たまゆら〜もあぐれっしぶ〜 第9話 「心に灯す竹あかり、なので」

  • 今まではキャラにフォーカスした上で舞台を見せるという方式だったのに対して、今回は毎年恒例の祭りがメインということで舞台にフォーカスしてその中で生きる人々を描く、という広い視点でもって話が進むので、今まで以上に風景描写が多くなると同時に地域への密着性やその場所で物語が生まれた意味が伝わってくる。
  • 明確にトゲのあるキャラクタが初めて出てきたのがかなり意外だった。このたまゆらという世界はほとんど無菌室に近くて、人間の悪意はもちろん誰かを誤解させてしまうような言動や態度をとってしまうようなキャラクタさえ出てこないのだけど、ぽっての父親の古い友人である夏目という人物は(表面上は)厳しく見える。
  • 大雑把に言えばツンデレの範疇といえる性格だけど、わざわざそういうキャラクタにする必要性は全くないので、物語上そういうキャラにするしか無かった理由があるんだろうなと思って最後まで見続けたんだけど、残念ながら最後まで必然性は感じられなかった。せっかく頑ななまでに浮世離れした善のみが溢れる世界を構築して固めたのだから、いっそ最後の時までその世界を守り抜いてほしかった。
  • とはいえ内容自体はとても充実していた。新たに掘り起こされたぽっての父親の記憶は今までと同じように柔らかく、ぽっての抱いている父親像を膨らませるのには充分だった。大人の目線から見たぽってという視点も加わったことで物語により奥行きが生まれたし、竹明かりが今まで隠れていた夏目の内面とぽってが知らなかった父の思い出を照らし出すという二重の意味で用いられているのも綺麗なオチ。