TARI TARI

今期アニメの最終回の中では一番最終回らしい最終回を迎えた作品だった。全ての伏線をここまで綺麗に回収されるともう言うことがない。「TARI TARI」というギャグというか安易なタイトルがそのまま的確に物語の内容を示している。


大人が格好良い作品というのは往々にして名作だという法則があって、これも例に洩れずその枠組みに収斂されてるんだけど、大人が子供に対して諭すとかいう単純な構造ではなく、子供の考えに触れて大人が変わっていくという理想的かつ王道の構造で、廃校決定などの権力側に対する子供側の無力感を上手く払拭している。


以前指摘したように、このアニメは合唱がメインのアニメではなくて合唱を通じて主要5人の高校生活を描く学園青春ものである。ただそのように敢えて「見せない」作り方が逆に強く上記の要素を浮かび上がらせる。紗羽が海外に出発する時に田中の告白が劇半によって意図的に聞こえないようにしてる演出は本当に素晴らしくて、もしかしたらそれは実際のところ「告白」には当たらないのかもしれないし、それは5人にしかわからない事実である。ある程度の理解のいらない感覚的な部分の解釈を視聴者に委ねる、というのは余韻を作るという意味でも非常に効果的。


最終回の文化祭も紗羽との別れも良かったんだけど、やっぱり和奏が過去と折り合いをつけて前に進む話が飛び抜けて良くできていたことが印象深い。あれがあったからこそ後半の緩急もつけられたし、何よりこのアニメの主人公が和奏であったことをしっかり示すことができた。


アニメーションとして見ても作画は崩れないしカメラワークもよく考えられているし、安定のP.AWORKS品質という感じで最後まで絵に説得力があった。関口可奈美のどちらかというとニメ寄りなキャラデザも堅苦しさを出さずに功を奏した。和奏の父さんの皺とかそういう細かくてもキャラクタの個性とか立ち位置とか分かる描写をきっちり入れているのも素晴らしい。


主要5人、特に女子3人の描写がものすごくしっかりしているのに対して、男子2人の描写はわりとあっさりしてるのは恐らく意図的で、過去に囚われる和奏、現在の状況を変えようと奔走する来夏、将来に関して揺れている紗羽という、強さと同時に脆さを見せる等身大の女子高校生3人を支えるため、あるいはそれを見ている視聴者を安心させるための役割を担っていたように見えた。特にウィーンはギャグ要員として見られがちだけど、彼の存在は合唱部を突き動かす動力源になっていた。


爆発的に突き抜けた面白さがあったわけではないんだけれど、物語であったり映像であったりが最初から最後までどこまでも丁寧に作られている作品だったという印象。清々しい青春はいつか終りを迎えてしまうのが運命だが、それをわかっていても尚走り続けた高校生たちのほんの短い期間のストーリーが13話に凝縮された秀作。