2014年夏アニメ総括

夏は本当に忙しかったし現在進行形で忙しいのでじっくり観るということが出来なくなってきている。ので感想も雑になったし今後も職を辞さない限り雑なままだと思われる。しかしそんな状態が続くなら書く意味自体無いような気もするが、そもそもこれ自分の備忘録として書き留めてるだけなのでどれだけ雑になろうが自分がわかればそれでいいと開き直っています。10億円の不労所得がほしいだけの人生だった。


いつもの。


評価方法

・評価ポイントは「ストーリー」「キャラクター」「演出」「作画」「音楽(OP・ED含む)」の5つ。各10点満点
・総合評価(ランク)は「SSS」「SS」「S」「A」「B」「C」「D」「E」「F」「Z」とする(各説明は以下参照)

「SSS」~生涯愛せる、墓場まで持って行きたい作品
「SS」~アニメの金字塔レベルの作品
「S」~何度観ても面白いと思える名作
「A」~傑作
「B」~秀作
「C」~良作
「D」~凡作
「E」~駄作
「F」~超駄作
「Z」~黒歴史


幕末Rock

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ストーリー 5
キャラクター 5
演出 6
作画 4
音楽 4
総合得点 24点
総合評価 E

非常に厄介なアニメだった。第1話目の時点では、腐女子層とバカアニメ大好き層を狙って意図的に頭おかしくしたどうしようもないアニメだという印象を受けて(演奏中に裸になったり横文字を全部漢字で当てる暴走族的発想だったり)、実際3話目くらいまではそうした状況が続いていたのだが、4〜5話目あたりから様子がおかしくなってきた。普通、序盤を意図的に頭おかしくした作品というのは、最後まで意図的に頭おかしく振る舞い続けるか、あるいは今期だと『モモキュンソード』のように真面目な路線へとシフトチェンジしていくものだ。しかし、このアニメはそのどちらにも当てはまらない。奇しくも『幕末Rock』は、「意図的に頭おかしく振る舞っているうちに、本当に頭がおかしくなってしまった」という極めて珍しいタイプの作品になってしまったのだ。

上述した「演奏中に裸になる」という、腐女子層とバカアニメファン層を一挙両得できるこの馬鹿みたいな発想さえ霞んでしまうほど、中盤から異常性が増していく。ともすれば猟奇的にも見えるシナリオや演出、加えて馬鹿に輪をかけたような温泉回などもあり、このアニメがどこに向かっているのか回を重ねるごとに分からなくなる。しかし決して迷走ではない。話の芯は確かに存在しているのに、それを全く見せようとしない。このサイケ感にやられてしまった。以前夏アニメ雑感でおれはこのアニメのことを「シューゲイザー」と評したが、あれは間違っていた。これはサイケデリック・ロックだ。一応大衆へリーチするファクタを有していながら、奥へ立ち入ってみると鬱蒼とした森林が行く手を阻み、脇を見ると行商人が甘い水を売っている。これは紛れもない幻視だ。このアニメは見ているだけで幻覚剤を投与された気分に浸れる。

このアニメはその異常さゆえにストーリーというものがあまり意味を持たない。物語という線ではなく、一瞬一瞬という点に全精力を注いでいる。だから物語を追い続けても虚しくなるだけだ。現に、全てが空虚であるような感覚は主人公の坂本龍馬も作中で味わっている。誰かを幸せにするはずだった自分たちのロックが誰かを傷付けていたという事実を突きつけられ、自身のやってきたロックとは何だったのか分からなくなる。しかし政府にロックを歌ったとして弾圧された少年が龍馬の曲を必死に歌っている姿を見て、自身のロックに対する答えを見出す…という展開だが、そもそも龍馬の曲(ロックソング)を歌わなければ少年は弾圧されなかったわけで、本来ならここで龍馬は「弾圧されている」という事実に着目して然るべきなのだが、現実には龍馬は己のロックを取り戻してそのままライブに参戦する。物語の筋がまるで見えない。が、しかし瞬間的な爆発が繰り返されることで我々は「まあ別にいいか」とクールダウンさせられる。これを恐らく計算ではなく素でやっている、というところが凄まじい。

総じて「良い」とか「悪い」とか、そういった価値基準では評価しづらい、というかしてはいけないようなタイプのアニメだった。とにかく怖かった。これで笑ってしまっていいのか、これを笑って見ているおれもまた異常者なのではないのか、頭の中に渦巻く混沌への恐怖は尽きないし、このアニメに関する記憶を一刻も早く消すことでしか救いはないとしても、最終回のインパクトが強過ぎてそれも暫く叶いそうにない。これがパンクロックあるいはドリームポップだったらどれだけ良かっただろう。坂本龍馬には単純なスリーコードのパンクロックを演奏してほしかった。



Free! -Eternal Summer-

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ストーリー 6
キャラクター 6
演出 9
作画 9
音楽 5
総合得点 35点
総合評価 B

タイトルが実は「自由形競泳」だけでなく主人公である遙の将来について示唆していたことに気付かされた時は感心したが、フリーターになるとかそういう話ではないし、結果的にライバルだった凛に引っ張られる形で将来の目標を見つけ出したので、自由なのかと言われると微妙なところではある。不器用な男たちが気持ちを他者に伝える最も直接的な手段として水泳をテーマに選んだのか、単純に男性の肉体美をアニメーションで見せつけたかったのか、どちらが先んじたのかは結局最後までよく分からなかったが、まあ別に掘り起こす必要のない問題だったなどと最終回を見て思うのだった。

1期に比べてスポーツものとしての自覚が増したからか、登場人物たちが水泳を通じて切磋琢磨していく様子などがメインになって、人間関係の話は宗介1人に任されていた。それが物語を歪ませてしまったことは事実だが、宗介以外の人間が逆に裏表無さすぎるという問題なのかもしれない。個人的には天ちゃん先生の掘り下げをやってほしかったが、1期の異常な売り上げを鑑みて完全にターゲットを腐女子層に定めた結果、2期ではことごとく女性キャラの出番が減ったのだという背景を考えるとあまり文句は言えないのだった。

タイガーアンドバニーのように、たまたま女性層がえらく食い付いたパターンとは違いハナから腐女子の生息地に餌を投げ入れているので、そうした狙いが見え透いていたのが2期最大の欠点だった。「こうすれば腐女子たちは喜ぶんだろう」という姿勢が前半は特にあからさまで、それがつらくて視聴を断念しかけたが、後半から持ち直してきて上手く青春ものとして纏められた。あと相変わらず作画に関しては凄いという一言に尽きるが、2期は泳いでるシーンよりキャラクタの何気ない動作に全力を注いでいるのがやや意外だった。小川太一は1期3話に比肩するレベルのコンテを2期5話で切ってきたし、マッドハウス出身の雪村愛が切ってきた2期8話のコンテはそれまでのFreeに抱いていたイメージを変える柔らかさがあった(真琴が子供達と接するシーンが顕著)。

内海紘子の趣味が溢れんばかりに押し出された1期のほうがやはり好みなんだが、2期の最終回を見るとそんなに悪くなかった気もするし、境界の彼方を映画化するくらいならこっちの方を映画化したほうがいいのでは、と思ってしまう。しかし『たまこラブストーリー』という史上稀に見る大成功例が生まれてしまったので実はわりと期待していたりする。ただFreeが映画化された場合、劇場に足を運ぶのがかなりきついのではという(精神的な)不安がある。おれも仕事から解き放たれてFreeになりたい。



グラスリップ

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ストーリー 3
キャラクター 7
演出 4
作画 5
音楽 8
総合得点 27点
総合評価 D

近現代文学の世界をアニメというフォーマットに落とし込んでSF風味の脚本で味付けする、というテーマがあるように見えた。そのため演出もあそこまで古風だし止め絵は連発するし、劇伴はほぼクラシック曲で占められている。しかし肝心のSFがあまりにも杜撰で、その結果全体に歪みが生じることとなった。主題と設定自体は悪くない。問題はそれらを全く生かせていない脚本と構成だ。この手の作品には必ずといっていいほど岡田麿里が関わっていた。岡田麿里は容赦なく女性キャラに汚い言葉を吐かせ、手の届かない天使のような存在だった者を俗物的な存在にグレードダウンさせ我々のいる現実という次元に引き摺り下ろしてくる。この結果、登場人物たちは現実性と虚構性を同時に獲得し、作品を引っ張っていく力を身につける。現にこの作品が明らかに意識している『true tears』だってそうだった。おれ自身は岡田麿里をあまり評価していないしそもそも好きですらないが、『true tears』は間違いなく岡田麿里の功績が大きい。

さて、その『true tears』に続くラブロマンス作品として期待値が高かった『グラスリップ』がなぜこのような悲惨な結果に終わったか、これは上述したSFの雑さに加えて、なぜか『true tears』とは逆位置にある『TARI TARI』の爽快さまで獲得しようと目論んだことも原因のひとつだろう。SDキャラの使用やソフトな演出は紛れもなく『TARI TARI』の系譜を継いでいる。しかし『TARI TARI』のテーマは恋愛ではなかった。恋愛という「誰かが幸せになる一方で誰かが不幸になる」問題を抱えたテーマとこのアニメにおける演出はミスマッチだった。かといってSFと波長が合っているわけでもない。最後までこの演出の方向性が理解できなかった。

特に駆の分身が大量に出てくるシークエンス(3〜4回くらいある)は本当に不親切だった。やりたいこと、説明したいことは分かるけど一見しただけでは突然駆が分身したようにしか見えない。そもそも透子や駆の「未来が見える(聞こえる)」という能力を全く生かせていない。はっきりいってこの能力が存在しないほうが面白くなったと思う。恋愛もSFも中途半端に片付けられてしまうくらいだったらSFを途中で切り捨てる覚悟を決めるべきだった。

放送前に絶大な期待を寄せていただけに裏切られたショックは大きかった。それでも少しだけ、ほんの僅かな希望を抱いて見た最終回も惨憺たる有様で、『true tears』とこの作品を繋ぐ存在だったニワトリも置物同然だった。答えを出さないことそれ自体は決して駄目というわけではない。答え(その先の展開)を受け手に想像させる幕引きが最適解の場合だってある。しかしばら撒いた問題を放置すること、広げに広げた風呂敷を畳まずに部屋を出て行くことは敗北宣言に等しい。純正眼鏡女子として注目していた永宮幸も、透子と祐に対してどっちつかずの態度をとったままだし、まともに解決したのは雪哉とやなぎの関係性だけだった気がする。

とまあここまで散々に批判してきたわけだが、OP曲(最終回ではEDとして流れた)は本当に素晴らしい。これを映像付きで聴くためだけに毎回視聴していたといっても過言ではない。いつか岡田麿里がこの作品を再構築してえげつない泥沼恋愛劇になることを夢見ながら来期の作品に思いを馳せる。



東京喰種 トーキョーグール

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ストーリー 7
キャラクター 6
演出 7
作画 6
音楽 8
総合得点 34点
総合評価 C

中盤までかなり良かったのに、なぜか終盤から「どう考えてもそっちへ行くべきではない」と視聴者のほとんどが思うであろう方向へ突き進んでしまった。第1話目の心理描写の不足も2話以降で補われたし、かなり好調なスタートだったように見えたのだが、水面下では原作との擦り合わせに苦心していたというところだろうか。最初からどう足掻いても救いようのない、闇の底からのスタートであるがために何をどうやっても重苦しさからは逃れられない宿命だった。

金木の物語からグール全体の物語へと広がっていった2話〜8話目あたりまでは文句無い出来だったが、そのあと再びグールとなった金木の物語へ収束していったのがまずかった。グール襲来などの問題が何ひとつ解決していない中で金木個人の問題を扱うのは極めてリスキー。成長の糧となる過去回想と壁を乗り越えるための決別なら話はわかるが、それは10〜11話の中で終わらせるべきだった。最終回の中盤くらいまで引きずるような内容ではない。というか最終回が酷すぎた。グールとはいえ見た目は人間を10分以上拷問・蹂躙・虐殺していく様子を延々と見せられるのは苦痛以外の何者でもない。

結果的にダークな作風に完全に足を救われた形になってしまった。エンディング後のショートアニメにおける遊びが本編の内容にそぐわないのは分かるが、原作の重苦しい描写をそのまま映像として見せ付けることに力を注ぎ過ぎており、尺の配分を誤ることになった。最終回にそうした皺寄せが集中したことは言うまでもないが、せっかく原作が終了したのだからその原作とは違う終わり方を提示することも出来たのではないか。

金木覚醒で終了というのは原作が続いているなら分かるが、原作が終了してしまった段階でこういうことをやられても視聴者としては反応に困るだけだ。これ本当は全13話あったけど何らかの事情で1話削られたのではないか、とさえ勘繰ってしまう。面白いコンテを見せてくれるアニメだっただけにこういう部分で傷が付くのは勿体無い。



RAIL WARS!-日本國有鉄道公安隊-

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ストーリー 3
キャラクター 5
演出 5
作画 7
音楽 5
総合得点 25点
総合評価 E

徹頭徹尾何がしたいのか分からないアニメだった。鉄道がメインの話かと思ったら1話に1回以上必ずサービスシーン的なものを挿入してくるし、ストーリーには連続性が見受けられないし、とにかくおかしなアニメだった。原作もこんな内容なのだろうか。だとしたら完全に救いようがないので、原作は一応まともだったが、原作者とアニメ制作陣とのいざこざのせいでアニメは滅茶苦茶になったのだと信じたい。

主人公の高山が異常な鉄道オタクで、しかも国鉄民営化という設定があったので「鉄道に関する人々の抗争劇」という図書館戦争のようなものを想像していたのだが、現実には民営化された鉄道の中で起こるちょっとしたトラブルを解決していくというだけのスケールの小さい話だった。終盤になると深刻な事件も起こったりするが、基本的にはどんなことが起きても話は重くならず転がっていく。しかし高山の女性問題になると作品の空気が一気に変わる。教会で高山に好意を持つ女性4人が対面した時は本筋であろう鉄道関連の話より遥かに緊迫感があった。

結局鉄道の話をやりたいのかラブコメをやりたいのか分からない中途半端な内容だった。そのせいで唯一の男準レギュラーだった今泉の存在が霞んでしまっている。こいつのおかげで様々な問題が解決しているのに単純な筋肉馬鹿みたいな扱いを受けているのは本当に悲しい。高山は行き過ぎた鉄オタなので言うまでもないだろう。鉄道の話そっちのけで高山をめぐる女性陣たちの血で血を洗う争いとかやり始めてたら高く評価していたかもしれない。軽々しく「WAR」と言ってはいけないのだということを教訓として示してくれた反面教師的作品。



普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。

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ストーリー 10
キャラクター 10
演出 9
作画 9
音楽 9
総合得点 47点
総合評価 S


普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。 - 火のない火鉢があるだけ




アルドノア・ゼロ

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 9
作画 7
音楽 6
総合得点 37点
総合評価 B

分割2クールというのは風の噂で聞いていたので特に驚きもなかった。それより序盤(1〜3話)までは本当に文句なく素晴らしかったのに、4話から突然失速し始めて9話を過ぎた頃には序盤の素晴らしさなど見る影もなく落魄れてしまった。何故だろうと思い8話目終わった頃に調べたところ、虚淵玄が関わっていたのは1〜3話目だけだったという事実が判明して納得がいった。別に虚淵玄の才能が突出してるとか言いたいわけではなく、単純に虚淵玄が序盤で作り上げた世界を後続の連中が守れなかったというだけの話である。頭脳戦による駆け引きや人間関係の複雑さが生み出す緊迫感、火星の姫という存在を利用した対立構造の面白さが後半になると完全に消えてしまう。瞬間的な面白さや印象的な締め方を意識しすぎて尻すぼみになってしまったのは勿体無いと言う他ない。

澤野弘之による劇伴は相変わらず減り張りに欠けるラーメン二郎みたいな味付けの濃さで胸焼けするし、Kalafinaも最近は曲が似通ってきていて音楽方面には全体的に不満が残ったが、演出が面白かったのでそういう意味ではいい目眩ましになった。正直コンテはそんなに良くないんだが(前半は良かった)、全話通して演出が安定してたのは好印象だった。しかし脚本の雑さまでは覆い隠せなかったが。

「なぜ現代社会から切り離された火星が中世の封建体制に逆戻りしたのか」という理由が全く明かされないこと、姫とイナホの関係性を明示しないまま最終回に縺れ込む手際の悪さなどが目立ったが、2クール目で解決される余地も残っているので今の時点でこの作品に何らかの評価を下すのは難しい。取り敢えず虚淵玄が舞い戻ってくることを願うしかない。



ばらかもん

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ストーリー 4
キャラクター 4
演出 8
作画 7
音楽 8
総合得点 31点
総合評価 C

なぜおれはこのアニメにハマれなかったのか考えてみたが理由が全く思い付かなかった。現実で子供が嫌いだという事実はフィクションに対して何の影響も及さないことは『うさぎドロップ』で証明されているし、主人公に対しても嫌悪感などはない。何と言うか、全てが微妙に上手く噛み合っていないような、そんな気持ち悪さがあった。しかし主人公の母親だけは本当に素晴らしい人間だったのでもっと早くから登場させてほしかった。この人がいるのといないのとでは作品に対するイメージが全く変わってくる。

主人公の母親が出てきた時点でこのアニメに何が足りないのかぼんやりと見えてきた。主人公を諭す親のような存在だ。島にいる時はほとんど歳下の子供達と交流してて、一応大人との交流もあったがそれは老人ばかりで、親というよりは師匠みたいな存在だった。主人公が中心になっている物語とトップに立っている物語は全然違う。特に大きな事件やイベントもなく、ひたすら島での生活が描かれる物語は聊か綺麗すぎた。主人公が書道展示館の館長を殴って島に飛ばされる時以外、雰囲気が深刻になることはほぼない。終始穏やかなのは決して悪くないが、もう少し物語に起伏がほしかった。

ただ琴石なるを演じていた子は本当に才能の塊だと思うので、これから様々なフィールドで活躍することを願う。主題歌に関してはOPの素晴らしさがEDの合わなさを吹き飛ばしていたので結果的にいいバランスだった。



人生

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ストーリー 7
キャラクター 9
演出 9
作画 8
音楽 9
総合得点 42点
総合評価 A

クラナドは人生だ」というクリシェが今後一切使えなくなるくらいの衝撃を叩きつけたかと言われれば肯定し難いが、「(自分の)人生はクソだ」と言う時には主語をはっきりさせないとこのアニメを信仰している人間から袋叩きに遭うだろうなという状況にはなった。まあそんな事情はともかくアニメ本編は波瀾万丈とは無縁で(実際色んなイベントが起きててごたごたしているが)、これが(主人公の)人生なら薔薇色と言っていいだろと思える愉快さなので、『人生』制作スタッフの目論見は成功しているのではないだろうか。

日常系でもハーレム系でもなく、基本的にはコメディ路線でごくまれにラブコメっぽいことをやったりする、という枠に囚われない緩さ。こういうやりたい放題やってる作品はだいたい全部中途半端に終わってしまうのだが、このアニメは「人生相談」という軸を据えることで常に芯がブレないように作られている。主要ヒロインも5人と最小限にとどめているが、文系・理系・体育会系・美術系・部長と役割がはっきり分かれているのでキャラが被るということもない。しかもこの中で主人公の赤松に好意を持っているのは理系の梨乃だけなのでハーレムの道に進むこともない。ふみは途中から文系というより三国志オタクに変貌していくし、いくみは常軌を逸した馬鹿さ加減で将来が心配になるが、こういう癖者達を赤松が纏めてて上手く回してるなと感心する。

こういうコメディタッチの作品でヒロインたちの可愛さを前面に押し出しているものはわりと希少だと思う。ウケ狙いの絵面に頼らず、会話のキャッチボールやナンセンスギャグで押し通すのはライトノベル原作という要因が大きいが、アニメーションの特性を生かしたコガネンの話などもあってしっかり計算されている様子が窺える。ストーリーらしきストーリーはあまり無いが、終盤になると第二新聞部の存続をかけた闘い(?)があるので物語としては成立している。

視聴者の思考を奪うように魔改造されたアニメが最後の最後には視聴者に考えさせることを選択した(赤松と梨乃の関係性など)、というのはちょっと良い話っぽいが、そもそも人生とは悪いことと良いことの比率が7:3程度で構成されているものなので、アニメでメタ的にそんな人生を皮肉るとしたら楽しいことが山程ある理想的な人生を描く、というのが最適解だったはずだ。『人生』という作品は人生をテーマにしておきながら「実際人生なんて大したことないんだから適当でいいんだぜ」という本音を示唆してくる、暗黒の現代社会における一服の清涼剤あるいは一陣の風のようだった。人生が暗闇に覆われて死にたくなった人間にこそこの『人生』を見てもらいたい。



さばげぶっ!

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ストーリー 9
キャラクター 10
演出 9
作画 9
音楽 8
総合得点 45点
総合評価 A


さばげぶっ! - 火のない火鉢があるだけ




スペース☆ダンディ シーズン2

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 10
作画 10
音楽 7
総合得点 45点
総合評価 A

はっきり言って2クール目と1クール目では天と地ほどの差があった。1クール目は以前言ったように、脚本によって出来不出来の差が激しくて全体的には「作画が凄いだけ」というイメージに収まりがち、という評価だったが、2クール目に関してはそうした弱点を克服し全ての回の脚本が平均を大きく上回る完成度だった。ギャグからシリアスまで幅広く全てをこなし、作画は常に劇場作品を見ているかのようなクオリティの高さ。特にミュージカル回・ハニー出自判明回・スカーレットデート回・時空のほつれ回は本当に最高としか言いようがなかった。特に第23話「恋人たちはトレンディじゃんよ」はベタベタな演出が最高に格好良く決まっていてシリーズ中一番の出来。まさかうえのきみこがまともなトレンディドラマの脚本を書けるとは思ってもいなかった。しかも過去作品の焼き増しではなく、しっかりと今風、そしてアニメのフォーマットに合わせてアレンジしている。これは本当に衝撃だった。90年代に使い古されたテーマがアニメーションという新たなフィールドで息を吹き返したという事実に感動せずにはいられなかった。山田由香といい高橋ナツコといい、最近はとにかく女性脚本家のレベルが異常に高い。

基本的に1話完結型だが、最終回には各話にばら撒かれた伏線をひとつずつ丁寧に回収する手際の良さを見せ、結果的に全てがひとつの線で繋がる理想的な幕引きをみせた。それぞれが独立した別個の話だと思わせておきながら、裏ではしっかり繋がっていたというこのベタな展開がたまらない。1クール目で散々理解不能な話をやっていたのに、急に2クール目でしっかり整理された話をやり出したのはこのベタなラストが不自然に見えないようにするための前振りだったのだ。しかしベタなくせにやりたい放題というのがいかにもスペースダンディらしく、途中から壮大な宇宙戦争をやり始め作画の素晴らしさをこれでもかと見せ付けてくる。あまりにも作画が凄すぎるとそれは逆にアニメーターのエゴイズムが表出してくるのでは、という懸念もあったが杞憂だった。凄すぎるともう単純に笑えてくる。「作画が凄まじい」ということそれ自体がもうギャグなのだ。このご時世に手描きの職人芸をこうも惜しみなく披露されると「アニメーションにとっての進歩・進化とはいったい何なんだ…」と答えのない問いに身を投じることになる。

SFというジャンルはわりと行動範囲が狭いという印象だったが、このアニメはSFを下地にしてコメディ・ミステリ・ミュージカル・学園もの・ラブロマンスなど様々なジャンルを取り入れてオリジナルのものに昇華した。見る前までは単純にダンディが色んな星にいる色んな珍しい生物を捕まえていくアクションものだと思ったのだが、はっきり言って「色んな珍しい生物を捕まえる」というダンディの職業のほうは「そうしたほうが色んな星に訪れる理由付けができる」というくらいのものだった。重要なのはそこじゃない。「スペース」よりも「ダンディ」のほうがずっと重要な意味を持っていた。それは最終回を見れば明らかだろう。毎話冒頭で流れる「『スペースダンディは『宇宙のダンディ』である」というナレーションですら伏線だったのだ。ここまでくると手が込んでいるというレベルを超えてくる。流れていく物語に身を任せるのが最善の視聴方法だ。

作画が凄いだけ・音楽関係者が豪華なだけ…と最初に思い込んでしまった時点でもう術中に嵌ってしまったのかもしれない。2クール目以降のエピソードは各話3回以上見ているがどれも全く違ったテイストで飽きがこない。やりたい放題やりながら真面目なところでしっかり筋を通す、まさにダンディズム溢れるアニメである。作画の凄さにもロマンを感じずにはいられなかったし、このアニメにとどまらず今後のアニメーション全体にも希望が持てる、夢に満ち溢れた作品だった。



月刊少女野崎くん

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ストーリー 10
キャラクター 10
演出 9
作画 8
音楽 9
総合得点 46点
総合評価 S


月刊少女野崎くん - 火のない火鉢があるだけ




ひめゴト

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ストーリー 3
キャラクター 3
演出 4
作画 5
音楽 3
総合得点 18点
総合評価 F

主人公が女の子だったら良かったなーと思ってたら最終回を迎えていた。



アオハライド

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ストーリー 8
キャラクター 7
演出 8
作画 7
音楽 9
総合得点 39点
総合評価 B

1〜3話を見た段階では今風の少女漫画のフォーマットに則った王道を進む作品なのかなと思っていたら中盤から様子が変わってきた。「恋愛」というより「親愛」的な要素が強まっていったのがその理由だろう。とりわけ洸と双葉の恋愛関係の一切合切が霞んでしまうくらい洸と母親の話が本当に良くて、むしろこの過去が本編で今という時間軸はエピローグなのでは、と考えたりした。恐らくこの作品の主人公は双葉じゃなく洸だ。これはもう間違いない。語り手=主人公とは限らないし、語り手の絶対的な信頼はクリスティの『アクロイド殺し』で否定されている。吉岡双葉は今のところ洸の母親的な立ち位置に(本人も洸も気付くことなく)収まっている。個人的に吉岡双葉という人間はどうもヒロインらしくないというか、可愛げがなくて妙に鬱陶しいなと疑問に思っていたんだけど、その謎が11話目にしてようやく解けた。ヒロインではなく母親に近い存在だったからだ。ちなみに母性本能が強いのと母親的存在というのはまた微妙に違ったりする。

序盤で双葉が抱えていた孤独と最終回直前まで洸が抱えていた孤独は全く別種のものだが、痛みを抱えた者同士が近付いた1話の神社の裏でのシークエンスがあったからこそ、双葉が洸の内面に立ち入っていく過程に不自然さは無かったし、序盤で張った伏線を終盤で回収する手際も良かった。最終回で馬渕家の男3人が食卓を囲むシーンがその集大成だろう。洸と双葉の関係については、最終回からようやく次へ進展していくという感じだったのであまり触れる部分が少ないというか、このアニメは常に双葉から洸への一方通行で、洸の心情については自らが過去を語り出すまではほとんど触れられなかった。むしろこの最終回の先からが少女漫画としての本番だろう。洸の問題にも決着が付いたし、ようやくここからというところでの最終回だったのは勿体無い気もするが、洸と双葉が痛みを乗り越える物語としては充分な幕引きだった。

青さは痛みを伴う、というのは数多の青春を掲げる作品がそうであったことから定着化した事実だろう。このアニメの主題歌が「ブルー」だったのも象徴的だ。青春イコール恋愛ではない。ただ、青春と呼ばれる期間が最も多感な時期であることには違いなく、その時期をどのように過ごすかによって人格や未来が変わってくるので出来るだけ充実した青春時代を過ごすよう努めていたはずなのにおれは今社会に殺されている。槙田悠里が社会という闇に潰されないことを願うばかりである。


ハナヤマタ

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ストーリー 8
キャラクター 8
演出 10
作画 8
音楽 10
総合得点 44点
総合評価 A


ハナヤマタ - 火のない火鉢があるだけ




ちょぼらうにょぽみ劇場第二幕 あいまいみー ~妄想カタストロフ~

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ストーリー 7
キャラクター 9
演出 8
作画 7
音楽 6
総合得点 37点
総合評価 B

1期の方が純粋な狂気が滲み出ていた。2期は「頭おかしくしてやろう」という気持ちが前に出過ぎててちょっと引き気味で見てた。が、しかし、「石運び」と「イトウ」は文句無しに素晴らしかった。これだけ見てれば2期は大丈夫。



モモキュンソード

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ストーリー 5
キャラクター 6
演出 7
作画 7
音楽 4
総合得点 29点
総合評価 D

「真面目なものを作っていたらいつの間にか頭おかしくなった」のではなく、「頭おかしいものを作っていたらいつの間にか真面目なものになった」という極めてオーソドックスなタイプに収まってしまった作品。3話目が終わったあたりから徐々に路線を変え始めて(小休止的な回を挟みつつ)真っ当な道を目指し出した。しかし、最初に異常性を売りにしたような作品が途中から路線変更しても入り込めないというか、下地ができてない状態で真面目なことやられても土台が不安定なので常に焦点が合っていないという感じだった。ギャグもシリアスも中途半端に終わってしまったので、それならいっそ最初から真面目な話をやってくれたらまだ救いようがあったかもしれない。

しかし決してつまらないというわけではない。天女隊がアイドルになるエピソードに関しては、現状のアイドルをリスペクトしつつ揶揄すべきところは徹底して揶揄するという脚本のアイドルに対する思い入れの強さを感じさせるし、桃子が犬猿雉と喧嘩するエピソードは原典である桃太郎を意識した構成が面白かった。個人的には最終回まで見ても安倍晴明の必要性を感じなかったが、かぐやを出したかったのだと考えれば納得できなくもない。しかし安倍晴明出すくらいなら皇天女と部下の掘り下げをやったほうがよかったのでは。

変に小難しいことを一切やらなかったのは正解なんだけど、難しくなさすぎて単調になってしまった、というのも事実だ。こういうバランスは本当に困難なので、相当苦労したんだろうなと察せられるが、それはそれとして後半から天女隊の存在意義が薄くなってきたのは普通に構成失敗してるので、最後に鬼ヶ島を支えるだけでなく邪鬼王に成り代わろうとした妖鬼を倒すくらいの役割を与えていれば違和感なく大団円を迎えられたのかもしれない。最終回でフライングドッグの名前を出してまでアイドルやらせようとするくらいなら尚更だ。

取り敢えず天女隊が現実においてもCDデビューできたということが唯一の収穫なのでは。あと天女隊の実写PVが安っぽさの限界に挑戦しているかのような映像で面白かったです。



まじもじるるも

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ストーリー 7
キャラクター 8
演出 7
作画 6
音楽 8
総合得点 36点
総合評価 B

独特の空気感を持つ不思議なアニメだった。この作品が他の同系統の作品と一線を画すのは「魔法という設定をほとんど作中で利用しない」という点だ。魔法を使える少女が現れて、その少女が魔法による記憶改竄などを経て主人公の家に住むことになるのだが、これ以降魔法というファクタはほとんど蚊帳の外へ追い出される。肝心な部分で魔法を行使することはあるが、基本的には魔法など一切関係のない日常を送るだけ。主人公の破天荒な性格が影響して単なる緩い日常ではなくドタバタとしたコメディの色が強いが、ごくまれにシリアスな部分が出てくるとそれを解決するために魔法という設定が首を擡げる。だからこの作品は極めて強く「日常」を守ろうとしているように見える。そういう意味では日常系の延長上にある作品といえよう。

綾波レイに端を発する無口系不思議キャラの隆盛は、ゼロ年代後半から現れたkawaiinessを身に纏ったキャラクタが緩やかなスクールライフを送る作品によって鎮静化されたように思えたが、その癖のある魅力は未だに根強く、こうして2年に1度は主役に躍り出ている。無口と無感情は違っていて、感情を表に出さない人間が徐々に心を開いていく過程は余程のことがない限り物語として盤石になることが確約されている。るるもに関しても、最初の頃は掴み所のない不思議なキャラクタというだけだったが、回を重ねると様々な表情を見せ、耕太とのやりとりによって口数も増えていった。

ブコメとも言い難いしギャグアニメでもなくて、両者の間隙で揺れているジャンル分け困難なアニメだったんだが、常に安心して見ていられる大らかさがあった。そうした安心感というのはるるもの存在により生み出されていたことが最終回で示される。普通の作品なら、見失ったるるもを探し出すために耕太は魔法を使うのがセオリーとして有効だが、あくまで元の日常を取り戻すためなので、それを壊してしまう可能性のある魔法は最後まで使われない。最終回なのにるるもの記憶凍結以外の魔法が全く使われないということからも分かるように、このアニメは魔法がテーマではなく魔法を使える「るるも」という存在が核だったので、冒頭で述べたように魔法は限定的にしか使用されない。目的と手段を履き違えることなく最後までやり遂げられたのは素晴らしい。

色々考えているとこの作品の本当のテーマは「日々を楽しく過ごせること自体が魔法のようなものだ」ということなのかと思ったりもしたが、そういう押し付けがましいメッセージ性は込められてなかったよなと(5〜8話を視聴して)再考した。るるもが可愛ければそれでいいみたいなところが本質だろう。先が気になるとかめちゃくちゃ面白いとかではないが、視聴しているだけで落ち着く清涼剤的な作品だった。1クールに1本こういうアニメが放送されているというだけでも救いになる。



LOVE STAGE!!

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 9
作画 8
音楽 5
総合得点 40点
総合評価 A

全10話という尺の短さに不満はあるものの、それを差し引いても充分すぎるほど満足いく内容だった。「百合」と比べてネタ的に扱われることが多いボーイズラブというテーマをとても器用かつ繊細に扱いこなしている。受けとなる泉水がほぼ女性にしか見えない男性というのは反則に近い気もするが、それ以上に「男同士の友情」を経由せず、「キライ→スキ(恋愛)」というフェーズに移行した構成のスムーズさには驚かされる。同性間の恋愛というテーマを扱う場合、片一方が友情という枠を飛び越えられずに足踏みするという展開がお決まりだが、こちらは龍馬も泉水も互いの関係性に悩むことなく恋愛感情を芽生えさせている。そこに独特な気持ち悪さがないのも凄かった。

この作品が革新的なのは、最近の「BL」作品が有しているあらゆる基本的要素を排して、あくまで少女漫画の王道フォーマットをベースにしたうえでボーイズラブを描いている、という点だろう。だからこの作品からは同性愛に関してのある種の気持ち悪さや異質さをまるで感じない。むしろ恋愛に関しては清々しささえある。乱暴に言えば少女漫画の主人公が女性から男性に変わっただけなのだ。現に瀬名泉水は容姿だけ見ればかなり女性的だ。思考回路も女性に近い。一線を超えることに何の躊躇もなく、龍馬も憧れの女性が実は男性だと分かっても、すぐにまた恋愛対象として泉水に惹かれていく。ギャグっぽいくらいに清々しい展開の早さだが強引さはない。

前述したネタ的なボーイズラブの要素はそれ以上にインパクトの強い瀬名聖湖(DAIGO)によって掻き消される。これもかなり重要な要素だ。とにかくDAIGOが出てくるだけで面白い。決して上手くはないが、かといって初声優挑戦のコナンの頃のような下手さはない。この絶妙な演技力により、ふざけてるわけではないのに毎回面白い。笑わせる意図のない狂気は時に計算された笑いを凌駕する。まあラストで泉水が龍馬の家に押し掛けてからの超速展開には笑わされたけど、何かもう別にそれでいいんじゃないの、という感じだった。このアニメを最後まで視聴したことによって自分の中の許容範囲がかなり広がった気がする。男女の性行為描写におけるボーダーラインはヨスガノソラでかなり広がったが、男性同士の性行為描写におけるボーダーラインはこのアニメにより無限に広がったように思う。これが放送できるならボーイズラブ作品はほぼ何でもアニメ化できる気が。

あとほぼ全ての登場人物が泉水と龍馬の関係に全く気付いていない、というのはこの手の作品にしては珍しかった。聖湖はやや察するところはあったみたいだが、秘書の玲でさえあくまで二人の関係は「友人」だと認識している。だから男性同士の恋愛に対する第三者的視点というものがこの作品には出てこない。だから同性愛に対する独特の違和感も表出しない。視聴者を神の視点に任ずるのではなくら視聴者さえも作品内の一部となるよう取り込んでしまおう、という勢いは素晴らしかった。今まで見たボーイズラブ系統の作品の中では間違いなくベスト。「どうせDAIGOの実姉だという話題性だけでアニメ化に漕ぎ着けたんだろう」と思っていた過去の自分を恥じ入るばかりである。



Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!

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ストーリー 6
キャラクター 8
演出 7
作画 8
音楽 6
総合得点 35点
総合評価 B

序盤〜中盤がかなり良かっただけに終盤の失速が悔やまれてならない。プリズマイリヤという作品の本質は文字通りイリヤの日常に肉薄しており、それを無視して唐突な戦闘に突入するのはやはり本家であるFate Stay/Night を意識しているからだろうか。とはいえスピンオフはスピンオフとして元ネタの存在を匂わせつつ、本筋から切り離されて独立した作品として生み出された意味をしっかり理解してほしかった。イリヤたちの小学生らしさ(子供っぽさ)も徐々に失われ、設定は形骸化していく。魔力補充という名目のもとでの接吻は所謂サービスシーンだと思わせておいて、中盤でクロを救う際に同様の行為を反復することで伏線として回収する、この手際は良かったのに、そうした積み重ねを破棄するような終盤の展開には疑問が残るばかりだった。

イリヤたちの日常は戦闘(カード回収)により保たれているのではなく、イリヤは普通の日常を送っていた時に戦闘に巻き込まれた、という体なので、日常より戦闘の比重が大きくなるのはバランス的に健全ではない。本家の設定を半分以上無視した設定で生み出された物語なのに、話が進むにつれて本家に近付いてしまうというのは皮肉ではあるが。せっかくクロという新キャラを出したのに、イリヤと和解してから日常に溶け込ませる時間が足りなかった。日常と戦闘のメリハリが1期に比べて微妙だというのは大きな差だ。

とにかく1期の頃から言及しているが、このアニメに全10話という尺は短過ぎる。次々に続編を作っていき、事実上尺を伸ばし続けているのはわかるが、それによって話が間延びしてしまうという弊害も生まれている。ダラダラと続編を作り続けるくらいなら潔く全12話程度の尺で完結させてほしいのだが、焼き畑農業でいくつものコンテンツを潰してきた(そらのおとしものに関してはまだ許していない)角川なのでそういうことを望んでも仕方ないか。何にせよまた全10話で3期作るなら無駄な要素を削ぎ落とさないと同じ過ちを繰り返すことになる。



残響のテロル

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ストーリー 5
キャラクター 6
演出 8
作画 8
音楽 7
総合得点 34点
総合評価 C

序盤が物凄く良かっただけに中盤からの信じられないほどの失速が本当に残念でならない。原因ははっきりしている。ハイブというキャラクタが出てきたせいだ。このアニメはナイン・ツエルブ・三島リサの3人を主軸にして、警察との攻防戦を描けばよかったのだ。で、そのままだと単純にナイン側が圧勝してしまうので、切れ者の刑事として柴崎を用意して頭脳戦や駆け引きの準備をしっかり整えたにも関わらず、ハイブとかいうナインたちと同じ境遇でありながら大きな権力を握ったキャラクタを出すことで頭脳戦が出来なくなってしまった。ナインたちを追い詰めるのは権力の頂点に立つ者であってはいけなかった。捜査権さえ危うい柴崎という刑事がナインたちの仕掛けを看破していき、徐々に発言権を得られるようになるという展開ならまだ理解できた。しかしハイブが現れてからはナインたち vs 柴崎 という構図から、ナインたち vs ハイブ という構図に変わった。ハイブが柴崎のパートナーになるという唯一の希望も終盤に絶たれてしまう。

そして1話では三島リサにほとんど台詞を与えずに心情を克明に伝えるという離れ業をやってのけ谷も関わらず、終盤になるとツエルブと三島リサの関係が安っぽく描かれていき、テロという主題からかけ離れた存在に落ちていく(三島リサも最後までナインたちの足枷になっていただけだった)。アテネ計画にしても、1クールという短い尺でカタをつけるには入り組みが過ぎていた。最終回Bパートの詰め込み具合から見てもそれは明らかだろう。なぜノイタミナ作品はまともに尺や構成を考えずに作ったようなアニメが多いんだ。東のエデンサイコパスギルティクラウンもそうして失敗してきたではないか。なぜ誰も過去から学ばないのだ。

2ヶ月前の夏アニメ雑感で述べたように、序盤(1〜3話まで)は本当に良く出来ていた。これは本気でノイタミナの威信をかけて世に放った作品なのだと感じられたし、その自信の漲りは初回における作画・演出・音楽とあらゆるところから迸っていた。複雑に入り組んでいながらそれを難しくないように見せる、極めてよく計算された脚本だと関心したし、そこに作画が追い付いていることにアニメーションの未来を感じられた。頭脳戦を繰り広げることの難しさはわかるが、だとしてもハイブを出す必要性は理解できないし、最終回の結末にも納得いってない。みんな死んではい終わり、というのは解決ではない。諦めだ。

今期は序盤から最後まで勢いを落とさず走り切った作品と勢いが最後まで保てなかった作品の2つにはっきりと別れていた。言うまでもなくテロルは後者だった。ところで『残響のテロル』って結局どういう意味だったんですかね。



ペルソナ4 ザ・ゴールデン

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ストーリー 8
キャラクター 9
演出 9
作画 5
音楽 7
総合得点 38点
総合評価 B

完全にペルソナ4視聴者向けの内容だった。ここまで割り切っていると逆に清々しい。ペルソナ4の内容を踏まえているので2周目の世界とはいえ2期に近い感触がある。ペルソナ4における「仲間との絆」という部分にフォーカスしていて、それゆえ戦闘よりも日常生活におけるイベントのほうが重要な意味を持っていた。あらゆる説明を完全に省いた結果、凄まじいスピードでストーリーが進んでいったのは興味深い。視聴者がペルソナ4の内容を知っていることを前提に話を作る、というのはかなりリスクが高い行為だが、結果的に上手く纏まっていたので、今後こうした形でのアニメ化が増えてもおかしくない。

最大の問題はマリーという新キャラをどのように扱うかという点だが、このアニメにおいてマリーは仲間の結びつきを強めるための核として中心に据えられた。ただマリーの存在が戦闘を引き起こすトリガーになるというのもあって、絆を固くする役割と戦いを巻き起こす役割(作中では「人の願いを叶える」「人を守る」役割に分かれていたと説明されている)という相反する使命を与えられたマリーの扱いに途中から困ってしまったのだろうな、というのが最終回から伝わってきたのは残念だった。マリーを改めて神にしてしまう意味がいまいち分からない。その前の最終決戦で締めたほうが構成として綺麗だった。まあこのアニメが「仲間」という集団ではなく「鳴上悠とマリー」というペアの物語なら納得できるんだが、それだと冒頭で述べた「仲間との絆」にフォーカスされた説明が付かなくなる。作品のテーマとマリーの存在意義が矛盾してしまうのだ。

とりあえず最終回(12話)の内容の半分以上は蛇足だと思っているし、これをやるくらいなら最後にマリーの送別会的なイベントをやって正式に悠たちのもとから離れていったほうが物語に一貫性が生まれて良かったのでは。まあしかしおれがペルソナ4シリーズを視聴する最大の理由は菜々子を見るためなのでその目的は無事に果たされた。登場回数は少なかったが一回の破壊力が極めて高かったのでだいぶ満足している。最終回で髪型変えてきた時は神の存在を信じられた(スタッフロール重ねてきた時は殺意が芽生えたけどギリギリで±0に持ち込めた、己の器の大きさに感動した)。なぜおれの妹は菜々子ではなかったんだ…人生はつらい……



黒執事 Book of Circus

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ストーリー 7
キャラクター 7
演出 7
作画 6
音楽 6
総合得点 33点
総合評価 C

今までの全てのシリーズに言えることなんだが、とにかくエンジンかかるのが遅い。結果的に1期2期3期全てスロースターターだった。前作から4年という月日が経っていても尚らこの弱点が改善されなかったのは逆に奇跡的ともいえるが、5〜6話目以降から本領発揮して最後はトップスピードを保ったままゴールする、という終わり方は今まで通り素晴らしかった。もしも数年後に続編が制作されるなら、その時は最初から本気出してほしい。

サーカス編は確か友人から貸してもらった原作で読んだ気がするんだが、察しの通り完全に記憶が逝かれているので「既視感はあるけど内容は覚えていない」という中途半端な状態での視聴となった。基本的に黒執事という作品(原作漫画)は、女性が喜ぶための仕掛けがいくつも張り巡らされているのと同時に中二病患者の処方箋としても機能する稀有な存在で、アニメでは女性に向けたエッセンスの方を強く押し出している。

シリーズ構成に吉野弘幸が座していながらよくここまで出来たな、というくらい繊細で無駄のない構成だった(後半に限る)。原作付きの作品を破壊し尽くす吉野はオリジナルだとまともになる、というおれの説は奇しくもビビッドレッド・オペレーションという作品で覆されるのだが、最近の吉野はどうやら「我を抑える」ということをようやく覚えたらしく、あくまで作品が最良のものになる(大衆から受け入れられる)ように苦心している。「他人の目を気にせず自分が面白いと思うものを優先的に作る」というぶっ飛んだクリエイター的思考回路はこのまま葬り去られたほうがよい。

シエルとセバスチャンの話というよりは「ノアの方舟というサーカス団を通してシエルとセバスチャンの姿が映し出される」という話だったので、必然的にサーカス団員の掘り下げや回想が随所に挟まれ、最終的に全員始末される団員たちに対して感傷的な視点を持てるように作られている。作中において誰が善人で誰が悪人か、あるいは何が正義で何が罪悪か、その価値観が常に流転するシナリオは良く出来ていたが、サーカス団の内部に踏み込んでいくまでが長過ぎた。前半部をもっと削って、団員の掘り下げとシエルの過去を対比させるように描いていれば不満は無かったかもしれない。



六畳間の侵略者!?

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ストーリー 8
キャラクター 9
演出 7
作画 9
音楽 9
総合得点 42点
総合評価 A

実はかなり好きだった。最初の展開は唐突すぎて面喰らったが、1話以降は古典的なハーレム系統のストーリーで、基本的にラブコメっぽさを漂わせておきながらシリアスにも違和感なく移行できる振り幅の広さを見せ付ける。原作が15巻以上出てるということなので、どこでどう区切りを付けて終わらせるかというのも懸念事項だったが、真面目な話を11話(最終回手前)で終わらせておいたことで上手く本筋に話を戻すことができた。1話目でほぼ全ての主要キャラを出し尽くしたのは結果的に正解だったらしい。

各ヒロインが全く違う個性をもっており、誰がどう動いても物語が成立する、というのは最大の武器だろう。里見浩太朗を中心にヒロインがしっかり個別に掘り下げられていくが、それでもハーレムものとしての矜持を失わず、各キャラが平等に出番を与えられているのは作品の地力の強さを証明している。シルバーリンクとの相性も良かった。シルバーリンクはとにかく女性キャラ(の表情)を女性らしく描くことが上手くて、大沼心も得意のコンテや演出を封じて全面的に原作の表現に乗っかっている。

このアニメが他のハーレム作品と明らかに違うのは、主人公である里見孝太郎が明確に桜庭晴海に対して恋愛感情を抱いているという点だ。普通ハーレムものの主人公というのは常に誰に対しても恋愛感情を抱かず、ヒロインの好意に気付かず鈍い態度を取り続けるというのがセオリーだが、孝太郎は六畳間で同棲しているヒロインから向けられる好意にある程度気付きながら、それでも晴海に対して好意を抱き続けているし、晴海もまた孝太郎に対して恋愛感情を抱いている。ここで両者が互いの想いに気付かないのが古典的。

精霊使いの剣舞』とは違った懐かしさのあるアニメだった。ただ精霊使い〜とは違ってこちらは懐かしさを漂わせる明確な理由が存在する。アニメでは各ヒロインの好感度を50%以上に引き上げたところで終了という感じなので(早苗と晴海はマックスに近い)、続編やるならルース、大家さんあたりの話を見たい。



東京ESP

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ストーリー 7
キャラクター 5
演出 6
作画 5
音楽 6
総合得点 29点
総合評価 D

とてつもないスロースターターだった。9話あたりからようやく面白くなるというスローぶりを発揮したが、2クールならともかく1クールでこのペースはまずかった。明らかに最終回のその先からもっと面白くなるはずなので、どうせなら9話を起点にして構成を考えればよかったのでは、と考えたが、それだと各キャラの掘り下げが足りなくなるので、やはり2クールほしかったという結論に落ち着く。M3とか魔法科高校とかキャプテンアースとか2クール使ってもまともに面白くならないアニメが生まれた一方で、2クールあれば間違いなく面白くなったであろうアニメがこうして終わっていくのを見るのはつらい。

1話の時点では海外の大作映画を意識してるのだということが読み取れた程度で、これからどう転がしていくのかが全く見えてこなかったが、2話目から物凄くゆっくりとしたキャラクタ個別の掘り下げが行われ、徐々に敵の目的や背景が明らかになっていった。2クール以外でやりようが無かったのは明らかなんだが、1クール内で何とか纏めようとしている姿勢も伝わってきた。いっそのこと『喰霊』のメソッドで全塗装するという手段もあったが、これは主人公がリンカと京太郎という二人体制だったために使えなかったものと思われる。

全話通して見てみると、やはり京太郎をメインに話を進めたほうが分かりやすかった気がする。漆葉リンカは京太郎の憧れの存在でありながらまだ未成熟な少女であるという非常に扱いづらいキャラクタだったので、視点がリンカに移ると途端に話が見え難くなる。瀬川はじめ喰霊の頃の弱点を未だに克服できてないなという残念さはないあるが、オールスター感というか一大決戦におけるスケール感を表現する力は確実に増している。とりあえず5年以上の時を超えて『喰霊』のキャラクタが動いているところがまた見られただけでも収穫だった。



精霊使いの剣舞

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ストーリー 5
キャラクター 7
演出 6
作画 5
音楽 8
総合得点 31点
総合評価 C

ただひたすらに懐かしさを感じさせるアニメだった。どう頑張っても2000年代のアニメの焼き増しにしか見えないのだが、それより未だにこういうタイプの作品にもそれなりに需要があることが衝撃的だし、いつまでこの手の作品が生み出され続けるのか、ということを考えた時に眩暈がする。あの頃の思い出を掻き集めたところで残滓は残滓として作品の形を成すことはないし、我々がそうした思い出に浸ることも時間の流れが許してはくれない。いくら木戸衣吹演じるクレアが毎回「ひゃんっ‼︎」と叫ぶノルマを課せられていたところでそれが視聴モチベーション維持に繋がるということはないのである。

主人公がなぜか強かったりとかなぜか女性にモテたりとか、そういう都合の良さなんてのは飼い慣らされた享受者にとって道端のアリ程度にどうでもいい要素だが、それよりも作画も演出も音楽もまるでゼロ年代に戻りたがっているような古めかしさだったのが気になった。はっきりいってストーリーなんて本当にどうでもよくて、実際主要なキャラクタの名前を覚えたのも終盤に入ってからだし、そもそもストーリーを頭に叩き込んでいなくても毎回適当に流し見できるという敷居の低さがあったからこそ最後まで視聴できた。MF文庫作品のアニメはISからストーリーとキャラクタが切り離されたものが多くて、それが果たして良いことなのかそうでないのかは微妙だが、13年以降のMF原作アニメはことごとく不調だし、IS以降ストーリーとキャラクタが密接に結びついた唯一のアニメ化作品である『ノーゲーム・ノーライフ』が成功を収めたことを鑑みると、いよいよ方向転換の時が来ているのかもしれない。

最終回でいきなり時空が歪んでトーナメント決勝戦に突入してたあたりは面白かったが、これは本編の面白さとは関係ないのでノーカウントとする。しかしそうなると本編で面白いところといえば意味もなく幼女が主人公のベッドに潜り込んで朝を迎えるシーン(複数回)だったり、クレアが狂ったように主人公に嫉妬するシーンだったりが思い浮かんで、精霊使いはおろか剣舞さえ全く関係ないことに悲しみが沸き起こる。異世界ファンタジーというジャンル分けが無意味に思えるほどファンタジー要素の無味乾燥ぶりがすごい。

おそらく半年もしたらこのアニメのことを忘れてしまうと思うのだけど、ニーハイニーハイ言ってるEDだけはしばらくの間記憶に刻み付けられるだろうし(作詞者が坂井竜二とクレジットされているんだけどthe Arrowsの坂井氏と同一人物なのか気になって仕方ない)、同時に原田ひとみのおよそまともなディレクションを受けたとは思えない地獄感満載のOP曲も鼓膜の裏に焼き付いてしまうことだろう(英語の発音だけで吐きそうになったのは初めてだった)。とりあえず木戸衣吹さんがいつかまともなメインヒロインを演じられる日が来るように願っています。



ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース

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ストーリー 8
キャラクター 8
演出 10
作画 8
音楽 7
総合得点 41点
総合評価 A

分割2クールなので続きは来年、というのが寂しいが(このアニメに関しては分割するメリットを作画以外の部分であまり感じられない、ぶっ通しで50話近く放送したほうが良かった)、まあ続編がしっかり用意されているだけ他の多くの作品よりは恵まれている。続編で思い出したんだけど DOG DAYS 3期はいつやるんですかね…

とにかく原作の地力が尋常じゃなく強い作品なので、何をどうやってもそれなりに面白くはなる一方で、絶対に原作を超えられないという宿命をも抱えている。が、今シリーズは第1部からとにかく原作に寄り添った字幕演出や過剰なまでの演技を詰め込み、原作読者も未読者も30分視聴しただけで満腹になるほど内容を豪勢に充実させている。過剰さがギャグにもシリアスにも対応できるのは原作の強度の高さを示している。

起承転結の承・転をひたすら繰り返すような濃い内容ながら、時に承太郎たちの滑稽な様子を描いたり、その一方でホリィに関するエピソードを挟んでシリアスな部分を表出させ、光と影の対比を印象付ける。それはさながらタロットカードの正位置・逆位置のようで、相変わらず芸が細かいなと感心しつつ、余程気を配らないとそういった部分に気付かないくらい生命力漲るシナリオのパワーに圧倒されるのだった。



金田一少年の事件簿R(リターンズ)

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ストーリー 3
キャラクター 8
演出 4
作画 4
音楽 8
総合得点 27点
総合評価 D

作画の酷さとかどうでもよくなるほど原作の中でも出来の悪い話ばかりアニメ化されてまさに悪夢のようだった。



魔法科高校の劣等生

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ストーリー 4
キャラクター 9
演出 6
作画 5
音楽 6
総合得点 30点
総合評価 C

原作からして作者の自己満足のために書かれたようなものなので、アニメ制作陣がそれを完全に理解することは到底不可能で、だからこそ笑えるような描写はどこまでも笑えるように描くし、公式にクソリプ用画像を配布したりして「これはシュールギャグだ」という姿勢を明らかにした。戦闘も「何が行われているのか」という詳細を完全に切り捨てているし、九校戦はとりわけ競技の内容すら説明しないので、原作を読んでいない人にとっては恐らく何をしているのか最後まで分からなかったと思う。原作を読んでるおれのような奇特な人間でさえアニメは分かりづらいと思ったし。

原作に説明が多すぎるのもアニメのテンポを悪くしている要因だが(それでも原作の半分近くの説明をカットしている)、その説明を制作陣がほとんど理解せず作っているというのがこのクオリティの低さに繋がっている。「分からなくても所々笑える部分があるからいいだろ」という態度なのは酷いが、まあ原作の時点でどうしようもないので、マッドハウスにしては頑張った方だと思っている(最も、マッドハウスは今期ハナヤマタに全力を注いでいたが)。

原作を読んでいたのでもちろん最終回がああいう締め方なのは知っていたので今更不満を表明する気もないが、それより横浜騒乱編をやっておきながら夏休み編を全部カットしたことが納得できない。夏休み編は時系列的に九校戦と横浜騒乱編の間に存在しているので、これをやらないと人間関係の描写に矛盾が生じてしまう。が、アニメではそうした人間関係を一切省いて横浜騒乱編に突入した。達也に対するほのかの気持ちも黙殺され、ただ淡々と事務的に物語が処理されていく。

つくづく人の血の通ってない作品だなという感想しか抱けなかった。アニメでは達也の心情描写が8割型削られていたこともあって無機質さに拍車がかかっていた。ただ達也の突然の空中浮遊だけは原作を凌ぐ面白さで笑えたので、もし続編を作るならああいうギャグシーンを意図的に挿入してほしい。



キャプテン・アース

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ストーリー 2
キャラクター 3
演出 6
作画 7
音楽 5
総合得点 23点
総合評価 E

まさか五十嵐榎戸コンビでここまで面白くないものが出来上がるとは想像もしなかった。もはや完全に才能が枯れてしまったのだろうか。タクトの時点で何となく感じられた不安が現実のものになってしまった。全てにおいて中途半端なうえに盛り上がりどころが全く見えてこない。渋いとかそういうことでもなく、単純に平坦なまま進んで平坦なまま終わってしまったという感じ。

ネーミングセンスが恐ろしくダサいことも物語のそら寒さに拍車を掛けていたが、元々場当たり的な脚本だという印象だったし「キャプテンアース!!」とか周りが言い始めてもそうかそうか良かったねと菩薩の心で視聴できた。しかし唐突な展開が続くことで物語の連続性は無くなっているし、そのせいで話の展開にまるで説得力がない。酒飲みながら書いたのでは?と思うほど酷い脚本だった。とりあえず銃使えば解決という適当さが通用する世界が羨ましくて仕方ない。

1クール目の時点で完全に駄目だったので2クール目に突入しても駄目さは変わらないし、むしろOPとEDが1クール目より酷くなったことでもう目も当てられなくなった。曲の酷さは制作陣も理解したのだろうか、最終回で流したのは1クール目のOPだった。flumpoolはまた編曲に百田留衣が関わっていて (やっぱりセルフプロデュースは無理だったか…)と分かってしまった悲しみがあるので深い言及は避けておくが、2クール目のEDは絵と曲が全く合っていなくて泣きながら見るしかなかった。

最終回で帳尻を合わせるのか全部放り投げるのか気になったので物凄く集中して見たんだが、もちろん後者の方に舵が切られた。本当に適当だったんだなと実感できる展開の適当さには逆に笑いさえ生まれた。今年は2クールのアニメにハズレが多すぎて、時間を無駄にしているという感覚が例年より強くなっててつらい。1クール作品が当たり前になったことで長編を書く力が無くなってきたのだろうか。



ハイキュー!!

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ストーリー 9
キャラクター 9
演出 9
作画 9
音楽 8
総合得点 44点
総合評価 A

おれはバレーボールは好きじゃないんだが、このアニメは本当に全くもって文句の付けようがない内容だった。スポーツや文化部などを題材にした熱血ものの作品において「負け」を描くということは大きなリスクを伴うが、逆説的に「負け」をしっかり描ける作品というのは本物だということだ。「挫折」と「負け」は本質的に違っていて、挫折はしても負けない作品はいくつもある。負け→挫折→復活 を逃げずに描くことが出来る作品は競技ではなくそこに関わるあらゆる人間を描こうという姿勢を貫いているわけで、そうして揺らぐことのない根幹をしっかりと形成することで、どんな敵が現れても、どんな壁に直面しても、作品の筋は曲がらない。余談だが、スマイルプリキュアにおいても緑川なおが運動会のリレーで転んで負けるという話があって、ここでテレビを見ているであろう女児たちに「負け」を見せたことは本当に凄いなとしきりに感心したものだ。

表面的な熱血さやドラマ性を打ち出すこと自体はさほど難しくはない。この作品が最も優れているのは、第24話において烏野が青葉城西に負けたあとにコーチが大それたことを言うでもなく、選手たちが泣きながら思いを述べるでもなく、「負けたあとにひたすら飯を食う」というシーンに辿り着くことだ。大仰しい演出も音楽もなく、ただ淡白に選手たちが飯を泣きながら無言で食べ続けるシーンには確かな説得力がある。選手たちは限界まで闘い続け体力を使い果たしたからこそ、飯を食うというドラマ性のないシーンが重要な意味を持つ。

バレーボールというのはサッカーに比べて動きが少ないし、野球に比べて緊張と緩和の瞬間が分かりづらい。名作『エースをねらえ!』からもわかるように、バレーボールという競技は単純なスポ根ものを描くには不向きだといえる。しかし『ハイキュー!』では、最初から特定のコンプレックスをもった2人がマイナスからのスタートを切ることで、「動作」ではなく「心情」の面においての成長をメインに見せることができた。シナリオが進むにつれて動作は増えていくし、その都度いくらでもやりようがある。最初から心身が強い人間は人間ではない。勝利も敗北も知って「勝ち方」を覚えていくことで強くなれる。

で、冒頭に書いたように「負け」を上手に描ける作品は本当に凄いのだけど、ただの負けでは意味がなくて、「全力を出し切ったうえで負ける」というのが重要だ。努力の質・量とかそういう問題ではなく、単純な地力の差で負けるというのは残酷な話だが、その後の主人公たちの行動や考え方を根本から変える切っ掛けになる。これはスポーツがテーマでなくとも、バトル系統のアニメなら何にでも言える話だ。『ハイキュー』が素晴らしいのは主人公たちに何の躊躇いもなく残酷な現実を叩きつけて、それでも尚バレーで頂点を取らせようとする覚悟だ。あと清子さん。

凄まじく真っ当な熱血スポーツアニメなのに時代錯誤だと感じさせない圧倒的な説得力があるし、キャラクタ1人1人に誰とも重ならない強い個性がある。彼らを支える大人やライバルたちも曲者が揃っていて、なるほどこれ男女共に人気が出るだろうなと納得した。あと清子さん。清子さんにマネージメントされたいだけの人生だった。



魔法少女大戦

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ストーリー 5
キャラクター 5
演出 7
作画 6
音楽 4
総合得点 27点
総合評価 D

おれたちが愛していたガイナックスはもうどこにもいない...



M3 ~ソノ黒キ鋼~

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ストーリー 1
キャラクター 4
演出 3
作画 4
音楽 8
総合得点 20点
総合評価 F

面白い面白くないの次元で語ることさえ無意味だと思わせてくれる画期的な作品だった。まず「作品の内容が暗いので画面も暗くしよう!!」という安直な考えで作られているのが素晴らしい。視聴者が見辛いこととか何も考えていないんだろうなと伝わってくる。この時点でだいぶ見る気が失せているのだが、岡田麿里が主導して作られたシナリオもこのアニメの駄目っぷりに拍車をかけていた。そもそも岡田麿里はこういう作品を書くのは本当に苦手なので佐藤順一が主導して書くべきだったんだが、佐藤順一が全面的に岡田麿里にシナリオを任せた結果、人間関係だけは妙に俗っぽいのにシナリオはいかにもなダークファンタジーというおかしなバランスになってしまった。

凪のあすから』だけではやはり岡田麿里の弱点が克服されなかったので、今後とも『とらドラ』『true tears』の系譜に連なる作品を書いてればいいし、佐藤順一にはこういうダークな作品は向いてないので『ARIA』あたりのポップかつハートフルな話を作ってほしい。『M3』は主要スタッフがことごとく作風と合っていなかったことが最大の不運だろう。伏線回収の手際の悪さも目立った。全部終盤で回収するというスタイルは1クール作品でのみ通用するものだ。2クール作品でそれをやると序盤が意味不明で中盤が中弛みする。

内容に関しては触れるだけで肉体的にも精神的にもつらいのでスルーするとして、このアニメは主題歌が揃いも揃って名曲揃いだった。特に前期EDはSFPのボーカルが参加しているバンドというだけで事前の期待値が高かったが、いざ聴いてみるとSFPよりエッジの効いた曲で発売から3ヶ月以上経った今でも繰り返し聴いている。この曲を聴くためだけにアニメ本編を我慢して見ていたという感じだった。2クール目に突入してからは坂本真綾のOP曲を聴くためだけに視聴していた。しかし両曲とももっとまともなアニメの主題歌に使われてほしかったという悲しみがある。産まれてくる子供が親を選べないように、生み出された主題歌は起用される作品を選べないのだ。



暴れん坊力士!! 松太郎

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ストーリー 10
キャラクター 10
演出 9
作画 8
音楽 6
総合得点 43点
総合評価 A

最初から最後まで余すところなく面白いアニメだった。このアニメが最も素晴らしいのは主人公の松太郎が精神的にほとんど成長することなく最後まで突っ走るところだ。普通の作品なら主人公が最初どんなに子供っぽくても、物語が進んでいくと次第に成長していくものだが、松太郎はずっと暴れん坊力士のままだった。自己中心の塊で気に入らないことがあれば例え相手が誰だろうと殴り飛ばすし、他人を思いやるとかそういったことを一切しない(後半になると家族に対して気を遣うシーンがあってこのアニメには珍しく感動的だった)。まさしくクズの中のクズだが、この突き抜けたクズっぷりが逆に清々しく、結果的に最後まで笑いながら視聴していた。そもそも1話でいきなり警察に捕まる主人公とか最高すぎる。

しかし令子先生に対してはずっと変わらぬ想いを抱き続けていて、その積み重ねが終盤の失恋のショックに繋がっていく。この終盤の畳み掛けは今までの松太郎のクズっぷりを前面に押し出していたアニメとは思えないほどドラマティックで引き込まれた。いちおう最後まで松太郎は自己中心的で他人を顧みない男だったが、失恋というショックを経験したことで自暴自棄になり、令子先生と失恋をわすれようとして忘れようとして相撲に打ち込むようになる。最後の最後まで誰かを喜ばせたり自分の喜びのために相撲をやることがなかった、というのが逆に恐ろしくさえある。まあ原作だとまだ続きがあるようなのでこの先松太郎が更生して真面目な力士になっている可能性もある(今度読んでみます)。

これは相撲なのかと本気で疑問に思う取り組みがいくつもあったが、むしろこの相撲であることを忘れさせる圧倒的な迫力がアニメーションというメディアを生かしている証左だろう。最終回の相撲の取り組みは不覚にも感動してしまった。これまで相撲というのはあまりドラマ性がない競技だと思っていたが、このアニメを見てしまうと現実の相撲も物凄くドラマティックに見えてくる。最初にこのアニメを見たときは「こんなものを早朝に放送したら子供たちが相撲から遠ざかっていくのでは…」という不安しかなかったが、最終回の取り組みを見るとそれは間違いだったと気付かされる。雑念が入り乱れた取り組みなのに見入ってしまう。

スポーツを題材にした作品とは思えないくらい主人公がどうしようもないクズという珍しさで、ちばてつやは相撲界の不祥事とかこの原作を描いた時点で察していたのかなとさえ思ってしまうが、それより松太郎に得体の知れない魅力があったのでどんなことをやろうが笑って見ていられる、みたいなところがあった。今期の園川モモカといい、おれはやっぱりクズを極めた人間に惹かれるらしい。ただ最終回の締め方には納得いかないので頼むから続編を作ってほしい。早朝が無理なら深夜に放送してくれ。




◆各項目ベスト3◆

ストーリー
1位 ろこどる
2位 月刊少女野崎くん
3位 スペース☆ダンディ シーズン2
   暴れん坊力士!!松太郎


キャラクタ
1位 さばげぶっ!
2位 ろこどる
3位 月刊少女野崎くん


演出
1位 スペース☆ダンディ シーズン2
2位 ハナヤマタ
3位 ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース


作画
1位 スペース☆ダンディ シーズン2
2位 ハイキュー!!
3位 Free! -Eternal Summer-


音楽
1位 ハナヤマタ
2位 六畳間の侵略者!?
3位 アオハライド



◆ベストキャラクタ◆

女性
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1位 佐倉千代(月刊少女野崎くん)
1位 園川モモカ(さばげぶっ!)

3位 宇佐美奈々子(ろこどる)

園川モモカは女性としてというより人間として溢れ出る魅力を有したキャラクタだったので判定が難しかった。


男性
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1位 ダンディ(スペース☆ダンディ シーズン2)
2位 坂口松太郎(暴れん坊力士!!松太郎)
3位 野崎梅太郎(月刊少女野崎くん)

1位、ダンディと松太郎で30分近く悩んだ。


人間以外(特別枠)

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1位 カモ(さばげぶっ!)

カニとカモで1時間近く悩んだ。



◆今期ベスト主題歌◆

OP
ハナヤマタ OP『花ハ踊レヤいろはにほ / チーム・ハナヤマタ』

ハナヤマタ op FULL 「花ハ踊レヤいろはにほ」 チーム・ハナヤマタ - YouTube




ED
東京喰種 ED『聖者たち / People In The Box

People In The Box「翻訳機」「聖者たち」MV - YouTube




OPは即決。EDはアオハライドとで悩んだが中毒性の高さでPeople In The Boxのほうにした。ちなみにPV前半の「翻訳機」も名曲である。



◆今期ベストエピソード◆

スペース☆ダンディ シーズン2 第23(10)話「恋人たちはトレンディじゃんよ」
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脚本:うえのきみこ 絵コンテ:タムラコータロー 演出:向井雅浩 作画監督久保田誓

今年一番の衝撃だった。かつて飽きるほど浴びせられたトレンディドラマの粒子がアニメというフォーマットに収まるとこんなにも輝き出す。



◆今期作品ベスト3◆

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1位 ろこどる
2位 月刊少女野崎くん
3位 スペース☆ダンディ シーズン2
3位 さばげぶっ!



春には及ばないものの充分な豊作と言っていいだろう。最初はどうなることかと思ったアニメたちが徐々に真っ当に成長していく様子を見守っているのもそれなりに楽しかったが、やはり『ろこどる』『さばげぶっ!』『月刊少女野崎くん』あたりの1話目の時点で既に面白い作品が最後まで面白く楽しませてもらった。ダンディは1話の時点ではけっこう不安だったが毎回レベルの高いシナリオを提示してくれて観るたびにテンションが上ったし23話は本当に文句のつけようのない傑作だった。『グラスリップ』で13話使っても出来なかったことがこのスペダン23話で全部出来ている、というのは皮肉な結果である。
しかし夏アニメ期待度に入れてすらいなかった『ろこどる』『さばげぶっ!』が異常なまでに面白かったのは本当に衝撃だったし、それより朝6時に放送されている松太郎が本当に面白くて、このアニメのせいでおれは毎週日曜日は朝5時50分に起きるという生活を送っていた(見終わったら夕方まで寝てる)。実は上述した20数本のアニメの中で一番続編を見たいのは松太郎なので本当に何とかして深夜でもいいので2期やってほしい。朝の女児向けアニメは3~4クール与えられているのに松太郎は2クールだったの未だに納得していないぞ。大暴れ、待ったなしだ。