で無駄なことするんですか…
いや正直、改変を施すとしたらそれは最後、3週目の世界でハッピーエンドにするしかなかったのよ。神になった雪輝の存在自体を作中で消し去って(あるいはまどかマギカのまどかのように概念として扱って)やるべきだった。実際三週目の世界の描写は素晴らしかったしここでそのまま雪輝と由乃が互いの名前を思い出して終わるという展開だったらおれは今期最高の称号を与え、円盤を買い原作崇め奉ったかもしれない。いやほんと勿体無い。ここまで捨て回ほぼゼロだったのに。
ともあれ原作の内容の取捨選択は素晴らしかったので、明らかに駄目だと思われる部分は改変しようとする覚悟さえあれば完璧だった。


ギルティクラウン

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ストーリー 1
キャラクター 1
演出 8
作画 6
音楽 3
総合得点 19点
総合評価 Z

今まで耐えに耐え「最終話で化けるんだ…」という僅かな希望に縋って22話見続けてきたわけですよ。いやしかし見事に振り払ってくれましたね。中途半端どころか俺たちの戦いはこれからだENDにすら到達していない。消化不良で吐きそうになってる視聴者が大多数だと思うんだけど。
はっきり言えば演出とオシャレ映像に頼りすぎている。視覚的刺激を追求しすぎたせいでストーリーとか中身が全く伴っていない。
集の成長物語という体裁をとるのは構わないんだけど、それなら主人公であるはずの集を全く共感できないキャラにするのは駄目だと思うのです。 このアニメのたちが悪いのは主人公はおろか他のあらゆるキャラクターにも一切共感も感情移入もできないこと。そのため全体を俯瞰する神の視点をとることになるがこのアニメは共感のできない集を中心に描いたせいで全体を見たらもう単純につまらん。
いのりがエゴイストのボーカルという設定、タイトルに掲げられた罪の王冠の所在、葬儀社の結成理由とその存在価値、ほぼ全ての設定や要素がおざなりになっている状況は監督や脚本サイドの力量不足を感じさせる。キャラをもっと減らせばまだマシになったかもしれない。
せめて大河内と吉野、監督と助監督の立場が逆だったらもうちょっと観れたものが出来たかもしれない。けどまあストーリー大筋がもうこのザマじゃ何をどう頑張っても無駄かもしれない。キャラデザや初期設定は本当に良かったのにそれを全く活かせなかった悪例として今後のアニメ制作陣がよりよい作品を作れるようになるならばこのアニメにも価値はあるかもしれない。
2010年から毎年一作ずつ黒歴史作品が出てくる最近の流れマジでやばい(しかも『Angel Beats』『BLOOD-C』『ギルティクラウン』と3作品ともオリジナル)のでオリジナル作品出すときは内容に少しの矛盾も妥協もないようにしていただきたい。まあそれが出来れば苦労しないんだろうが…


ちはやふる

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ストーリー 9
キャラクター 10
演出 9
作画 9
音楽 9
総合得点 46点
総合評価 S

とにかく近年稀に見る途轍もない出来の万人向け作品で、普段アニメを全く観ない人にも、飽きるほどアニメを見てきた人にも自信をもって勧められる作品だった。25話中一度もダレることなく半年間ひたすら突っ走ってきた体力、現実性とフィクション性を奇跡的バランスで両立しているキャラクタ、時に戦略的であり時に感情的でかるたの試合(札を取った時の3D演出良かった)と目標に向って試行錯誤しながら進み続ける様子を中心に(恋愛要素は極限まで取り除いた)ストーリー、そして原作のもつ引力を最大限に再現してて、漫画原作のアニメとしては最上級に位置する。正直言って欠点らしい欠点がまるで見当たらない。
かるた部の5人はもちろん、ライバルであり親友でもある新だったり、クイーンや他校の選手、顧問の先生など主要サブキャラからモブに近いキャラまで徹底して描かれていて、これほど緻密に作られたアニメを久し振りに見たせいか軽い眩暈が。
これほど2期を渇望されるアニメも珍しいんじゃないか。それは2期だろうが3期だろうが100期だろうが、絶対に面白さは損なわれないだろうという視聴者側の信頼があるからで、これほど愛されてること自体が幸せだよなあと、昨今の投げ捨てアニメたちを見るにつけ思う。


Another

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ストーリー 6
キャラクター 10
演出 10
作画 10
音楽 10
総合得点 46点
総合評価 S

ストーリーが漫画準拠だったら完璧だった。それだけに非常に惜しい。詳しくは別エントリにて。



◆ベストキャラクタ◆

女性

1位 りりちよ様
2位 堂島菜々子
3位 小椋由美

3位に小椋ちゃん入れるかイチカ先輩入れるかで悩んだ。


男性

1位 番長
2位 真島太一
3位 兵藤一誠

今期はいい主人公が多かった。


人間以外(特別枠)

1位 クマ

ニャンコ先生とクマとで悩んだ。


◆今期ベスト主題歌◆

OP戦姫絶唱シンフォギア OP 『Synchrogazer水樹奈々)』

安定安心。別ベクトルでキルミーOPも入れたかった。


EDちはやふる ED 『そしていま(瀬戸麻沙美)』

本編との相乗効果が一番でかかった。これも別ベクトルでキルミーダンスを入れたかった。


◆今期最高回◆

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ちはやふる 19話

悩んだ結果この話にした。実際ちはやふるはどの回を観ても名作といえるので困ったんだけどこれ。かなちゃんと机君の試合とかもう何回観ても泣きそうなので見れない。


◆今期アニメベスト3◆
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1位 ちはやふる
1位 Another

3位 ペルソナ4




今期はちはやふるとAnotherが同率1位。両者全く違う作品だったけどそれぞれ突出した部分があった。
ペルソナ4も名作だったんだけど唯一引っかかったのは真エンドをTV放送でやってくれなかったこと。もしこの内容が本編最終回より良ければもっと評価上がってたかもしれない。
全体通してみるとやっぱり粒ぞろいで超名作は見当たらないものの、丁寧な作りで最後まで視聴者を引っ張った上記3作品やいぬぼく、あの夏が良作以上の出来だった。
そして今現在もう春アニメが着々と放送されているんだけど、『氷菓』が放送され次第、各作品の1話について纏める予定です。しかし今期けっこう不作っぽいんだよなー…