劇場版「けいおん!」について

見てきました。火曜日の朝っぱらから。
で率直な感想としてはもう「ずっと見ていたいほど楽しめる作品」だった。いやこのクオリティで24時間あっても余裕で観れる(食事トイレ休憩挟んで)。
以降ネタバレ含みます。
1回目の視聴、そして気持ちが昂ったまま書き殴ってるので多分何言ってるかわからないと思う。自分でも良くわからない。
映画

とにかくこの『けいおん』という作品に関しては「2期で終われ」と「永遠に続け」という相反する2つの思いを抱き対峙しているので、一つ一つのコンテンツあるいは映像作品としての新作が出る度にあまり冷静な判断を下せない。
今回の映画は唯たちが受験を終え合格発表を受けてから卒業までの期間の出来事を描いた話。その中で最も大きな出来事として「卒業旅行」を盛り込んできた。

正直、ほとんどがロンドン旅行に費やされるものだとばかり思っていたので、序盤に部室でいつものようにのんびりしている軽音部員達を見て、「ああこのマイナスイオン含有してるような穏やかな空気感がいいよなあ」と思いつつ「早くロンドン行けよ!」とも思ったり。まあ結局この序盤の部室でのやりとりが最後に生きて尚且つそれに感動させられたので、早くロンドン行けとか思ってすみませんでしたと土下座する覚悟ならできている。

この映画は実質、あの大名曲「天使にふれたよ」の誕生秘話だと考えてもいいのかもしれない。唯達は卒業前に梓に何かプレゼントを渡そうと考えるも、途中から卒業旅行の話題にすり替わり、結局梓へのプレゼントが決まらないままロンドン旅行を終えかける(帰りのタクシーの中で唯が提案、そしてそれは他のメンバーたちも考えていたものだった)。そしてロンドンから帰国後、卒業式のあとの部室にて唯たちは梓に向けて「天使にふれたよ」を披露。TVではこの後あずにゃんとおれたち視聴者の涙腺直撃、というフルコースだったわけだが、映画ではそこはカットされている。アニメで補完してくれってことだろう。

個人的に『けいおん』って「何の変哲もない(女子高の)学校生活」を金ピカにするアニメだと考えていて、普通の中高生が考えて実行する「卒業旅行」というありふれたイベント、その行き先を「ロンドン」にすることで非日常性を強くした。けいおん視聴者でロンドン行ったことある人って多分そんなにいないだろうから。実際、このアニメで描かれたロンドンの街並みはポップかつファンタジックで、現実のロンドンの数倍綺麗に見えた。

空港ではしゃいだり拙い英語で現地の人と会話したり…と、普通の女子高生たちの描写もありながら、「寿司屋に入ったらいきなりステージに立たされ演奏させられる」という突然過ぎて意味不明な出来事にも柔軟に対応する、普通の女子高生とはちょっと違うぞ、と思わせる描写もあり。まあ寿司屋の件は他の日本人バンドと間違えられた、ということだったが。

ロンドン2日目には純粋に買い物をしたりなどして楽しんでいたが、最終日に日本の文化を紹介するという名目で設営されたステージに立って演奏してくれないか、と提案され、帰りの便ギリギリまで曲を演奏する放課後ティータイム。ステージに立つ前にさわ子先生が駆け付けたところは個人的にかなり気に入っているんだがこの後に更なる名シーンがあるので割愛。ここで「ごはんはおかず」は国境を超える名曲だったか…と一人納得して弾けるライブ映像を見て楽しんでいた。

ライブを終えて帰りの便に乗り、無事日本に帰国(ちなみに前述の「帰りのタクシー」については、唯たちがステージから空港に向かう際に乗ったタクシーのこと)。帰国後、出席日に集まった梓を除く放課後ティータイムの面々は、梓に贈る曲を練り始める。メロディの大本は紬が作り、そこに唯が考えた歌詞をのせる。「天使にふれたよ」の「天使」は学校の屋上で唯が言った「あずにゃんは天使なんだよ」という言葉から付けられたものだった。「天使=梓」。

そして卒業式当日、放課後ティータイムは卒業式が始まるずっと前、朝早くに集合して卒業ライブを行う。ここがほんとにもう信じられないくらい良かった。泣きそうになったのはここ。
「(さわちゃんの高校時代の担任の先生である堀込先生に)止められるので、卒業式の日の朝早くにやりなさい」とさわちゃんに言われた唯達。そして予定通り卒業ライブを行うんだけど、途中で堀込先生に気づかれて、昔と同じようにライブを止めに行こうとする。それをさわちゃんが必死に食い止めようとするも教室までたどり着かれてしまう。でも唯達のライブを扉越しに見た堀込先生が「あの頃のお前たちに比べたら可愛いもんだ」って言って止めさせない。そして他の生徒に引っ張られて教室内でライブを見る堀込先生とさわちゃん。ここだよ、この最後のライブの盛り上がりと先生たちの会話、最後に皆一つになって楽しんでる姿が今までの積み重ねと相俟って非常に涙腺の奥の奥を刺激するんだ。

そして卒業ライブを終え、梓に大名曲(何度でも言う)「天使にふれたよ」を披露。梓の拍手の後の超絶名シーンはカットされたが俺たちの頭の中には確かにその後の出来事がしっかり残っているはず。さすがにアニメの方を見ずに映画だけ見てる人はいないだろう。だからこそのカットだと思った。だってあの後の出来事全部脳内再生余裕ですから。

最後、唯・澪・紬・律の4人の歩いている足だけ映しながら会話を進めるシーンの切なさが辛い。会話は至って前向きなんだけど、「ああもうすぐ終わってしまうんだなあ」ということを否応無しに視聴者側に感じさせる。で、足だけ写しているのにどれが誰だかわかるという(笑)。

最後に唯が「あずにゃんが卒業する時はどこに行こっか?」と言っていて、「もしかして3期大学編をアニメで、あずにゃん主役卒業旅行を再び映画で見れるのか!?」と思わず期待してしまった。それならそれで物凄く嬉しいんだけど、ここでけいおんという映像作品は終わり、でも全然構わないと思う。そう思わせてくれるほどの素晴らしい出来栄えだった。今年見た映画(実写も含む)の中で圧倒的に一番面白かった。そもそも「まだまだ見ていたい」と思わせてくれた映画自体久々だった。これは絶対に円盤買わないといけないな。

最初はゆったり、中盤でふざけあって後半でしっとりと終わらせる、まさに王道パターンだが『けいおん』でそれをやられると良さが何倍にも膨れ上がって最終的には「すごいなー…」しか言えなくなる。友人4人と見たんだけど皆観終わった後茫然自失で、最初におれが「いやー、すごかったなあ」と言わなきゃみんな帰る時まで黙ってたかもしれない(笑)。ストーリーもよく考えられていたし、山田監督が述べていた「男性(人気)に媚びない作品を目指した」という意味もよく理解できた。一緒に見に行ってたうちの一人が女性(うちのバンドのVo)だったんだけど、「あれだよね、これ女の子の方がより楽しめそうだよね」って言ってたし。ロンドン旅行とか特にくるものがあったとのこと。このノリで「うちらもロンドン行こう!」とか言い出したらどうしよう…

いやでも実際これ見てるとロンドンに行きたくなってくる。ロンドンに行ってけいおん聖地巡礼なんてのもいいかもしれない。ただあの寿司屋を見つけることは出来るのだろうか…というかあれ実在するんだろうか。なんかのインタビューとかに載ってないかなそういうの。もっとこの作品の細部のディテールまで知りたい。キャストインタビューとか監督インタビューしかまだ読んでないんだよなー。

世界各国がサッカーやオリンピックに熱中するように、おれたちはけいおんを息を吸うことさえ忘れる程ただひたすらに夢中になってスクリーンに釘付けになればいい。きっとそれだけで90%は楽しめる。残りの内容量10%はこうして感想書いたり誰かと語り合ったりけいおんの楽曲を実際に演奏してみたり、そういった能動的なもので摂取できる。これは『けいおん』に限らず他の全ての作品に対しても当てはまるものなんだけど、こと『けいおん』に関してはこうした残り10%の補完行為だったり、または誰かと作品の楽しみを共有することにおける満足度が非常に高く、だからこそ現状のような「社会現象」と呼ばれるほどに成長したのだと思ってる。この楽しみが消えない限り『けいおん』はあらゆるコンテンツの頂点に君臨し続けるだろう。このアニメに関しては、ハルヒが行った「エンドレスエイト」をやってもあまり批判されないような気がする。楽しみが永遠に終わらない日常。おれたちの理想型ではないか。

色々書いてきたんだけどまだ観てない人はほんと1回でいいから観てくれ。約110分の中で究極的幸福を手にすることが出来るぞ。おれはあと今月中に2〜3回観て細かいネタとかを補完していく。半券とかはいらないからいいや。「一緒に見にいこうぜ!」という人は是非おれに連絡を。仕事がある夜じゃなければ大概行けます。