銀河へキックオフ!!

「世界の何処へ行ってもサッカーは同じってことだ」


最後までサッカーアニメとしてのプライドを貫き通したアニメだった。数あるスポーツアニメの中でも真っ当にスポーツに熱中していた純度の高い作品で、恋愛や社会問題といった寄り道を一切せずにひたすらサッカーのみに打ち込んでいる、まさしくNHK枠で放送されるに相応しいアニメといえる。御都合主義だって何だって関係ないと思わせるくらいの圧倒的な力強さの脚本と演出が終始冴えていた。最終回見終わった後は1本の大作映画を見終わったような爽快感があった。

去年の春から始まって今に至るまで真っ直ぐな道のりをひたすら走り抜けてきたという印象があって、それは翔がサッカーをするためにメンバーをかき集めていた序盤から、メンバーが揃って数々の試合をこなしてきて個々のスキルが上達し、8人体制になって銀河一を目指すことを決意して世界で戦うプロの選手達を相手に試合をするまでに無駄な描写が一切なかったことによるものだと思われる。今時ここまで真面目に作られた作品なんてそうそう目にしないので一周回って新鮮さがあった。真面目だからといって堅苦しさが無いのも好感触。子供でも楽しめるようにあくまでストーリーは明快に、試合運びやキャラクタの心情描写にしっかり時間を割いてサッカーを軸にした子供たちの成長ドラマとして視聴者を熱くしてくれた。

正直クセや変な取っ掛かりが全くと言って無いのでこのアニメについて言及するのは結構難しい(時代を超えて愛される作品より時代を問わず嫌われる作品の方が語りやすかったりする)。この『銀河へキックオフ』というアニメはまさしく「友情・努力・勝利」という三本柱を有効に物語の軸に組み込んでいる非常に古典的な王道であり、2010年代を意識させるような新しさは見当たらない。しかしそれこそが逆にこのアニメの普遍性を示しているのだろうし、試合展開に手に汗握ることはあっても大筋が変な方向に進んでブレることはないという安心感がある。

このアニメの主人公はいちおう翔のはずなんだけど、実際は花島コーチを含めたプレデター全員だったということが最後に明らかになった。プロ選手たちとの試合から1年後、中学生になった8人がそれぞれ別の道を歩んでいる描写には、プロ選手たちとの試合のハーフタイムの際に虎太が言った「これが、俺たちみんなでプレーできる最後の試合なんだ」という台詞も重なって寂寥感が募った。我々視聴者はメンバーが翔1人しかいなかったまっさらなプレデターの頃を知っているだけに余計にグッとくる。

そしてやっぱり最終回が綺麗なアニメは好きだなーと再確認させられた。普通に考えればプロ選手たちとの試合終了と同時にこのアニメを終わらせることも出来たわけで、例えば虎太がシュートするあのカットで終わらせればまさしく『銀河へキックオフ』という締めになったんだろうけど、そうはしなかった。「1年後のみんな」を描くことでこのアニメはサッカーに依存するアニメではなく「サッカーによって成長していく子供たち」を描いたアニメだと自ら示してみせた。実際のところ、翔が選手を集めるところからプロ選手たちとの試合までは4ヶ月間程度しかなかったわけだが、視聴者はそれを約1年かけて見ているので非常に時間の密度が濃いと感じる。最終回ではその密度の濃さを上手く生かしていた。

個人的には玲華ちゃんの圧倒的な早さによる身体能力の向上にやや戸惑ったものの、最初の方からボールを扱うことが上手いという描写があったし、もともと脚本は現実性よりも物語性を重視してるのでそういう現実離れした部分はあんまり気にする必要がなかったと、アニメが全部終わった後に振り返ったら気付くことが出来た。サッカーを楽しむプレデターのメンバーとそれを取り巻く周囲の大人たちの織りなす物語を無心に楽しめば良いのである。某小学生のバスケアニメよりも力強く「まったく、小学生は最高だぜ!」と叫ぶことが出来そうです。子供から大人まで楽しめる素晴らしいアニメでした。