THE IDOLM@STER

アニメが始まる前までは「アイマス?なにそれ美味しいの?」状態だった人間(おれ)が今信じられないほどアイマスにハマっている事から考えてもこのアニメは名作認定していいと思う。2011年度トップクラスで、王道のアイドルものだけどとても良く出来た作品だった。

最終回にしておれが最初の「アイマス?」状態からなぜここまで好きになってしまったのか、自分の中で納得の行く答えを出せた話だった。キャラクタ造形は勿論、ライブや私生活を通して見えてくる内面、そして至る所から感じられるこのアニメに対するスタッフの愛。何よりこれだけメインキャラクタがいるにもかかわらず、誰一人として埋もれさせること無く最後まで突っ走ったことはもう奇跡に近く、近年の「キャラ多すぎて誰が誰だか〜」状態のアニメたちに鉄槌を下したと思っている。

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事前から大々的に予告されていたライブ描写は思ったより短かったけど、それがもう魂搾り出しててアニメーター何人か死んでるんじゃないのかってくらい完成度高かった。観客席のカットがあるにも関わらず自分もそのライブ会場の中にいるような感覚。「READY!!」と「CHANGE!!!!」の繋ぎ方が尋常じゃなく上手い(コード同じだったのはこのためか)。もはや一つの曲として聞ける。

りっちゃんを最後にステージに立たせたことによっておれの評価は無条件に5倍増しであることは言うまでもあるまい。ライブでアイドルとして踊っている姿は描かれなかったものの、このステージに立ったというその事実だけで充分である。これに関してはスタッフに対して死ぬほど感謝しなければならないな…

雪歩、伊織、真あたりは最初ちょっと苦手だなーと思っていたんだけど(今思うとあの頃のおれはどうかしていたんだ)、最後にはもう「みんなまとめてプロデュースしたい!」とか思い始めたのでその内ゲームやってるかもしれない。これだけキャラ多いのにみんな好きになれるとかひたすらにすごい。

あと最終回としては喪失感を抱かせないカラッとした終わり方でとても清々しかった。2クールもののアニメで観終わった後に喪失感がほとんどないってのは久しぶりの体験だった。その上何度見ても楽しめるしもう言うこと無いですよ。ちなみに現時点で最終回7回観てます。まったくどうかしてるぜ。

「いつまでも、どこまでも」と同時に流れる回想から再びライブへと戻る映像でまた落涙しライブ終わったときには素で拍手しちまった。アンコールも聴きたかったくらいだ。これが1時間SPだったらどんなに良かったか。
締め方もツボすぎて辛い。桜ってのはやっぱり最後にもってくると映えるなー。

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そしてこのアニメのメインキャラは春香と美希だったんだということに2,3話前からようやく気付いた。春香はみんなのリーダー的存在であり美希は誰よりもアイドル的な資質を持った存在だった。

春香はメインのわりにアニメ前半では目立った活躍がなくて「あれ、この子メインじゃないのか」と疑問に思ってたんだけど、11話で一気に惹き込まれた。千早の家で2人で食事を取っているシーンは至高。「たまに自分でご飯を作っている」という千早の嘘(嘘と言うよりは春香を心配させないための思いやりか)をすぐに見破って一緒に料理を作る。深くは追求しないけど千早のことを心配してる春香さんマジ聖女…とか言ってたら20話のあれですよ。仕事仲間とかじゃなく1人の友人として千早を救いだそうとする姿がもう…

そして24話最終回前、プロデューサーの事故やライブ練習ができないことが重なってダークサイドに堕ちつつあった春香は自分の力で再び歩み始めることが出来た。これが他のアイドルたちと決定的に違う所で、他のアイドルたち、例えばあの美希でさえプロデューサーの後押しを受けて全力で仕事やライブをしようと決意したのに、春香だけは仲間の力を借りることはなかった(ジュピターさんたちと話したのは別として)。過去の自分を回想し再び立ち上がった。まあ結果的に春香の今までの行動(みんなでスケジュールあわせてライブ練習する)は正しかったからどうしても腑に落ちない人はいるだろうけど。

美希は前述のとおりアイドルらしからぬマイペースぶりで他人巻き込み型なんだけど、アニメ後半ではそれが皆のモチベーションを上げる方向に作用していた。前半でプロデューサーに諭されたこともあり「自ら努力して光り輝く」という、アイドルを続けていく上での目標も見つけてもう迷うことは何もなかったからだろう。だから後半では一番「アイドル」を意識していた存在だったと言える。

出番が比較的少なかった響はムードメーカーでもあり調整役としてもよく動いていたし(何より動物好きに悪い人はいない)、雪歩と千早は視聴者が最初から今までの成長を感じられるキャラクタとして、最後は力強く描かれていた。

雪歩の男嫌いは直ったかどうかはともかく、それに伴った自信の無さは完全に克服していた。アニメ前半で主役回を終えたものの要所でしっかりと活躍し、苦手だった踊りも練習を重ね、23話ではその努力がついに実り自身がセンターに立つライブを完璧にやりきった。この回はプロデューサー転落のインパクトでかすぎてその他のことは記憶に残ってない人も多いかもしれないが、おれは密かにここの雪歩のライブ終わりの「完璧に出来たよ!」って言って泣いてる所で泣いてた。

千早も長い時間をかけて家族のしがらみを乗り越え、純粋に「歌を歌いたい」という初心に回帰し20話で視聴者の目から水分を奪った、もとい感動の嵐を生んだことは記憶に新しい。千早は常に「暗いなー」というイメージだったんだけど、全てがこの回のためのフリだったと分かった途端に全てに納得がいった。カタルシスが尋常じゃないよね。そのぶん最終回のライブで千早が笑顔で歌ってるカットはぐっときた。

あずささんや貴音は一歩引いたところからみんなを見守る「集団の中での大人」的存在だった。それでもどこか抜けているところのある彼女たちを、普段どちらかといえば見守られる側にいた亜美真美や伊織がときおり助けてあげる、といった関係性。

でも伊織はちょっと特殊で、同年代のやよいなんかには「見守る側」という立ち位置で接している感じ。年齢のわりに思考は大人びているというか。まあ育った環境とかが影響しているんだろうけど、誰かが危機に瀕している時に一番「どうすればいいのか」と悩んでいるような気がした。そんな描写はあんまりないんだけど。

亜美真美は基本的にギャグ要員で素晴らしい働きを見せていた。シリアスめな話の流れになったりしても暗くならないのは偏に彼女たちのおかげだろう。亜美だけが竜宮小町に選ばれた時、普通のアニメなら姉妹での確執とかそういったものを描こうとするんだけど、このアニメではそんな不毛なことは描かなかった。だって亜美が選ばれて真美が真っ先に考えたことが「一緒にいる時間が少なくなる」なんだぜ。仲よすぎだろこの双子ちゃん。

あずささんは唯一プロデューサーが「さん」づけしている765プロ最年長アイドル。ある意味マイペースな美希よりも何を考えてるかわかんないような人で、その個性を活かした8話のドタバタ劇はとても楽しめた。普段はのほほんとしていても竜宮小町でキレのある踊りを見せたりと意外にも多才で、最後までこのアニメで唯一読めなかった人。

貴音もあずささんとはまた違ったベクトルで「何考えてるかわからない」人なんだけど、彼女の場合はその要素をギャグ方面で発揮していた。大食いだったり「正体は宇宙人」という噂だったり。貴音主役回ではその普段の役割であるギャグ方面から外してゴシップ系にもっていったものの、人柄が影響してかシリアスにもならず丸く収めることが出来た。765プロのアイドルの中では最年長のあずささんよりも「皆のお姉さん役」として頑張っていたように見えた。特に踊りについて行けなくて落ち込んでいた雪歩を励ます場面とか。

真は美希とはまた違った形でしっかりした意思を持っていて、そのぶん他キャラと絡むと衝突したり意見が違ったりということがあったけど、それを解決していくことで765プロのアイドルたちが結果としてより強く結びついた。だからこそ主役回では他のアイドルと絡ませたら衝突しがちな真の性格を考慮し、他のアイドルたちとの絡みをほとんど絶っていた。錦織監督は真好きとのことなので、真回をシリアスにさせたくなかったんだろう。

やよいは765プロのマスコットアイドル的存在であり、いつどこにいてもキャラが立ってるという天性のアイドルとしての素質はあった。その点は美希と似ている。だが同時に貧乏設定という苦労人でもあり、家族の大切さを知っているから他のアイドルたちに対しても誰よりも思いやりがある。7話では不覚にも泣かされたよ。そのあと畳み掛けるように10話の運動会でも泣かされたのでおれは一番やよいに泣かされている可能性があるな…

律ちゃんはどちらかといえばプロデューサーや小鳥さん側の立ち位置の人なんだけれど、過去の自身のアイドル経験を活かしてアドバイスしたり竜宮小町をプロデュースする重要な役目を担う。そして自らがステージに立ったことで、過去のアイドルだった頃の自分を受け入れ、糧にして精神的に成長した点では765プロのアイドル寄りであるとも言える。まあつまりは一番ニュートラルかつオールラウンダーなんだよね。そこがいい。

小鳥さんは前に言ったとおり、冬のライフスタイルがおれと酷似しているので妙な共感を覚えている。最後のライブ終わりに小鳥さんが泣いてた時おれも泣いた。小鳥さん主役のOVAが出たら買っちゃう。

他にも765プロの社長やそれと対を成す黒井社長、そして961プロのアイドルであるジュピター。最後に彼らが961プロから独立してライブを自分たちの力で成功させてるのを見たときには765プロアイドルたちのライブを見た時とはまた違った感動があった。本当にいい奴らだったなあ。嫌いになる要素なんてないじゃないか。

こうした様々な個性を持ったキャラクタたちを独立して活躍させるのではなく、周囲の様々な人達と絡ませることによって結果的にキャラクタ個人を立たせていたのがアイマスで一番評価されるべきでありファンに愛される点だろう。アイドルたちは一人で頑張っているのではなくて、仲間と痛みを共有したり、互いに高めあったりすることで舞台上で光っていられる。

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アイドルというのは「なりたくてなる」存在であり、やめようと思えばやめることだって出来る。現に千早はやめようとした。しかし結局舞台上に戻って歌を歌った。これはもちろんアイドルが束縛的意味を持っていたということではなくて「歌いたいから戻ってきた」という、どこまでも自分の意志によるもので。現実のアイドルは束縛性が強い、という印象があるけれど、このアニメのアイドルたちはみんな自分の意志で動いているように見えた。

キャラクタに命を吹き込む、というのはつまりそういうことなのかもしれない。誰かが愛しいと思ったキャラクタにはその時点で命が宿っているんじゃないか。制作側がストーリーや設定に束縛されていないキャラクタを生み出し生き生きと描いて、それを視聴者が見て「俺の嫁」なり「カッコ良い」なりまあ何でもいいんだけど、そういうレスポンスを返すことでキャラクタ達は作り手側と受け手側、両者からの愛情を貰い、作品という枠に囚われること無くやがては1人の「人間」として認識される。それこそがまさに「キャラクタが生きている」瞬間ではなかろうか。

アイマスではまさにそういった「生きている」キャラクタを何度も何度も目にすることができ、結果的に多くの視聴者がすべてのキャラクタを愛するまでに至った。「1番好きなキャラ」はそれぞれ違えども、アイマスに出てきたキャラクタはみな作り手側にも受け手側にも愛されていたはずだ。

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アニメは終わってしまったがキャラクタたちは多くの視聴者の心のなかに残るだろうし、「生きているキャラクタ」とはそういうものだとも思っている。作品の旬とか関係なく自分の心のなかに住んでいる存在。
アイマスは原作がゲームであるため、これからゲーム未プレイだった人達が多く参入するだろう。おれもやりたい。
そしてゲームをプレイすることで再びアイドルマスターのキャラクタに会うことが出来る。コミックス化とかもされているんで、765プロのアイドルたちとは様々な世界線で出会えるだろう。だからアイマスは終わらないんだ。

本当は各キャラごとにもっと思いの丈を書こうかとも思ったんだけど物凄く長くなりそうなので止めた。りっちゃん、春香、美希、雪歩、千早あたりについてはほんともう言いたいことが多すぎたんでまたいつか書くかもしれない。
りっちゃんと美希は最初の方からすでにストップ高なんだけど、個人的に一番驚いているのは初見時からの自分の中での春香、雪歩、千早の株の上がりようで。そういえば12月24日(エントリ作成日)は雪歩の誕生日だった。おめでとさんです。

雪歩

無理かもしれないがおれはアニメ版アイマスの続編をいつまでも望み続ける。スタッフ変えずにこの流れを汲んでまたこのアイドルたちの活躍を見たい。というかこのアニメ、1年かけてやってても良かったような気さえする。そう思えるほどに素晴らしいアニメ作品だった。

キャスト、スタッフの皆さん半年間お疲れ様でした。また何らかの形で動く765プロのアイドルたちに会えることを期待しています。