ハロー!!きんいろモザイク 第08話 「もうすぐ夏休み」

間違いなく自分の人生よりもきんいろモザイクのほうが内容充実していてつらいのだけど、逆に言えばきんいろモザイクを視聴している時はおれの人生が最高に充実しているということなので、やはり行き着く先は「きんいろモザイク最高!!!」だった。おれは変温動物なので夏も冬も嫌いで強いて言えば秋ぐらいが一番好きなのだが、きんいろモザイクの世界なら春夏秋冬いつでも楽しそうでよい。


以下雑感.



・海と空、一般人と金持ち

1期の頃の回想を一切挟む事なく、前年の夏休みを比較対象に挙げて今年の夏を楽しもうと熱弁する陽子。精神年齢がほぼ等しい陽子とカレンは普段なら意気投合する場面が多いが、今回は夏休みの計画をめぐって(一瞬だが)対立する。ここで注意すべきは、陽子が「海に行きたい」と言ったのに対し、カレンは「空」と言ったことだ。空とはカレンが後述したようにスカイダイビングを示している。しかし女子高生たちが夏休みに「みんなでスカイダイビングしに行こう!!!」と提案しているのは異常だ。スカイダイビングは基本的に日本だと3〜5万円かかる。大学生ならともかく、ただの女子高生にとっては大金だ。そうした金銭面の問題を一切考慮せず「スカイダイビングしよう」と言える九条カレンの財力。本来ならアリスや綾が突っ込むべき部分のはずだろう。人間は圧倒的財力を見せ付けられるとむしろそれが自然であるかのように感じてしまうのだ。



・九条カレンの愛情

九条カレンといえば天真爛漫でやや破天荒な面もありながら、久世橋先生への配慮など、実は誰よりも他人に気を遣える人間だ。そんなカレンが、ハンバーガーショップでの注文の仕方がいまいち分かっていないアリスを手助けするのではなく、茶目っ気を出して「スマイル」とアリスに言わせるように仕向けた、というのはかなり意外性のあるシークエンスだ。

「スマイル」と言うことそれ自体は(言った本人に店員を困らせようとする明確な悪意がない限り)悪いことではない。現にスマイルは一時期某マクドナルドにメニューとして載せられていた。ここではカレンが店員ではなくアリスをハメようとするのだが、前述のカレンの性格からか、アリスに対して「日本ではハンバーガーを注文するときに一緒に『スマイル』を注文するのだ」と教えるのではなく、「カレン自らが先にスマイルを注文して後に続くアリスを誘導する」という方法を採っている。アリス1人だけがスマイルを注文してしまった、という状況をさり気なく回避しているのだ。こうした一面があるからこそ、どんなに財力を振りかざしても九条カレンはアリスや忍たちに愛される。



・現実逃避、そして大宮忍の将来

こんな天国のようなきんいろモザイクの世界でも、登場人物たちは現実逃避を試みる瞬間が存在する。それが今回の期末テストであったり、成績通知書であったりする。主要5人の登場人物のうち3人、実に半数以上が学習意欲や成績に難を抱えているという現状はかなり不安ではあるが、綾やアリスが運動音痴なのに対して陽子やカレンは極めて運動に長けているため、見掛け上は上手くバランスを保っている。

こうなってくるといよいよ大宮忍の得意科目は何なんだ、という話になってくるが、1期で「2時間くらい延々と一定の速度で走っていられる」という持久力の高さを見せたり、2期第2話でプロ並みの刺繍・裁縫スキルを発揮したりしており、どう考えても学校のものさしで測れる器ではない。最終的な夢は通訳者になることらしいが、5年後に東京フルマラソンに出場していたり、自分のファッションブランドを立ち上げていても何ら不思議ではない。



・「しりとり」を行った意味

今回の話の中で、おそらく視聴者100人中99人が気になったであろう、綾が持ち掛けた唐突な「しりとり」について。

大掃除の最中、綾はごみ捨て場で陽子に会って取り乱してしまったことの恥ずかしさを紛らわすためにしりとりを持ち掛けたかのように見えるが、これは違う。なぜなら始業のベルが鳴った際、陽子が「チャイム鳴ったから」と言って教室に戻ろうとした時に、綾がそれを引き止めたからだ。恥ずかしさを紛らわすためだけのしりとりなら、チャイムという止めるための丁度いい切っ掛けを利用してそのまま止めてしまえばいい。しかし綾はチャイムが鳴ってもなお、陽子を引き止めてしりとりを続けるように迫った。ということは、このしりとりには恥ずかしさを紛らわす以外の別の目的があったことになる。

これを解く鍵になるのが第3話「あなたがとってもまぶしくて」だ。この回で綾は自分が陽子に対して素直な言葉(気持ち)を伝えられない、と悩んでおり、その根本的な問題は今に至るまで解決されていない。4話「雨にもまけず」では陽子に「ツンデレデレ」と言わせるほど素直になった一面も見られたが、それからはあまり進展がない。一番正直な気持ちは未だに心の奥に仕舞われたままだ。

さて、気持ちというのは日本語において基本的に形容詞で表される。「だるい」「つらい」「悔しい」「嬉しい」など、様々な表現があるがそれらはすべて形容詞だ。しかし、日本語にはわずかではあるが気持ちを表す「名詞」が存在する。そのうちの1つが「好き」だ。そしてしりとりという遊びには「名詞だけを繋げる」という暗黙のルールがある。「愛してる」はダメでも、「好き」なら言える。つまり綾はしりとりという大義名分を得て、自分の気持ちをここで素直に陽子に伝えようとしたのではないか、と考えられるのだ。もちろん、実際にしりとりで綾は「好き」とは言っていない。陽子が「す」で終わる言葉を出さなかったからというのもあるが、それを言ってしまえばこの関係性が、ひいてはきんいろモザイクという世界が崩れてしまうから、綾は好きとは言えなかった。だからその一歩手前、「好き」を示唆する言葉、すなわち「ときめき」を陽子に向かって伝えたのだ。だが、もしも陽子が、「す」で終わる言葉を口にしていたらーー。そう考えずにはいられないのである。



・結論

今回は無いです。しりとりが全てでした。