劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-

見てきました。この時期に見れば人も少ないだろう…と高をくくっていたらまさかの満員御礼。そのうえ見渡す限り観客は女性ばかり。席が真ん中ということもあり、四方を女性に囲まれての鑑賞となりました。まさに擬似ハーレム。
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この「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」は最初、1クール目から2クール目までの間の約9ヶ月の空白の期間のことについて描くのかと思っていたんだけど、蓋を開けてみたらタイガーとバーナビーが出会ってからの初期の段階についてしか触れていなかった。おれはそのことを事前に知らなかったので「あれいつジェイク倒した後の話につながるのかな…」と思っていたら映画が終わったという。まあでも「あれ、もう終わったの?」という具合で体感時間が物凄く短い映画だった。この圧倒的満足感に支配される体感時間の短さはTVシリーズのときから何ら変わっていなくて、そこは安心していい。


そして何よりTVから劇場にフィールドを移したことで、TIGER & BUNNYは燃えて笑って泣ける極上のエンターテイメントに近付いたといった感じで、やっぱり脚本や構成はところどころ荒いんだけどそれを補って余りある戦闘のスケールの大きさ、ヒーロー達が都市を縦横無尽に駆け巡る迫力、キャラクタから(特に虎徹から)臭いほどに溢れ出る人間味がたまらなく好き、TVシリーズを好んで見ていた人ならば何の問題もなく楽しめる内容となっている。


基本的にストーリーは王道中の王道、今までTVシリーズでやってきたこととほとんど変わりなく、悪事を働く能力者をヒーロー達が捕まえるという構図なんだけど、TVシリーズ以上に虎徹が「冴えない駄目なおっさん」として描かれていたのは興味深かった。TVシリーズを通して虎徹はまさしくヒーローたる風格を身につけていて、それを踏襲したうえで劇場アニメを制作すると思っていたので、ここにきて一旦虎徹のイメージを分解してきたのは来年の秋に放映予定の劇場版タイバニ第2弾のことを意識してるのかな、と感じた。あるいは初めてタイバニに触れる人への配慮か。


ただそんな映画本編の中で、虎徹が1人家路につく途中で妻との記憶を回想するシーンがあって、これが凄まじい唐突な挿入だったんだけど挿入歌(Rihwa「約束」)と相まって本編中で一番泣かせるシーンになっている。このアニメは「ヒーロー」としての虎徹と「父親」としての虎徹の両面を上手く描いていて(だからこそTVアニメ17話でおれは完全に術中に陥り泣かされたわけだが)、それが虎徹の人間味をよりリアルに浮かび上がらせている。ヒーローという超人的な存在である前に1人の人間だという、非常に共感しやすい存在。


一方でバーナビーは非常にとっつきにくく愛想の悪いキャラとして描かれていて、正直「TVアニメではこんな嫌味な奴じゃなかったような…」とか思いつつも最後にはやることしっかりやっていて、こういう憎めなさがバニーちゃんの魅力だったなーと再確認したり。あとブルーローズの出番が予想外に多かったり(なぜかTVアニメの時より色気が増していた)、牛角さんと折紙サイクロンがほとんど活躍できてなかったり。ドラゴンキッドちゃんは安定の可愛さでネイサンは相変わらずの存在感。スカイハイさんがアホの人みたいに描写されてたのだけが唯一納得いかなかったけど「ありがとう、そしてありがとう」とか色々聞けたので良しとしよう。


TVアニメの後日談ではないのでそこまで新鮮さは得られなかったが、「また虎徹たちに会えた」という懐かしさで満足できた。あと劇場版ということでサンライズの気合の入れようも凄く、TVアニメシリーズを遥かに超える圧倒的迫力の戦闘を最大限に楽しめた。取り敢えず来年の新作も観に行きます。