2015年春期アニメ初回雑感

なぜこれほどまでに遅れたのか、勘の良い人間なら大体の見当がついていることと思うが、おれはひたすら『ハロー!! きんいろモザイク』を視聴していたので他の作品を視聴する時間が無かったのである。1話につき最低5回は視聴するという1期からのスタンスを崩さなかったこともあり、とにかく他のことをする時間がなかった。で、先週出張から帰ってきてから今まで観てなかったものをざっと視聴した感想を今までと同じ形式かつ今までの0.5倍の長さでリリースします。



レーカン!

物凄くテンポが悪いんだけどめちゃくちゃつまらないというわけでもなく、ギリギリのラインで最後まで見ていられる、という不思議なタイプのアニメで、もしかしたらおれはこのアニメを視聴するよう霊に仕向けられているのかもしれない。このアニメを見ることによって得られるのが似非霊感ぐらいなので、仏壇の近くで坐禅を組みながら視聴するのが最適だと判断した。


やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

1期の頃からこの作品はマッサージみたいな、最初は痛いけどそれがやがて快感に変わっていくみたいな中毒性を持っている。別に自分の青春と重なる部分はないのに、まるで学生時代の追体験をしているような感覚に陥り、必要以上に登場人物、特に比企谷八幡へ強く感情移入させてしまう引力がある。戸塚みたいなあらゆる女性を抑えて圧倒的ヒロイン力を発揮する男などこの世にいるわけもないのだが、戸部みたいなノリだけで生きているような人間や由比ヶ浜のような意図せずオタサーの姫になってしまいそうな天然系の人間はわりと現実に存在してるので、上手いこと虚構と現実の間を縫っているなと常々感心させられる。

トリ頭なので1期の内容の半分近くを忘れているのけど、話が進んでいくうちに雑念を忘れさせる引き込み具合は以前と変わらない。ただ修学旅行らしい修学旅行ではないというか、「ザ・イベント!!!」みたいな感じの非日常的っぽさがなく、良い意味で淡白、日常の延長上にあるような冷静な旅行だったのが新鮮で、中学の修学旅行の行き先が昔おれが住んでいた場所だと決まった時のガッカリ感などを思い出した。高校の修学旅行は海外に行けて楽しかったな。高校の時の面子でもう一度海外旅行したいだけの人生だった。


魔法少女リリカルなのはViVid

大変まずいことに今までの内容をほとんど覚えていない。しかし見ているうちに「ああそういやこんなだったなー」と思い出してきた。なのは23歳という事実に時の移ろいを感じ涙を禁じ得ないのだけど(同い年と考えるだけで泣ける)、それ以上に1話目なのに作画が全然安定していないことのほうが悲しくなった。大丈夫なのかな。

しかしまあ「なのは派とフェイト派の大戦争!!!」とかやっていた頃が懐かしく感じられるし、両者とも結婚して子持ちになったこの状態なら戦争は起こらないだろうな、という安心感と、ああいう熱量の高い戦争を見たいんだよ、という残念感が。だがそうした感情の渦は「水橋かおりが主役」というただ一点によりどうでもよくなる。石原夏織水橋かおりの役所を次々奪っていってから3年。ようやく、再び、水橋かおりが主役、主人公を演じているという事実だけで飯3杯食える。生きてて良かった。こういうことがあるからおれは生きているのだ。


長門有希ちゃんの消失

5分アニメだと思って油断していたら30分あったので脳味噌が爆発した。『ハルヒ』自体は凄く好きなんだけどこれはそんな好きじゃない、というか長門キョンの性格が本家と違うのでハルヒシリーズのキャラを借りた別作品だと認識している。それならわざわざ視聴する必要はない気がするのだけど、数少ない朝比奈みくるさんの出番を見逃さないために視聴を継続することを改めて決意するのであった。


ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

タイトルが長いアニメはまず間違いなくライトノベル原作アニメ、という偏見があるのだけど実際に8割がた当たっているので仕方ない。それはともかくキャラデザがヤスダスズヒトっぽいなと思ったらヤスダスズヒトだった。デュラララに続いて今年はよくヤスダスズヒトの絵を見るな。

序盤の段階では『勇しぶ』に近いタイプのアニメなのかなと思っていたら中盤から一気に変わった。1話目でいきなり主人公に挫折を経験させるのは賭けに近いが、神様ことヘスティアという圧倒的ポジティブ感溢れるキャラクタのおかげで不必要に重くならずに済んでいる。これアイズ・ヴァレンシュタインが勝利確定の話なのかと思ったらそんなことはないらしく、むしろこのまま神様がメインヒロインのほうが収まり良いんじゃないの、という感じだった。作画はかなり良いのであとはストーリーだ。


食戟のソーマ

原作1巻からずっと買って読んでいるタイプの視聴者なので、アニメ自体には期待も不安もあったのだけど、いざ蓋を開けてみると完璧に原作のtosh絵を再現していて腰を抜かした。前から凄い凄いとは言っていたけど、こうして改めて見ると下谷智之凄すぎるとしか言いようがない。今一番漫画原作アニメのキャラデザを担当してほしいアニメーターだ。

あとJCのエロ方面における無尽蔵のパワーが発揮されているのが面白かった。料理を食べた時のリアクションなんかは前期の幸腹グラフィティに通じるものもあるが、それよりおれは『焼きたて!じゃパン』に近いセンスを感じとった。じゃパンはリアクションをギャグに昇華したが、こちらは少年漫画の王道をいく熱血さがメインなので上手く棲み分けができている。

物語自体はまだほんの序の口だが、原作読者もアニメから入った人間も満足できる良い導入だったのでは。出来れば2クールくらいじっくりやってほしいのだけど、この枠だと1クールが限界なのかな。


ジュエルペット マジカルチェンジ

小澤亜李という才能の塊がついに子供向けアニメの主人公を演じていることに感動してしまって本編の内容がほとんど頭に入ってこなかった。ので2回見た。で、2回見るとこのアニメの異常性がよく分かってくる。しかも皆、それが自然であるかのような異常さなのだ。怖い。ただただ怖い。怖いのにひたすらに女児向けにカスタマイズされた大衆性があって、そういえばアイカツとかプリパラも最初はこんな感じだったよな、と懐かしくなった。ということはつまり、このアニメがアイカツやプリパラのように化ける可能性も大いにある。ようやくジュエルペットシリーズに希望が見えてきた。まず「ルビーが女の子になる」という時点で明らかに他のシリーズとは全く違う。ジュエルペットジュエルペットであるからこそマスコット的人気を博していたのに、それをかなぐり捨ててまで「ジュエルペットを女の子に変身させる」という道を選んだ。その結果、世界観も設定も物語もキャラクタも、何もかもが狂い出した。

しかし全てが狂っているからこそ、全てがまともであるように感じられる。全てが嘘で塗り固められた世界は時として全てが本当のことだけで構築された世界よりも現実性を帯びる。マジカルチェンジは今までのシリーズのどの作品よりも哲学的で、異質で、ポップで、ひたすらに恐ろしい。そしてこういうアニメが往々にして天下を取る。この段階でここまで持ち上げるのは早計かもしれないが、今まで話題にはならなかったものの良作が多かったジュエルペットシリーズなだけに、この新シリーズには期待せずにいられないのだ。


電波教師

もうアニメが始まる前、原作の時点で「ああこれはおれが苦手なタイプのやつだ」と思っていたので予想は出来ていたのだけど、アニメとなると思った以上にダメージが大きかった。言葉にならない、このあらゆるカルマを背負った圧倒的な闇が具現化したような恐ろしさ。別にこの作品が世間の偏見を助長するとかそういうことを言う気はないのだけど、何というか「オタク」という人種は今や多様化しているにもかかわらず、「オタク」をテーマに据えたアニメやライトノベルはなぜこうもステレオタイプのオタクしか用意できないのか。

開始8分の段階で「うえーおえーつらいよーつらいよー」とのたうち回っていたのだけど、こういう作品に耐えられる人間というのはどんな精神鍛錬を積んだのだろう。今期はサンデー枠のアニメが土曜夕方5時半に被っているのだけど、どう考えても『電波教師』より『境界のRINNE』を取るだろ…


境界のRINNE

高橋留美子の最新作といえば犬夜叉!!!!!」という認識で止まっているオールドマンなので凄く懐かしく、凄く新鮮な気持ちで視聴できた。高橋留美子作品、飛び抜けて面白いわけでもないんだけど、雰囲気を作るのが物凄く上手いのでいつの間にかハマってしまう。経験を積み重ねたベテランの為せる技である。あと犬夜叉もそうなんだけどアニメの方がテンポ良くて面白く感じる。なのでこのアニメ自体にはかなり期待していた。

結果的に本編も最高だし音楽も最高だった。『さばげぶっ!』の系譜を継いだ玄田哲章のナレーションも相変わらず濃くて味わい深いし、常に冷静な目線・態度で主人公たちに突っ込むヒロインも良かった。テンションの高低差がはっきりしているストーリーなので気楽に見られる。それでいてただのギャグ作品には収まらないスケール感もある。

こうした物語自体の良さはもちろんのことだが、このアニメはとにかく劇伴や主題歌などの音楽方面が非常に良い。特にOP曲担当のKEYTALKはファーストアルバムがめっちゃ良かったのにセカンドは全然ダメ、という典型的な右肩下がりだったのだけど、ここにきてすげえ良い曲作ってきて驚いた。まあ2013年の時点でおれは「KEYTALKがアニメ主題歌担当したら絶対にハネる」と言っていたので先見の明はまだ死んでなかった。ED曲担当のパスピエもKEYTALK同様、セカンドで沈んでいったのだけど、この曲はファーストの時のような勢いとポップさを兼ね備えていて最高だった。


終わりのセラフ

ちょっと青エクっぽいなという第一印象があって情報を仕入れたところ、あの伝勇伝こと『伝説の勇者の伝説』でお馴染みの鏡貴也が原作担当している漫画だと分かり、『伝勇伝』になれるか『黒ウサギ』になれるかが勝負の分かれ目だなーと勝手に考えるなどした。青エクのことは頭から吹っ飛んだ。

で、導入としてはこれが中々良かった。地獄からの脱出を図る際の緊張感。予想通りとはいえ脱出に失敗して脱出を図った子供達が次々殺されていくダークな展開と、それを支えられる強固な世界観が強烈に印象に残った。作画も良いしシナリオ自体も悪くないので、この方向性で進めばかなり良いところまで到達できそうだ。


ハイスクールD×D Born

まさかこのアニメが3期まで続くとは誰が考えただろう。ここまで来たらもうやりたい放題やってほしい。1期も2期も良かっただけにこの3期にも期待しているのだけど、もうそろそろネタ切れなのではという感じもしている。

エロとバトルを両立させようとした作品は太古より大量に存在するわけだが、同時に大量の作品がその名を広く知らしめることもないまま葬り去られることとなった。しかしこの『ハイスクールD×D』はひたすらに欲望を詰め込んでいることがひしひしと伝わってきて、その欲望の中に「熱い戦闘」が入っていたからこうなった、みたいなエモーショナルさがあってよい。やっていることは半分以上下らないのになぜか面白い、こういうアニメが1クールに1つは必要なのだ。


ガンスリンガー ストラトス

原案が虚淵玄なのでかなり構えて見てたのだけど、中盤から急に唐突な展開の連続でおいおい導入がこんな雑でいいのかよーと思ってたら虚淵はアニメの方には関わっていないようだ。それなら仕方ないな。しかしA-1制作のわりに作画が不安定なのだけど、このアニメには力を入れてないのだろうか。一番良かったのが梅津が担当しているEDというのが笑えないので本編のほうで本気出してほしい。


プラスティック・メモリーズ

なんか昭和歌謡曲でこんなタイトルの歌あったような気がするんだけど思い出せない。Winkとかが歌ってそうなタイトルなんだけど。それはともかく最近絶好調の動画工房が手掛けているだけあって作画は非常によろしい。情報を仕入れぬまま視聴したので最初は日常系の延長線上にあるアニメかと思ったら、どうやら『未確認で進行形』の系譜を継ぐハートフルラブコメっぽい。ただおれが現段階で言いたいのは卑怯だということに尽きる。これだけお膳立てされればだいたいの人間は心突き動かされるわけだ。

人間と機械の恋愛みたいなテーマってもう使い古されていて、それゆえこのアニメのストーリー自体に目新しさはない。ないけど問題ないのだ。久野美咲は天才だったし作画は神がかっていた。それだけで充分だった。キャラデザや背景美術、演出といったアニメーション的な要素で上手く現代的なアップデートを施しているという感じ。今期のダークホースだった。


うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレボリューションズ

世の中の動向に流されることなく、しっかりと己の責務を果たしている。もう全ての登場人物(男)たちの一挙手一投足が笑えるという次元に到達してしまった。ここまで突き抜けたギャグアニメは神々しさを帯びてくるのだと分かるし、何よりみんな楽しそうなのが良い。やっぱりギャグアニメは楽しくないといけない。


てさぐれ!部活もの すぴんおふ プルプルんシャルムと遊ぼう

普通のアニメと同じ30分枠になったせいで凄まじくだるくなった。『gdgd妖精s』『直球表題ロボットアニメ』も15分だから良さを最大限に発揮できたわけで、30分もやってしまうと必然的に中弛みする。スピンオフ+他アニメのコラボという形なんだけど、この「他アニメ」がこの世にまだ存在していないアニメという時点でそのやばさが窺い知れる。嗚呼、『てーきゅう』が恋しい。


血界戦線

去年からバンプの猛攻が止まらない。出す曲出す曲全てが素晴らしい。『ユグドラシル』がリリース期の頃のバンプに抱いていたワクワク感がここに来て戻ってきたことにひたすら感動している。藤原基央が凄いのはアニメだろうがドラマだろうが映画だろうが、どんな作品の主題歌を任されても己の個性を殺すことなく作品に寄せるその絶妙なバランス感覚だ。ユニゾンのEDも素晴らしい。

アニメ自体は『京騒戯画』の松本理恵が監督という時点であまり期待はしていなかったのだけど(アニメーションとしてのスタイリッシュさを追い求めるあまり肝心の内容を置き去りにしてしまう監督なので)、まあ予想通りそんな感じのものが出来上がっていた。スタイリッシュさ(クールさ)と内容の充実度は同時に満たせるものだと『スペースダンディ』が証明してくれたのだから頑張れよとしか言えねえ。まあでも中村豊の戦闘作画は相変わらずめちゃくちゃ良かったので、それを見られただけでも良しとしよう…


アルスラーン戦記

面白いなーほんと面白いなーと思っていたらあっという間に終わってしまった。荒川弘の絵は『鋼の錬金術師』からずっとそうなんだけど、少年漫画的でありながら汗臭さを感じさせない、それでいてどこか上品な質感を兼ね備えているのでどんな物語にもフィットするのだ。アニメのキャラデザもそういう部分をしっかり生かしているので良いアニメ化だと言えるのでは。

前クールの『暁のヨナ』っぽさもあって、あれは少女漫画のフォーマットに当てはめられた世界だったのだけど、これはもう何にも加工せずそのまま直で提供されていて、この懐かしさと新鮮さがほしかったのだな、と再確認できた。今の導入の段階でかなり面白いので原作を買おうと思います。


SHOW BY ROCK!!

思っていたよりずっと女児向けアニメっぽくて、なぜこれを早朝にやらないのかという疑問が湧いたのだけど(サンリオががっつり絡んでいるんだし)、おれの感覚はとうの昔に麻痺しているので、もしかしたらおれが女児向けだと思い込んでいるだけかもしれない。個人的には主人公の子が眼鏡を掛けていたという事実だけでもう余裕で視聴継続できるぜという感じだったのに、主人公が異世界に迷い込んだ途端に眼鏡外れたのが本当に許せなかった。眼鏡を外すことが成長の証みたいな風潮クソオブクソフィーチャリングクソなので今後一切やめてくれ。

手描きからCGへの移行がすごくスムーズだったのには驚かされた。明確に手描き部分とCGを分けているのに、両者の世界を行き交うことに違和感はない。ここらへんはアイカツに近いものを感じる。主人公が突然ギターの早弾きを始めてから問答無用のミュージックパワーで押し切る超展開も許容範囲内だったし、酒飲みながらまったり見るのにはうってつけのアニメだったなという感想です。ただ最後に音楽業界の闇を見せられて胸が詰まった。つらい。


てーきゅう 第4期/高宮なすのです!

どっちかがハズレ回だった時でももう片方がそれを補ってくれるので最高としか言いようがない。


ミカグラ学園組曲

放送前の段階では全然期待していなかったのだけど(カゲプロのおかげでボカロ関連作品に対して何の興味も期待も抱かなくなった)、蓋を開けると意外にも最後までするりと見られた。インターネッツへのあからさまな擦り寄りはさておき、主人公と猫のテンションが高いだけで作品自体はいたって平熱なので薄ら寒さを感じることはない。入学試験のやばさにはクロマティ高校を思い出したけど。クロマティ高校といえばたまたま友人宅で1巻を読んで半日近く爆笑していた記憶がある。ちなみにこのアニメで一番面白かったのは、主人公が部活に所属できずゴミクズのような扱いを受け廊下で寝袋にくるまって寝るときに「なんか面白くなりそう!!!」と言った瞬間だった。おれなら退学している。

主人公がテンション高いを通り越して異常者っぽいのは気になるけど、猫にいきなり目潰しを食らわせたり、kawaiinessをギリギリのラインで保っていたり、常に綱渡りしながらやっている感じなのは「不安定」とは違った趣があってよい。面白いか面白くないかと言われればまあ面白くはないのだけど、別に見られないほど酷くもないし、酒飲みながら見たら2倍くらい面白くなりそう。


響け!ユーフォニアム

5〜6年前の京都アニメーションが戻ってきたな、という感じのアニメだった。ただ、Freeで手にした情熱や氷菓で得られた冷静な感覚をしっかり取り入れて、今の時代に合わせアップデートしている様子も伝わってくる。ただ、時代を取り入れたせいで「緑輝(さふぁいあ)」という名前のキャラクタが生まれてしまったことには途方も無い悲しみがある。久しぶりに出てきた「親の顔が見てみたい」キャラクタだ。

京アニといえばおれが敬愛する小川太一である。正直監督は石原立也より小川太一にやってほしかった。こういう若さ溢れる作品なら尚のことだ。せめてシリーズ演出の山田尚子が主導権を握って上手いことザ・青春を表現してほしいと願うなど。主人公の「思っていることをつい口に出してしまう」というのは物語を転がしていくのに最適な性格だなーと思うんだけど、本人からしたら相当つらかったりするのだろう。

高校生が部活動に励むアニメを見ていると「おれの高校時代はなぜ部活禁止だったのか」という思いに駆られるのだが、まあ別に部活動に入ったからといって青春を謳歌できるとは限らないし、ひたすら受験勉強に捧げたおれの高校時代は間違っていたとは思っていない。今でも高校の頃に戻りたいと思っているくらい楽しかったし、要は楽しけりゃなんでもいいんだ。楽しいといえばこのアニメ、凄くストイックな目標を掲げておきながら、常に楽しさ、若々しさ、溌剌さが通奏低音として流れている。こういう抽象的なものをしっかり表現できるのは京アニの強みだよな。だから京アニの作品はいつだって一定の人気を得られるのだろう。


トリアージX

意味はわかるのに納得できない世界観が非常に好ましかった。矛盾しているようだが両者はうわーすげーなーという感情に収束していくのでこれでいいのだ。佐藤ショウジ作品といえば学園黙示録、原作者の佐藤大輔の遅筆ぶりに足を引っ張られてはいたものの作品自体はストーリー・画力ともに高水準だった。で、この『トリアージX』のことは全く知らなかったのだけど、このネタ枠っぽい雑なシナリオがクセになる。全然面白くないのだけどなぜか見てしまう。

はっきりいって設定さえもどうでもいい。犯罪者を悪性腫瘍と位置づけ5つの色で危険度を分けて…とかそういう話は部屋の隅によけておいても問題ない。要は必殺仕事人だ。それにアダルト、サブカルチャーといった要素を混ぜ込んで現代風に味付けしている。それでも今のところ面白さはない。学園黙示録は1話目の時点で面白かったけどこれは1話時点では面白くない。それでもたぶん最後まで見てしまうのだろう。


俺物語!!

1巻発売時からずっと原作買って読んでいる人間なので結構な思い入れがある。この作品最大の特徴は、少女漫画というカテゴリに属しながらも主人公の猛男とヒロインの大和凛子との恋愛模様より猛男とその親友の砂川誠との友情のほうがリアリティを持って描かれているという点で、おれはそういった珍しさと少年漫画の主人公より主人公している猛男の謎の魅力に惹かれてしまった人間なのだけど、そうした原作の特性がアニメでもしっかり引き出されているのは素晴らしかった。女より男にモテる主人公という時点で既に普通の少女漫画とは一線を画しているのだけど、『はまち』で主人公を演じている江口拓也がこんなに上手く猛男を演じられるとは思わなかった。ほぼイメージ通り、完璧に近い。大和凛子の声が少し想像と違っていたことなど全く問題にならないくらい完璧な猛男だ。

猛男の存在自体がギャグなので何をやっても面白いうえに、原作担当の河原和音の練り上げたシナリオがラブコメにも滅法強いので普通に少女漫画っぽいキラキラした恋愛模様も卒なくこなせる。登場人物が全員いいやつなので変な負荷もかからない。前期の『暁のヨナ』が異世界ファンタジーの王道だったので、そこからの振り幅の広さも相俟って「うわ、おれは凄まじい少女漫画原作アニメを見ている!!!」という気持ちになれる。

アニメが凄かったのは漫画における背景の意図を理解したうえで背景美術を仕上げている点だ。朧ろ、というかそもそもあまり描かれていない背景は猛男という主人公の存在感の強さと、世界はこの登場人物たちのために用意されているのだというある種の寛容さを表現していて、なるほど凝ってるなーと思っていたらアニメでもそれをしっかり表現してくれた。マッドハウス作品ってわりと省エネ感が目立つのだけど、このアニメに関してはそれが上手く作用している。よい。あと「これ出オチじゃねーの」という意見もあるっぽいけど本番は4巻以降なのでアニメは最後まで楽しめるかと思います。


放課後のプレアデス

webアニメ版が放送されてからもう4年とか完全に時空が歪んでいるとしか思えない。4年前の今はまだ大学2年生だったな…と考えると涙が止まらない。涙で画面が見えない。そりゃ懐かしくも感じるわけだ。4年前はまだ人生ギリギリ楽しかった頃だ。アニメ本編自体はwebアニメの頃からほとんど変わっていなかったように思う。エンジン音が良かった。


えとたま

おれは十二支全部何も見なくても言えるのでこのアニメに出てくる女の子全員幸せにできるなーなどと考えていたら本編が終わっていた。これ言っていいのかわからないんだけど、どう考えても2015年に見るようなアニメじゃないと思うわけですよ。2005年ならわかる。2010年でギリギリくらいじゃないかな。ほら、『あそびにいくヨ!』とかはこのアニメに近いテイストを感じるでしょう。

最初は十二支の子たちと主人公と猫、2つの物語が別々に同時進行しているのかな、と考えていたんだけど、Aパート終わり近くで突然メタ的な会話を放り込んできて、「十二支に入りたい猫」という設定がようやく分かってきたのだけど、それにしたってやりたいことが多すぎて全体的に散漫になっている印象を受ける。戦闘なんて格ゲーみたいだし。『猫神やおよろず』のほうがまだテーマが定まっていた。そういえば猫神〜からもう4年経つんだな。時間の進み方がおかしい。

このアニメに出てくる猫娘を見ていると、高森奈津美演じる前川みくは本当に偉大なネコキャラだったのだなと認識を改めさせられる。おれは自分で思っている以上に前川みくに好感を抱いていたらしい。あと何を生き急いでいるのか知らないがBD第1巻が4月15日に発売されるというハイペースぶりはアニメ界に革命を起こそうとしているのか、単純に鮮度を保てるうちに売ってしまおうという魂胆なのか、そこらへん見極めるためにもう少し静観してみます。


浦和の調ちゃん

あいうら』や『はいたい七葉』を髣髴とさせる3分アニメ。浦和民ではないのに郷愁を感じたのは春のせいだ…


パンチライン

もう間違いなくホームランか三振、めちゃくちゃ面白いか死ぬほどつまらないかのどちらかに振り切れる作品だろうな、と放送前の段階で予想していたのであまりダメージは無かった。何事も期待し過ぎないことが上手く生きていくためのコツだ。

とにかく見るのが疲れるうえにキャラクタのテンションとシナリオのスピード感が一致していない。作画リソースと小室哲哉の無駄遣いだ。だからおれは何回も言っているんだけど、制作側が自分たちの好きなものを好きなように作ることそれ自体は全く悪いことではなく、むしろそうした環境が整っていること自体は業界にとって凄く健全なことなのだけど、それをそのまま公共の電波に乗せておれたち視聴者に届けるってのは自己満足、自慰行為を見せ付けているのと変わらない。自主制作ならまだしも、商業ベースに乗っているのなら視聴者の存在を念頭に置かなければならない。この手の作品(前期のローリングガールズとか)はとにかく脚本が全然ダメという点が共通しているのだけど、未だにその弱点は改善されていない。頼むから話の脈絡くらい付けてくれ。


シドニアの騎士 第九惑星戦役

白羽衣つむぎという圧倒的ヒロインがようやく登場したので勝利は確定した。


ニセコイ:

OPはそのうち馴染んでくるとして、このニセコイは多くのラブコメ作品同様、回を重ねるごとに最初の頃の勢いは無くなり、引き延ばし感が強くなっていく。そのため新キャラを投入していくしかないというインフレに陥ってしまう。

なぜ初っ端からこんなことを言うのかというとそろそろ飽きてきたからです。別につまらなくなったわけではないのだけど、かといって昔のような爆発力も無くなってきていて、ダラダラ見るぶんには楽なのだが真剣に見ようとすると途端につらくなる。難しい。


山田くんと7人の魔女

『ヤンキーくんとメガネちゃん』が(終わり方以外)好きだったのでこの漫画が連載された時はかなり楽しみにしていたのだけど、蓋を開けると主人公のキャラがヤンキーくんをさらに酷くしたような感じで見ちゃいられなかった。今では耐性がついたのだけど、それでもおれは『ヤンキーくんと〜』のほうが圧倒的に好きだ。しかしヒロイン力は白石うららのほうが高いので悩ましい。

そういえばこれ実写ドラマ化されてたよなーとふと思い出したのだけど(見てない)、ヤンキーくんもドラマ化されたし、吉河美希の作品は現実再現性が高いのだろうか。しかし『山田くんと〜』のほうは「キスで人格が入れ替わる」という設定のため、アニメのほうが生々しさが抑えめになってファンタジー成分が増すという理想的な形になっている。とりあえずおれはアニメよりも「原作がしっかり幕を下ろせるか」という問題のほうが気になって仕方ないのだ。しかしアニメは進むのめちゃくちゃ早くないですか。


グリザイアの迷宮

真っ黒。辺り一面が濃密な闇。ノワールの塊のようなシナリオには一切の甘さや救いはない。一見すると荒唐無稽に見える展開も、それが重なっていくにつれて恰も正常・自然であるかのように思えてくる。ありとあらゆる種類の不幸が主人公に叩きつけられていくその様は壮観ですらあった。

正しく1時間(実際には50分程度だが)の尺を使い切った、「スペシャル」というパッケージのお手本のような導入だった。主人公の過去を抉り出し徹底的に視聴者をどん底に落としたうえで、現在の状況を映し出して希望を明確にする。非常によくできた、まったく文句の付けようのないアニメで、逆にここから先に話を進めるのは蛇足なのでは…と思えてしまった。


ニンジャスレイヤー

今期一番笑わせてもらった。ここまで身を削った笑いを見せられると逆に尊敬の念すら湧き起こる。誰かが言ってたけど、「おれたちが望んでいたニンジャスレイヤーではない」のだけど、「これはニンジャスレイヤーなのか?と問われれば間違いなくそのとおりだ」、という説明が的確だった。このアニメは確かにどうしようもないほど酷いが、紛れも無くニンジャスレイヤーという作品だ。おれはもしかしたら伝説を目撃しているのかもしれない。





以上。今期、1話視聴段階では史上稀に見る大凶作だと思っていたのだけど、回を重ねるごとに引き込まれるタイプのアニメが3話突入あたりからじわじわと力を発揮してきた。『SHOW BY ROCK』とか『レーカン』とか。『SHOW BY ROCK』は音楽的な面を掘り下げることで主人公たちの個性が見えてきたし(あと1話時点で言ってたけど主人公が主人公らしくないくらいヒロインっぽくてよい、よいのだけどヒロイン度が増していく毎に男のバンドマンいらねえだろという気持ちが高まっていく)、『レーカン』は霊のネタに物語を合わせるのではなく物語に霊のネタを織り込むことで断片的に見えた物語がひとつの線になった。『えとたま』も3話辺りから良い具合に捻くれてきた。今期は『めちゃくちゃ良い』『めちゃくちゃ悪い』の2つに大別されるラインナップだなーと思ってたら、どっちつかずの空間を彷徨っていた者達がめちゃくちゃ良いのステージに移動を始めてきた。だがしかし前期の圧倒的なまでの超豊作ぶりと比べてしまうとやはり不作と言わざるを得ない。まあもっともおれには『ハロー!!きんいろモザイク』さえあれば充分なのだが。本当に『ハロー!!きんいろモザイク』が最高すぎて終わったあとおれは生きていけるのか不安で仕方ない。