- 話自体は普通の日常もののフォーマットから大きく逸脱しているわけでもないのにこの泣きたくなるような心の昂りは何なんだろう。視覚に訴えかけるエモーショナルな刺激や物語に圧倒的なカタルシスがあるわけでもない。魔法も化物も犯罪もない、それなのにそれらが存在している作品のほとんどよりもずっと魅力的に映るこの仕掛けは何なんだ。
- この感覚は2年前の『異国迷路のクロワーゼ』で味わったものと似ている。あちらよりも幾分かキャラがデフォルメされていて、絵もアニメ的なんだけど現実と地続きになっているような独特な空気感は同じベクトルと言っていいだろう。主人公たちの笑顔が見れただけで身体中が満たされて死ねるパターンのやつだ。理由も根拠もいらない、キャラクタが一人の人間として生を受けて生き生きと表情豊かに動いているだけで全てが赦される。
- 主人公の忍が海外に留学した際にホームステイ先のアリスと徐々に仲良くなっていく描写を一番最初にもってくるのが(原作通りかは知らないけど)構成としては完璧だった。出会いと別れの後に再び出会い、つまり再会が存在するという物語の基本構造であり、普通の作品なら「出会いと別れ、そして再会」で終わるのだけど、このきんいろモザイクが特殊なのは「再会のその後」がメインで描かれるというところ。
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- これ物語としてはもう一周以上していることになる。海外留学の話が2話目以降で回想として用いられた場合は上記の構造が成立しない。再会が普通の出会いというスタート地点になってしまうからだ。しかし最初にホームステイというスタート地点となる出会いを用意することで物語を時系列に沿って無理なく展開させていく。
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- そのためOPのあとにEDがやってくるというテレビアニメにおいてはかなり特殊な形態になっているんだけど、この流れでは違和感がないので全く気にならない。型にはまらない作り方は既存の文脈を大きく逸脱していなければ基本的には評価できる。