銀の匙 第三話 「八軒、豚丼と出会う」

  • この作品の中ではわりと面白いと思ってる話なのでどう料理してくるか気になってはいたんだけど、演出にかなりの力を割いた力作に仕上がっていた。駒場と八軒の関係の変化もかなり上手かったし、このアニメのピークはもしかしてここなのではという充実ぶり。コンテ切ってるのが岡村天斎だというのも本気度の高さが窺える。しかし岡村コンテは昔と比べて特徴無くなってきたな。
  • 動物をどう描くかというのはアニメの至上命題のひとつだと思うんだけど、このアニメに出てくる動物は現実に近いものからかなりデフォルメされたものまで、様々な造形の動物が揃っていて面白い。これっておそらく八軒視点で映し出された動物の姿なのだと思う。子豚と馬との描写の圧倒的な差がそれを端的に表している。
  • 動物の世界においては努力というものはまるで意味をなさず、全て才能で決まるという理不尽さに憤る八軒の心情はよく理解できる。加えて上位層から弾かれた動物は喰われるか殺されるかの二択なので見方によっては救いがない。食事という行為が命を奪うのではなく命を繋げるものだと認識出来なければ動物の世界を地獄に感じてしまう。
  • 農業、特に畜産に携わる人間は動物の命についてある程度割り切って考えられるようにならなければいけない。動物が生きるために他の動物を殺すという弱肉強食を頭ではなく体で理解するためにこの蝦夷農での学校生活が存在すると言ってもいい。彼ら生徒たちの成長とはつまり動物の生命に対する向き合い方が変わるということだ。